【2024年発売】ダリドレキサント(オレキシン受容体拮抗薬)【睡眠薬】(2024.2.23修正)

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この記事では、統合失調症の人や、うつ病の人からも要望があるので、睡眠薬について書いてみる。

ベンゾジアゼピンの危険性

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬は、昔はよく使用されたと思うが、最近はあまり処方されないのだろうか。

いろいろとデメリットのあるベンゾジアゼピン系の薬は、2014年頃から、診療報酬の改定で診療報酬が減算されたり、処方期間の制限が行われたりしている薬もあるらしい。

海外では、何十年も前からベンゾジアゼピンの危険性が言われている。

なにより常用量であっても、長期の使用で耐性や依存ができる。また、特に高齢者には、認知機能の低下や運動機能の低下の副作用があり、使用を避けるように言われている。認知症との関係も言われている。

やめようとしても、離脱症状が起こったり、不眠が服用前よりさらに悪化することもあるらしい。

オレキシン受容体拮抗薬

長所

この記事と次の記事で紹介するオレキシン受容体拮抗薬(阻害薬)は、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比べた時、多くの長所がある。例えば次のようなもの。

  • 耐性や依存の形成がない。
  • 記憶障害、認知機能障害がない。
  • 離脱症状がない。
  • リバウンドで不眠が悪化しない。
  • 朝の不活発状態がない(持ち越し効果がない)。
  • 日中の活動性が増す。
  • 寝つきが良くなる。
  • 総睡眠時間の増加。
  • 中途覚醒時間の減少。

自分もオレキシン受容体拮抗薬のデエビゴを服用しているが、大変良く効き、長年悩まされた不眠は、ほぼ解決した。

ベルソムラの方が良く効く人もいるらしい。オレキシン受容体拮抗薬は、かなりよい薬だと思う。

いくつかの「オレキシン受容体拮抗薬」

オレキシン受容体拮抗薬(阻害薬)は、既に発売されているものにベルソムラとデエビゴがある。

今開発中なのが、ダリドレキサントとセルトレキサント。

ベルソムラ、デエビゴ、ダリドレキサントは、オレキシン及び受容体双方を阻害(拮抗)させるが、セルトレキサントは、オレキシン受容体中心に選択的に阻害する。

オレキシン1受容体よりもオレキシン受容体を阻害した方が、睡眠に対してより作用が強くなるらしいので、セルトレキサントは効果が強いかもしれない。次の記事を書く時に調べてみる予定。

デエビゴも、オレキシン2受容体の阻害作用が強いので、効果が強くなっている。

別のオレキシン受容体拮抗薬、セルトレキサントの記事へのリンクはこちら。
【副作用が軽い】セルトレキサント(オレキシン受容体拮抗薬)【睡眠薬】(2024.2.28修正)

ベンゾジアゼピンとの作用の違い

オレキシン受容体阻害薬は、今までのベンゾジアゼピン系の睡眠薬や、Z薬と言われる非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬(マイスリー、アモバン、ルネスタ等)とかなり違う。

ベンゾジアゼピンや非ベンゾジアゼピン睡眠薬は、抑制性のギャバ神経伝達を促進し、脳に対する鎮静効果によって、睡眠を促す。(睡眠回路のスイッチをオンにする。)

対してオレキシン受容体阻害薬は、興奮性の神経伝達を阻害し、覚醒を止める形で睡眠を促す。(覚醒回路のスイッチをオフにする。)

この違いは微妙だが、人の脳の神経画像研究からの最新のエビデンスでは、不眠症の人は、睡眠回路のスイッチをオンにする事ができないというより、むしろ覚醒回路のスイッチをオフにする事ができないということで、不眠になっている事が示されている。

オレキシン受容体を阻害した方が、睡眠を促すためのターゲットとして直接的でより自然なのだと思う。それによって効果も高く、いろいろ余計な副作用も回避されているという事だと思う。

有効性ランキング

このセクションでは、オレキシン受容体阻害薬(拮抗薬)であるダリドレキサントの有効性を見ていく。

睡眠薬の有効性には、治験(臨床試験)で測定される3つ程の項目がある。 入眠時間(寝つき)中途覚醒時間総睡眠時間の3つで、これらをみていく。

次のリンク先の論文を参考に、20個の睡眠薬における3つの項目について、有効性のランキングを見ていきたい。

Efficacy and tolerability of pharmacological treatments for insomnia in adults: A systematic review and network meta-analysis

他にも、SE(睡眠効率、sleep efficiency)や、SQ(睡眠の質、sleep quality)というものも、治験で測定される事があるが、今回は省略する。

「寝つき」改善ランキング

まず、15個の睡眠薬の寝つき改善ランキングを下の表に示す。

1位ダリドレキサント7位スルモンチール13位ドキセピン
2位ザレプロン8位ロゼレム14位アモバン
3位レストリル9位エバミール15位トラゾドン
4位デエビゴ10位ベルソムラ
5位マイスリー11位ジフェンヒドラミン
6位ハルシオン12位ルネスタ
(赤)オレキシン阻害薬 (青)ベンゾジアゼピン系睡眠薬 (緑)メラトニン作動薬 (黒)その他

ダリドレキサントは、服用してから最も血中濃度が高くなるピークが、1~2時間後と、すぐに来るので、寝つきは大変良くなる。

寝つき改善ランキングは、1位になっている。デエビゴやベンゾジアゼピン系睡眠薬よりも、寝つきの改善は優れている。

「中途覚醒」改善ランキング

次に、13個の睡眠薬の中途覚醒改善ランキングを下の表に示す。

1位デエビゴ7位トラゾドン13位ザレプロン
2位ダリドレキサント8位ルネスタ
3位チアガビン9位ベルソムラ
4位マイスリー10位アモバン
5位レストリル11位タシメルテオン
6位ドキセピン12位ラメルテオン
(赤)オレキシン阻害薬 (青)ベンゾジアゼピン系睡眠薬 (緑)メラトニン作動薬 (黒)その他

ダリドレキサントは、半減期が8時間となっていて、比較的短い。デエビゴの半減期31時間よりは、だいぶ短い。

それにも関わらず、中途覚醒への効果についても、ダリドレキサントは優秀。デエビゴに次いで2位になっている。

ダリドレキサントは、半減期が長くないので、翌日への持ち越し効果が少なく、認知機能への悪影響が少ない。

「総睡眠時間」増加ランキング

次に、14個の睡眠薬における総睡眠時間の増加ランキングを下の表に示す。

1位デエビゴ7位チアガビン13位アモバン
2位ザレプロン8位ドキセピン14位タシメルテオン
3位レストリル9位ベルソムラ
4位マイスリー10位ラメルテオン
5位ダリドレキサント11位ルネスタ
6位セルトレキサント12位ロゼレム
(赤)オレキシン阻害薬 (青)ベンゾジアゼピン系睡眠薬 (緑)メラトニン作動薬 (黒)その他

総睡眠時間の増加では、やはりデエビゴが1位になっている。いくつかのベンゾジアゼピン系睡眠薬がデエビゴに続き、ダリドレキサントは、5位になっている。

有効性まとめ

ダリドレキサントの有効性は、デエビゴには及ばないが、かなり高いと思う。

ダリドレキサントをデエビゴと比べた時に優れている点は、2つある。血中濃度のピークが早くくるので寝つきが良くなるという事と、半減期が短いので、認知機能への悪影響が少ないという事。

使ってみて、デエビゴよりダリドレキサントの方が良いと言う人もいるかもしれない。

副作用、安全性

治験結果

ダリドレキサントのフェーズ3の治験参加者は、924人だった。

有害事象は、ダリドレキサントで、39.3%、プラセボで、32.7%の患者に起きた。

最もよく起きた有害事象(3%以上)は、鼻咽頭炎、頭痛、傾眠、疲労だった。

深刻な有害事象は、ダリドレキサント3件、プラセボ4件で少なかった。

日中の過度な眠気は、ダリドレキサント4件、プラセボ1件だった。少なかった。

睡眠時の金縛りや幻覚が3件あった。

カタプレキシーは報告されていない。

翌朝の持ち越し効果はなかった。

自殺や自傷行為もなかった。

投薬中止による不眠のリバウンドや離脱症状もなかった。

「副作用が軽い」睡眠薬ランキング

副作用が軽い睡眠薬ランキングを下の表に示す。

1位エバミール7位スルモンチール13位ベルソムラ
2位セルトレキサント8位レストリル14位ルネスタ
3位タシメルテオン9位ダリドレキサント15位レンドルミン
4位デエビゴ10位ドキセピン16位ザレプロン
5位ロゼレム11位マイスリー17位ハルシオン
6位ラメルテオン12位アモバン
(赤)オレキシン阻害薬 (青)ベンゾジアゼピン系睡眠薬 (緑)メラトニン作動薬 (黒)その他

副作用については、メラトニン作動薬が特に軽いと言われている。

オレキシン阻害薬は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬より、概(がい)して副作用が軽い。

意外にも、ダリドレキサントは、デエビゴより副作用が重いようだ。

開発状況

ダリドレキサントは、米国でイドルシア社によって開発された。QUVIVIQという名前で、2022年5月に発売されている。

日本では、2019年12月に、イドルシア社と持田製薬が、ダリドレキサントの共同開発、共同販売のライセンス契約を結んだ。

2023年7月20日、イドルシア社の日本事業などは、ネクセラファーマによって買収された、という発表があった。

2023年10月31日に、イドルシア社によってダリドレキサントの承認申請が行われている。2024年中には日本でも発売される見込み。

コメント

個人的な事を言えば、オレキシン受容体阻害薬のデエビゴのおかげで、今は不眠の悩みはなくなっている。この系統の薬は、特に自分が悩まされた寝つきによく効くと思う。自分にはよく合っていた。

しかも、ギャバ受容体に作用する抑制性の薬ではないので、日中の活動があまり妨げられない。

ただ、オレキシン受容体阻害薬も何年か後に、実は危険な薬だったとなる可能性もないわけではないので、あまり持ち上げ過ぎても良くない。

それにやはり1か月位で耐性がついて、増量しなくてはいけなくなる人もいるようだ。自分は眠れない時にたまにしか飲まないので、耐性はつかないのかもしれない。

とは言え、理論や実証から見てみると、少なくともベンゾジアゼピン系の睡眠薬よりは、前進しているし、その代替になっていくもののように思われる。

別のオレキシン受容体拮抗薬、セルトレキサントの記事へのリンクはこちら。
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