はじめに
ネクセラファーマは、KarXT(コベンフィ)やエムラクリジンより自社のNBI-1117568の方が、有効性や安全性において優位性があると言っている。
ネクセラの公式ブログから、その優位性について主張されているところをまとめてみる。少し難しくなったかもしれない。
ネクセラのNBI-1117568について書いた元記事はこちら。
統合失調症 開発中新薬12 NBI-1117568(ネクセラG社のM4作動薬)
追記:ムスカリン作動薬全体についてまとめた記事もあります。おすすめ記事です。
【革新的】開発中の抗精神病薬まとめ(前半)/ムスカリン作動薬【初心者用記事】
エムラクリジンより有効性が優れている理由
ネクセラが、NBI-1117568はエムラクリジンより有効性について優位性がある、と主張する理由は次のようなもの。
NBI-1117568は、アセチルコリンの代わりとして、M4受容体のオルソステリック部位という所に、直接結合し、コリン作動性神経伝達を促進させ、治療する。
オルソステリック(orthosteric|正しい位置)作動薬と呼ばれる。
対して、エムラクリジンは、M4受容体のアロステリック部位に結合する事で、M4受容体のアセチルコリンに対する感受性を高めるという形で、間接的にコリン作動性神経伝達を促進させ、治療する。
アロステリック(allosteric|異なる位置)作動薬と呼ばれる。
なので、エムラクリジンは、そもそもアセチルコリン自体が不足している時には、有効性が低下する。
中等度から重度の統合失調症患者では、脳内でアセチルコリンが不足しているので、エムラクリジンも効果が低下すると考えられる。
NBI-1117568は、アセチルコリンが不足している中等度から重度の患者にも、M4受容体に対してアセチルコリンの代わりとして供給されるので、有効性を発揮できると考えられる。
中等度から重度の患者には、エムラクリジンよりNBI-1117568の方が有効性が高いらしい。
エムラクリジンより安全性が優れている理由
NBI-1117568は、エムラクリジンより副作用についても、優位性があると主張されている。
NBI-1117568は、エムラクリジンに比べて、脳に届きやすかったり、M4受容体にも結合しやすい。だから相対的に、他の全身の器官への(悪い)作用は及ぼしにくい。
NBI-1117568は、エムラクリジンに比べて、治療したい所へ的(まと)を絞って届きやすい。なので、それ以外の身体部分への作用が少なく、副作用も軽いらしい。
KarXT(コベンフィ)より有効性が優れている理由
ネクセラは、NBI-1117568がKarXTより有効性について優位性があると、次のような主張をしている。
KarXTは、M1受容体とM4受容体の両方に作用し、NBI-1117568は、M4受容体にしか作用しない。だが、統合失調症への主な効果は、M4受容体に由来する。
そのM4受容体へ、KarXTの有効成分よりNBI-1117568の方が、より届きやすい。だから、NBI-1117568の方が有効性について優位性がある、ということらしい。
統合失調症への主な効果は、M4受容体に由来するので、M4受容体に、より届きやすいNBI-1117568は、KarXTより有効性が高いらしい。
KarXT(コベンフィ)より安全性が優れている理由
NBI-1117568がKarXTより副作用について優位性があるのは、次のような理由。
KarXTの成分のうちトロスピウムは、便秘や排尿機能に対する副作用が懸念される。フェーズ2などの臨床試験では、それらの副作用は、極端に多くは見られなかったようだ。
だが、実際に発売されて使われる時には、臨床試験の時と条件がいろいろ違うので、そのような副作用が多く出る可能性もある。
食事のとり方など、臨床試験と、実際の場面では違いがある。
KarXTは、実際にはやはり便秘や排尿機能に対する副作用が多く出る可能性がある。
まとめ
中等度から重度の患者には、エムラクリジンよりNBI-1117568の方が有効性が高いらしい。
NBI-1117568は、エムラクリジンより治療したい所へ的(まと)を絞って届きやすい。だから、他の身体部分への作用が少なく、副作用も少ないらしい。
統合失調症への主な作用は、M4受容体に由来するので、M4受容体に、より届きやすいNBI-1117568は、KarXTより有効性が高いらしい。
KarXTは、実際にはやはり便秘や排尿機能に対する副作用が多く出る可能性があるらしい。
コメント
ネクセラファーマの言っている事を鵜呑(うの)みにすると、NBI-1117568は、KarXTやエムラクリジンより、有効性も高いし、副作用も軽い可能性があるらしい。フェーズ2臨床試験の結果には期待したい。
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