2026年日本発売予測「KarXT(コベンフィ)」の概要/オランザピンに勝る効き目/体重増加や錐体外路症状が少ない

この記事は約10分で読めます。

はじめに

この記事と、次の記事では、カルナ社のKarXT(Cobenfy)について書く。開発されている抗精神病薬の中で、KarXTには一番期待している

この記事では、KarXTの主成分であるキサノメリンについて書く。またKarXTの副作用開発状況についても書く。

次の記事では、KarXTの有効性を、フェーズ2の治験結果から考えてみる。次の記事へのリンクはこちら。

【フェーズ2試験/EMERGENT-1】KarXT、オランザピンに勝る有効性を示す(1回目)

KarXTはムスカリン作動薬と呼ばれ、同種の薬に、ネクセラのHTL16878(NBI-1117568)やcerevel社のエムラクリジンなどがある。

それらのムスカリン受容体に作用する薬も期待が高い。それらの薬について書いた記事へのリンクはこちら。

【フェーズ1b試験】エムラクリジン/KarXT並の有効性/消化器系副作用が軽い

NBI-1117568(ネクセラのM4作動薬) /特異性のある注目のムスカリン作動薬

ムスカリン作動薬全体について簡単にまとめた記事もあります。
【革新的】開発中の抗精神病薬まとめ(前半)/ムスカリン作動薬【初心者用記事】

KarXT(Cobenfy、コベンフィ)のまとめ記事です。一番おすすめの記事です。
【2026年日本発売予測】KarXT(Cobenfy)の5つのメリット【初心者用まとめ記事】

海外のコベンフィ使用者の感想も記事にしました。
海外コベンフィ(KarXT)服用者の感想その1/Redditなど/最初の数週間/2024年11月時点

追記:コベンフィについてまとめた動画も作りました。

キサノメリンの効果

キサノメリン

KarXTには、有効成分であるキサノメリンに加えて、トロスピウムという成分が含まれている。

トロスピウムは、単に、キサノメリンが持つ胃腸への副作用緩和するために混合されている。

なので、まずこの節では、KarXTの一番重要な成分であるキサノメリンについて書く。

アルツハイマー病への効果

キサノメリンは、まず1997年に発表されたある大規模な臨床試験で、アルツハイマー病患者に投与され、効果が試された。

そこで特に、多弁、不信感、妄想、興奮、幻覚に効く一方、感情鈍麻、行動障害も改善した。

これらの症状は、まさに統合失調症患者にもよく見られるものだった。

この驚くべき発見によって、キサノメリンが統合失調症についても治療できるのではないかと考えられ始めた。

統合失調症への効果(動物実験)

2000年代初めのいくつかの動物実験では、キサノメリンはクロザピンに似たような効果もみられた。

少し専門的に言うと、中脳辺縁系ドーパミン経路では、ドーパミン活動を抑え黒質線条体ドーパミン経路ではドーパミン活動を妨(さまた)げず前頭前皮質では、ドーパミン活動を増加させた

要するに簡単に言うと、クロザピンのように、陽性症状にも陰性症状にもよく効き錐体外路症状起きにくい可能性が示されている。動物実験では、そう示された。

統合失調症への効果(ヒトへの臨床試験)

2008年に発表された、「ヒトに対しての」ある臨床試験で、キサノメリンの陽性症状陰性症状への有効性が測定されている。

PANSS(陽性陰性症状評価尺度)によって有効性が測定され、有意な改善がみられたヒトの統合失調症」への効果が確かめられた

さらに2008年に発表されたある予備試験で、統合失調症患者の「認知機能障害」への効果も調査された。

そこでは、語い学習、ワーキングメモリー機能、で最も強力な改善を示した。

注意力情報処理速度には、有意な改善はみられなかったが、リスト学習、ストーリー想起、記憶保持、数字逆読み上げテスト、で有意な改善を示した

この1つの予備試験だけでは、キサノメリンの認知機能への効果は、確定的ではないかもしれないが、期待を持たせるものになっているのではないか。

ヒトへの臨床試験でも、キサノメリンは、陽性症状陰性症状認知機能障害改善する事が示された。

その後、カルナ社によってキサノメリントロスピウムと混合され、KarXTとなった。キサノメリンの消化器系の副作用の問題が緩和された。

(追記)

以下で追記として、KarXTの認知機能への改善効果について書く。

KarXTのフェーズ2試験の「事後分析」によって、KarXTの認知機能障害への有効性が確認された。

フェーズ2では、iPadを使ったCBB(Cogstate Brief Battery)というツールで、注意、処理速度、実行機能、語い学習、ワーキングメモリー、の5つの項目が測定されている。

認知機能について、KarXTの「患者全体」に対する効果量は、0.20だった。統計的に有意な効果はなかった。

けれど、認知機能が元からあまり障害されていない患者除き、また、極端で信頼性の低いデータ除いて、分析したところ、0.79という、かなり高い効果量となった。

一般的に効果量は、0.20.50.8、とされる。なので、0.79という効果量は大きい

KarXTは、あまり認知機能障害のない患者には効果が薄いのかもしれないが、普通の患者には、効果が高い可能性がある。

副作用

副作用は少なく、忍容性が高い。傾眠(鎮静)、錐体外路症状体重増加は、プラセボと差がない

5週間の体重変化は、平均1.5kg増加となっている。プラセボと同じ位だった。

消化器への副作用が心配されているが、軽度または中等度であったようだ。便秘、吐き気、口渇、消化不良、嘔吐がいくらかあった程度だった。

一人精神症状が悪化した患者がいた。

フェーズ2試験で2%以上出現した副作用は下の表のようになっている。青の太字消化器系の副作用。

便秘17%眠気6%下痢2%
吐き気17%アカシジア3%興奮2%
口喝9%めまい3%不眠2%
消化不良9%体重増加3%食欲低下2%
嘔吐9%頻脈3%多汗症2%
頭痛7%鎮静2%
γ-グルタミルトランスフェラーゼ増加 2%

開発状況

KarXTは、アメリカカルナ・セラピューティクス社によって開発されている。

早ければ2024年中には米国で承認されるらしい。日本ではまだ治験は始まっていない

2024.7.13追記:DelveInsightというサイトの分析によると、日本発売は2026年の可能性があるらしいです。

2024.9.27追記:KarXTは、2024年9月にFDAに承認されました。Cobenfyという商品名です。2024年中に米国で発売されます。

KarXTが2024年に米国で発売されたら、使用者がRedditなどで書き込みをするかもしれない。それらの感想情報なども見ていきたい。ブログ記事でそれらの情報を報告する予定。

また、KarXTは、陰性症状認知症状への適応も目指されているので、期待が高い。

さらに、治療抵抗性(難治性)の患者にも有効かもしれない。その場合、他の薬の補助薬として使われるらしい。

EMERGENTプログラムについて

KarXTの開発タイムスケジュールは、下の図のようになっていたが、予定通り進んでいるかは、わからない。

EMERGENT – 4、5という名前のフェーズ3試験が、現在行われている。EMERGENT – 1、2、3は、既に終了している。

EMERGENT-2は、米国内限定で入院中の統合失調症患者246人について、KarXTを5週間投与し、有効性と安全性を調査するもの。

2020年12月にすでに始まっている。2022年中頃に試験データが出る予定になっている。

追記:EMERGENT-2の結果が出ています。結果について書いた記事はこちら。
【フェーズ3試験/EMERGENT-2】KarXT、オランザピンに勝る有効性を示す(2回目)

EMERGENT-3は、米国ウクライナの入院中の統合失調症患者246人について、KarXTを5週間投与し、有効性と安全性を調査するもの。

2021年第2四半期にすでに始まっている。2022年後半に試験データが出る予定になっている。

追記:EMERGENT-3の結果が出ています。結果について書いた記事はこちら。
【フェーズ3試験/EMERGENT-3】KarXT、オランザピンに勝る有効性を示す(3回目)

EMERGENT-4では、EMERGENT-2とEMERGENT-3を完了した統合失調症患者350人について、KarXTを52週間継続投与する。長期的な安全性と忍容性をみるための継続試験(長期投与試験)。

有効性については書いていないが、長期的有効性のデータが出ることを期待する。2021年第1四半期にすでに、継続試験(長期投与試験)は始まっている。

EMERGENT-5では、EMERGENT-2とEMERGENT-3に参加しなかった米国内の統合失調症患者400人について、KarXTを52週間継続投与する。長期的な安全性と忍容性をみるための継続試験(長期投与試験)。

こちらも有効性については書いていないが、長期的有効性のデータが出ることを期待する。2021年第2四半期に、すでに継続試験(長期投与試験)は始まっている。

加えて、統合失調症へのフェーズ3ARISE試験というものと、アルツハイマー病に伴う精神病への試験というもの、も予定されている。

フェーズ3ARISE試験は、既存の治療薬だけでは十分な効果が出なかった統合失調症患者へ、補助療法としてKarXTを投与し、有効性と安全性を調べるもの。2021年第4四半期に始まる予定。

アルツハイマー病に伴う精神病のフェーズ3プログラムも予定しているが、詳細については、2022年の前半にわかる。このプログラム自体は2022年中頃開始の予定。

まとめ

キサノメリンはアルツハイマー病への効果が調べられたところ、統合失調症に効く可能性が発見された。

キサノメリンは、ヒトへの臨床試験で、統合失調症の陽性症状陰性症状への効果が確かめられた

また、認知機能の改善効果についても、フェーズ2の事後分析で、0.79というかなり高い効果量が示された。

カルナ社によって、キサノメリンは、トロスピウムと混合され、酷い消化器の副作用の問題が解決された。KarXTとなった

KarXTの副作用は軽く錐体外路症状体重増加は、プラセボと同程度しかなかった。だが、消化器の副作用がいくらかある可能性がある。

早ければ、2024年中米国で承認される。

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【革新的】開発中の抗精神病薬まとめ(前半)/ムスカリン作動薬【初心者用記事】

KarXTの有効性について、フェーズ2の治験結果から考えています。リンクはこちら。
【フェーズ2試験/EMERGENT-1】KarXT、オランザピンに勝る有効性を示す(1回目)

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参考文献

  • https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6891890/
  • https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2017015
  • https://investors.karunatx.com/static-files/c09991a8-81fa-4ab9-aa15-8f200d73f3d1
  • http://biotech-report.info/archives/1732
  • https://www.fiercebiotech.com/biotech/karuna-ceo-invasion-ukraine-unlikely-significantly-delay-data-phase-3-trial
  • https://www.clinicaltrialsarena.com/special-focus/ukraine-crisis/karuna-trial-guidance-crisis/

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