はじめに
下のリストの中にある開発中の向精神薬についてできるだけ調べて、一つ一つ記事にしたいと思います。いい薬が将来でてくると思ってもらえたら嬉しいです。
この記事では、統合失調症薬のリストを載せます。抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、ADHD治療薬、強迫性障害治療薬については、次のリンク先の記事に載せました。
海外国内の開発中にある「抗うつ薬」のリスト 2023年版
海外国内の開発中にある「抗不安薬&睡眠薬」のリスト 2023年版
開発中にある「ADHD」治療薬のリスト 2023年版
開発中にある「強迫性障害」治療薬のリスト 2023年版
治験結果(PANSS,CGI等の数値)、作用機序、有効性(ki値等)、副作用、どの治験段階(フェーズ)にあるのか、どの会社が開発しているのか、などを調べたいと思います。
治験の工程は日本の場合、第Ⅰ相試験が0.5~1年位、第Ⅱ相試験が2年位、第Ⅲ相試験が2~3年位かかるそうです。
申請してから1年位で発売され、治験開始から合わせて8年位かかるそうです。
海外で一旦発売された薬は、国内で治験が開始されれば、発売されるまで速くて5、6年位らしいです。
でも、日本で開発されている抗精神病薬、ピリドキサミン (Pyridoxamine) などは10年位治験をしていて、まだⅡ相試験の段階にあります。大幅に遅れたり、開発中止になる薬もあるでしょう。
※以下のリストにあるアンタゴニストは、阻害薬、遮断薬、拮抗薬とほぼ同じ意味です。また、アゴニストは、作動薬、刺激薬、活性化薬とほぼ同じ意味です。
開発中の「抗精神病薬」
以下の表の青字は、薬の名前です。緑文字は、作用機序です。赤字は、2024年1月時点の開発段階です。
受容体に作用する薬(5種類)
①モノアミン受容体調節薬
ルマテペロン(ITI-007, ITI-722) | D2 及び 5HT2A受容体遮断薬、セロトニン再取り込み阻害、D1受容体作動薬、D2自己受容体部分作動薬 | 発売済み(米国) |
ラツーダ(ルラシドン) | D2 及び 5HT2A受容体遮断薬、5HT1A受容体部分作動薬、5HT7A受容体遮断薬 | 発売済み(日本) |
ソリアン(アミスルプリド, LB-102) | D2、D3 及び 5HT7、5HT2B 受容体遮断薬 | フェーズ2(米国) |
カリプラジン(Vraylar, Cariprazine) | D2 及び 5‐HT1A受容体部分作動薬、5‐HT2A受容体遮断薬、その他の作用 | 発売済み(米国) |
ウロタロント(SEP-363856、SEP-856) | TAAR1作動薬、5-HT1A受容体作動薬 | フェーズ3(日本) |
ラルミタロント(Ralmitaront、RG7906、RO6889450) | TAAR1部分作動薬 | フェーズ2中止(米国) |
ブリラロキサジン(Brilaroxazine, RP-5063, RP-5000; oxaripiprazole, オキサリピプラゾール) | 非定型抗精神病薬 (D2受容体部分作動薬、 5-HT2A受容体遮断薬、その他の作用) | フェーズ3(米国) |
FKF-02SC(TGOF-02N) | 非定型抗精神病薬 (D2 及び 5-HT2A 受容体遮断薬、その他の作用) | フェーズ2(米国) |
マスピルジン(Masupirdine, SUVN-502) | 5-HT6 受容体遮断薬 | フェーズ2(米国) |
②グルタミン酸受容体調節薬
ポマグルメタッドメチオニル(DB-103, LY-2140023, LY-2812223)(認知) | mGluR2 及び mGluR3作動薬 | フェーズ1(米国) |
③アセチルコリン受容体調節薬(ムスカリン作動薬)
ML-007(認知) | M1 及び M4 ムスカリン性アセチルコリン受容体作動薬 | フェーズ1(米国) |
ANAVEX3-71(認知) | M1 ムスカリン性アセチルコリン受容体作動薬、シグマ1受容体作動薬 | フェーズ2(米国) |
カーエックスティ(KarXT, トロスピウム + キサノメリン)(認知), Cobenfy | M1/M4作動薬、末梢神経への選択的ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断薬 | 販売承認前(米国) |
エムラクリジン(Emraclidine, CVL-231)(認知) | M4アロステリック作動薬 | フェーズ2(米国) |
NBI-1117568(ネクセラのM4作動薬)(認知) | M4 ムスカリン性アセチルコリン受容体作動薬 | フェーズ2(米国) |
NBI-1117570(認知) | M1/M4作動薬 | フェーズ1(米国) |
NBI-1117567(認知) | M1作動薬(M1-preferring作動薬) | フェーズ1(米国) |
NBI-1117569(認知) | M4作動薬(M4-preferring作動薬) | フェーズ1(米国) |
④カンナビノイド受容体調節薬
CBD(カンナビジオール, Arvisol) | カンナビノイド受容体調節薬、抗酸化薬、 その他の作用 | 不明 |
⑤その他の受容体調節薬
デューデキストロメトルファン(Deudextromethorphan、d-DM; AVP-786, CTP-786) | σ1 受容体作動薬,、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害薬、非競合的NMDA受容体遮断薬、ムスカリンアセチルコリン受容体作動薬、その他の作用 | フェーズ2/3(米国) |
リバルビ(オランザピン+サミドロファン, Lybalvi) | (D2 及び 5-HT2A 受容体遮断薬、その他の作用) + (μオピオイド受容体遮断薬) | 発売済み(米国) |
CVN766 | オレキシン1受容体阻害薬 | フェーズ1(米国) |
酵素を阻害する薬(4個)
Osoresnontrine(BI-409306, SUB-166499)(認知) | ホスホジエステラーゼ9A阻害薬 | フェーズ2(米国) |
MK-8189(認知) | ホスホジエステラーゼ10A阻害薬 | フェーズ2(米国) |
ナベン(安息香酸ナトリウム, Sodium benzoate, SND-11, SND-12, SND-13, SND-14; Clozaben, NaBen) (認知)(補助薬) | D-アミノ酸酸化酵素阻害薬 | フェーズ2/3(米国) |
ルバダキシスタット(Luvadaxistat, TAK-831)(認知)(補助薬) | D-アミノ酸酸化酵素阻害薬 | フェーズ2(米国) |
イオンチャンネルに作用する薬(1個)
エべナミド(Evenamide、NW-3509; NW-3509A)(補助薬) | Nav1.3、Nav1.7 及び Nav1.8 電位開口型ナトリウムチャネル阻害薬 | フェーズ3(米国) |
その他のメカニズムで作用する薬(5個)
ピリドキサミン(Pyridoxamine、K-163SZ、ビタミンB6) | カルボニルストレス阻害薬、ビタミンB6、 終末糖化産物生成阻害剤、酵素ラジカル捕捉剤 | 開発中止(日本) |
ベタイン(Betaine)(補助薬?) | 作用メカニズム不明 | 不明(日本) |
TS-134 | 作用メカニズム不明 | フェーズ1(米国) |
SP-624 | 遺伝子発現、代謝、DNA修復、の調節 | フェーズ1/2(米国) |
クラトム(Kratom) | (ハロペリドールに匹敵する抗精神病作用を示す) | 不明 |
開発中の「認知機能障害(陰性症状)治療薬 」
ピマバンセリン(Pimavanserin, Nuplazid) (陰性症状治療) | 選択的5-HT2A 受容体逆作動薬 | 開発中止(米国) |
ロルペリドン(Roluperidone)(陰性症状治療) | 5-HT2A 及び σ2 受容体遮断薬 | 販売承認前(米国) |
イクレペルチン(Iclepertin, BI425809) | グリシン再取り込み阻害薬 | フェーズ3(日本) |
Usmarapride(SUVN-D4010) | 5-HT4受容体部分作動薬 | 不明 |
RL-007 | アセチルコリン受容体調節薬、GABAB受容体調節薬、NMDA受容体調節薬 | フェーズ2(米国) |
ASP-4345 | D1受容体アロステリック作動薬 | フェーズ2(米国) |
ASP-5736 | 選択的セロトニン5HT5A受容体阻害薬 | 不明 |
BMS-955829 | mGluR5アロステリック作動薬 | 不明 |
NBI-1065846(TAK-041) | オーファンGタンパク質共役型受容体139作動薬(GPR139作動薬) | フェーズ2(米国) |
HTL0041178 | GPR52作動薬 | 不明 |
サマリサント(samelisant) | ヒスタミンH3逆作動薬 | 不明 |
Plazinemdor | NMDA受容体アロステリック作動薬 | 不明 |
VQW-765 | α7ニコチン性アセチルコリン作動薬 | フェーズ2(米国) |
VU-0467154 | ムスカリン性アセチルコリンM4受容体アロステリック作動薬 | 不明 |
SKL-15508 | α7ニコチン性アセチルコリン作動薬 | フェーズ1/2(米国) |
KYN-5356 | キヌレニン-オキソグルタル酸トランスアミナーゼ阻害薬 | フェーズ1(米国) |
「認知機能障害治療薬」や「陰性症状治療薬」については、次の記事で書いています。
統合失調症の認知機能障害や陰性症状に効く開発中新薬22個
開発段階まとめ
日本
発売済み ラツーダ
フェーズ3 ウロタロント、イクレペルチン
フェーズ1以前 ベタイン
米国
発売済み ルマテペロン、カリプラジン、リバルビ
承認前(審査中) カーエックスティ(KarXT)、ロルペリドン
フェーズ3 イクレペルチン、ウロタロント、ピマバンセリン、エベナミド、ブリラロキサジン
フェーズ2 FKF-SC、マスピルジン、ANAVEX3-71、エムラクリジン、NBI-1117568、デューデキストロメトルファン、Osoresnontrine、MK-8189、ナベン、ルバダキシスタット、RL-007、ASP-4345、NBI-1065846(TAK-041)、VQW-765、ラルミタロント
フェーズ1 ポマグルメタッドメチオニル、ML-007、NBI-1117570、NBI-1117567、NBI-1117569、CVN766、TS-134、SP-624、SKL-15508、KYN-5356
不明 クラトム、Usmarapride、ASP-5736、BMS-955829、HTL-0041178、サマリサント、Plazinemdor、VU-0467154
参考文献
- https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_investigational_antipsychotics
- https://www.gii.co.jp/report/labd1000812-cognitive-impairment-associated-schizophrenia-cias.html
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