「ロルペリドン(Roluperidone)」陰性症状を治療する薬(2024.2.28修正)

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概要

ロルペリドンは、陽性症状には効かず、陰性症状治療薬になっている。

シグマ2受容体遮断薬として働く。シグマ2受容体遮断する作用がある。

その作用によって、陰性症状だけでなく、記憶など、認知機能へも効果を働かせるようだ。

フェーズ2b試験では、ロルペリドンの陰性症状への有効性は、効果量0.57と出た。まあまあ有効性が高いという結果だった。

けれどフェーズ3試験では、陰性症状への有効性を示せなかった。開発者側によると、プラセボの改善効果高過ぎて、ロルペリドンの改善効果との小さく出てしまったためらしい。

その後、長期投与試験では、陰性症状改善効果が見られた。

2023年5月に、ミネルヴァ社は販売承認申請を提出し、FDAはそれを受理した。2024年2月26日までには、ロルペリドンが承認されるかわかる。

追記:2024年2月にFDAの審査は完了しましたが、販売承認は下りませんでした。FDAは、追加の試験を求めています。

作用機序

主な作用を起こすメカニズムは次の①、②の2つになっている。

5HT2A受容体アンタゴニスト(5HT2A受容体遮断薬)

シグマ2受容体アンタゴニスト(シグマ2受容体遮断薬)

シグマ2受容体についてわかっている事を断片的に書くと次のようになる。

シグマ2受容体は、動作のコントロール精神症状のコントロール学習と記憶、に関わる受容体。

ロルペリドンによって、シグマ2受容体遮断する事で、ドーパミンなどの神経伝達物質を調節することができる。

認知機能への効果もあり、それはこのシグマ2受容体への作用が関係しているという報告もある。

また、ロルペリドンは、脳内のカルシウムレベルを上げ記憶力を改善できる。

有効性(治験結果)

このセクションでは、ロルペリドンの有効性を見ていく。フェーズ2b試験、フェーズ3試験、長期投与試験の結果を見ていく。

フェーズ2b治験結果

フェーズ2b試験は、あまり詳細なデータ結果が出ていない。

244名の治験参加者を3グループに分け、それぞれロルペリドン64mg、ロルペリドン32mgプラセボが投与された。

PANSS陰性症状因子スコアというものを使って、有効性が測られた。12週間に渡って投与され、そのスコアの減少幅(改善幅)が測られた。

けれど、ロルペリドンのPANSS陰性症状因子スコアの減少と、プラセボのPANSS陰性症状因子スコアの減少は、公表されていない。なので、「プラセボとの差」もわからない。

公表されているデータは、p値p<0.004 で、効果量0.57 という事のみ。

効果量0.57という数値は、まあまあ良い成績のように思う。統計的に有意な改善となっている。フェーズ2bにおいては、ロルペリドンは陰性症状への効果がまあまああるという結果になっている。

フェーズ3治験結果

フェーズ3の治験結果も、あまり詳しいデータが出ていない。

513名の患者が、3つのグループに分けられ、それぞれ、ロルペリドン32mg、ロルペリドン64mgプラセボ、が投与された。

PANSS陰性マーダー因子スコアというものを使って、有効性が測られた。12週間に渡って投与され、その減少幅(改善幅)が測られた。

ロルペリドンのPANSS陰性マーダー因子スコアの減少幅は、わからないプラセボのPANSS陰性マーダー因子スコアの減少幅も、明らかにされていない。なので、「プラセボとの差」がわからない。

けれど、そのp値p<0.064効果量0.20 という事はわかっている。p<0.064という結果は、統計的に有意な改善とされる0.05以下なっていない。効果量0.20も小さい。

フェーズ3試験では、ロルペリドンの陰性症状への効果示されなかった

フェーズ3試験でロルペリドンの陰性症状への効果が、あまりないように見えるのは、プラセボの陰性症状への改善効果が高過ぎて、ロルペリドンの改善効果との差が、あまり出なかったため、と開発者側は言っている。

継続試験(長期投与試験)が行われた

ロルペリドンは、米国でのフェーズ2b試験では有効性を示したが、フェーズ3試験では有効性を示せなかった、と上に書いた。

そのため、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、販売の承認を出すことを渋っている

そこで、ロルペリドンの12週間フェーズ3試験の後、さらに40週間の継続投与が行われ、長期的な有効性と安全性が調べられている。

その継続試験(長期投与試験)では、継続して陰性症状改善が見られたようだ。 安全性や副作用についても良好な結果だった。

開発状況

ミネルヴァニューロサイエンス社によって、治験が行われ、フェーズ2b試験や長期投与試験では良好な結果が出たが、2020年5月に結果が出たフェーズ3試験では、有効性を示せなかった

FDA(アメリカ食品医薬品局)は、フェーズ2bフェーズ3の結果をもってロルペリドンを承認申請しても、受理される事はまずないだろうと、ミネルヴァニューロサイエンス社に釘を刺している。(2020年12月)

ミネルヴァ社は、2022年11月30日に開催されたFDAとのタイプA会議を経て、統合失調症の陰性症状に対する「ロルペリドン」の新薬申請を行わないことを発表した。

2023年8月3日追記:その後、ミネルヴァ社は、ロルペリドンの承認申請が受理されない事について、FDAに不服申し立てをした。その申し立ては認められ、2023年5月に承認申請は受理された。2024年2月26日までには、ロルペリドンが承認されるかわかる。

2024年2月28日追記

2024年2月にFDAの審査は完了しましたが、販売承認は下りませんでした。その理由は、次のようなものです。

  • 1つの比較試験で有効性が示されただけでは不十分。
  • 抗精神病薬との併用に関するデータの不足。
  • 安全性確認のためには被験者の数が不十分。

これらの不足や不十分に対処するために追加の試験が必要である、とFDAは述べています。

ミネルヴァ社は、今回のFDAの対応や意見をよく検討し、FDAと協議した上で、今後の対応を検討するそうです。

追加の試験が行われて、有効性や安全性が確認される事を期待したいです。

副作用、安全性

忍容性安全性は、概して高かった12週間で有害事象が出たのは、ロルペリドン64mg投与患者で37%プラセボ投与患者で33%だった。あまり差がなかった。

有害事象による試験継続中止は、ロルペリドン64mgは、16人(9%)。プラセボは、8人(5%)だった。

その他、副作用については、明らかにされていない。

コメント

ロルペリドンは、陰性症状治療の専門の薬という事だった。こういう陰性症状や認知症状だけに効果がある薬が、もっとどんどん出てきて欲しい。

日本でも開発されている認知症状治療専門の薬には、イクレペルチンがあった。イクレペルチンのフェーズ3の結果も早く出て欲しい。フェーズ3試験は、今年(2024年)終わる予定。

だが、ロシュ社のBitopertin(RG1678)という陰性症状治療薬も、過去にフェーズ3の治験に失敗しているという事もあるし、陰性症状や認知症状だけを治す薬が、本当に実現できるのかわからない。

ロルペリドンやイクレペルチンなどの試験結果を見ていって、どうなるのか見守っていきたい。

イクレペルチンの追加情報があります。
2024年6月海外掲示板情報/イクレペルチンの期待高まる/認知機能障害治療薬

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参考文献

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