はじめに
この記事では、米国や日本で開発されている抗精神病薬のリストをお示しします。全ての薬を網羅しているという事はないと思います。だいたいは入っていると思います。
以下で、長文が続きますが、最初は、文章の部分は飛ばしてもらってもいいです。リストの方だけ見ていただくという事でもいいです。文章は気が向いたら読んでください。
各1~3フェーズの薬が発売に至る割合(米国)
この記事には、2026年6月時点の開発段階を載せました。前臨床、フェーズ1、フェーズ2,フェーズ3、のうち、どの段階にあるか書いてあります。
米国の統合失調症薬の場合、各フェーズの薬が、発売に至る割合は以下の通りです。
- フェーズ1 6~8%
- フェーズ2 12~15%
- フェーズ3 45~55%
発売に至る薬は、結構少ないです。試験で有効性や安全性などを示せない事があるからです。フェーズ3試験までいっていても、半分は発売されません。
各1~3フェーズにある薬の発売までの期間(米国)
また、一般的に、各フェーズにある薬が、発売されるまでにかかる期間は以下の通りです。
- フェーズ1試験開始から6~9年
- フェーズ2試験開始から4~7年
- フェーズ3試験開始から2~4年
例えば、以下のリストでフェーズ1(米国)と書かれていたら、その薬が米国で発売されるまでに6~9年以内だという事です。ただし、先程言ったようにフェーズ1の薬は6~8%しか発売に至りません。
あるいは、フェーズ3(米国)と書かれていたら、2~4年以内に米国で発売されます。けれど、治験に失敗する事もあるので、45~55%の薬しか発売に至りません。
ただし、近年は、規制当局であるFDAによって、ファストトラック指定、画期的治療薬指定、優先審査指定、などがされる事もあります。その場合、1~3年開発が短縮されます。
米国フェーズ3の薬は、いつ日本で発売されるか
ある薬が米国で発売された後、日本で発売されるまでの時間差をドラッグラグと言います。一般的に、米国と日本のドラッグラグは、3~6年位あります。
ですので、フェーズ3(米国)と書かれた薬が2027~2030年位に米国で発売されるとしたら、日本で発売されるのは、2030年代初頭くらいではないでしょうか。
ただしもちろん、治験に失敗するかもしれないですし、製薬会社が日本でも売ろうとするかはわかりません。結果的に、日本に入って来ない薬も多いです。たぶん、画期的で良い薬であれば、日本にも入ってくる可能性は高くなってくると思います。
日本でフェーズ3試験が既に始まっている新薬
ところで、以下のリストでは、水色でフェーズ3(日本)と書かれている薬があります。少ないので言ってしまいますが、コベンフィ、ウロタロント、エベナミドです。これらは、日本で既にフェーズ3試験が始まっています。日本で2029年頃に発売する事が予測されています。
ウロタロントについては、国際共同治験が行われています。この国際共同治験には、米国や日本も参加しています。
先程、米国と日本のドラッグラグは3~6年位と言いましたが、国際共同治験が行われた場合は、米国と日本の発売時期の差(ドラッグラグ)は、1~3年位です。ウロタロントの場合は、差は1年と予測されています。
長くなりましたので、以上で終わりにします。以下のリストでは、作用メカニズムごとに薬を分類し、1つ1つをセクションにしました。加えて最後に、認知機能障害治療薬と陰性症状治療薬のセクションも設けました。
開発中の「抗精神病薬」リスト(2026年6月1日時点)
ムスカリン作動薬(ムスカリン性アセチルコリン受容体作動薬)
| コベンフィ(Cobenfy, KarXT, トロスピウム + ザノメリン) | M1/M4作動薬(M1サブタイプ受容体とM4サブタイプ受容体に作用) | フェーズ3(日本) |
| ML-007 | M1/M4作動薬 | フェーズ2(米国) |
| NBI-1117570 | M1/M4作動薬 | フェーズ2(米国) |
| ST-905 | M1/M4作動薬 | フェーズ1(米国) |
| ギルガメシュ社の薬 | M1/M4作動薬 | 前臨床(米国) |
| ディレクリジン(NBI-1117568, Direclidine, ネクセラのM4作動薬) | M4作動薬(M4サブタイプ受容体に作用) | フェーズ3(米国) |
| GXV813 | M4作動薬 | フェーズ2(米国) |
| ANAVEX3-71 | M1作動薬、シグマ1受容体作動薬 | フェーズ2(米国) |
| NS-136 | M4アロステリック作動薬(M4サブタイプ受容体のアロステリック部位に作用) | フェーズ2(米国) |
| エムラクリジン(Emraclidine) | M4アロステリック作動薬 | フェーズ2(米国) |
| NMRA-861 | M4アロステリック作動薬 | フェーズ1(米国) |
| NMRA-898 | M4アロステリック作動薬 | フェーズ1(米国) |
| NTX-253 | M4アロステリック作動薬 | フェーズ1(米国) |
TAAR1作動薬(トレースアミン関連受容体1作動薬)
| ウロタロント(SEP-363856) | TAAR1作動薬、セロトニン1A受容体作動薬 | フェーズ3(日本) |
| LY03020 | TAAR1作動薬、セロトニン2C受容体作動薬 | フェーズ2(中国) |
| ラルミタロント(Ralmitaront、RG7906、RO6889450) | TAAR1部分作動薬 | フェーズ2中止(米国) |
PDE阻害薬(ホスホジエステラーゼ阻害薬)
| CPL’36 | PDE10A阻害薬 | フェーズ3(米国) |
| バリポデクト(balipodect) | PDE10A阻害薬 | フェーズ3(米国) |
| EM-221 | PDE10A阻害薬 | フェーズ2(米国) |
| オソレスノントリン(Osoresnontrine, BI-409306) | PDE9A阻害薬 | フェーズ2(米国) |
グルタミン酸調節薬
| エべナミド(Evenamide, EA8001)(補助薬) | Nav1.3、Nav1.7 及び Nav1.8 電位開口型ナトリウムチャネル阻害薬 | フェーズ3(日本) |
| ポマグルメタッドメチオニル(DB-103) | mGluR2 及び mGluR3作動薬(代謝型グルタミン酸受容体2&3調節薬) | フェーズ2(米国) |
| SKL20540 | mGluR5調節薬(代謝型グルタミン酸受容体5調節薬) | フェーズ1(米国) |
| LTX-001 | グルタミナーゼ阻害薬 | フェーズ1(米国) |
神経可塑性促進薬
| タズベンテトール(Tazbentetol,SPG302) | シナプス再生療法 | フェーズ2(米国) |
| デリックス社の薬 | 神経可塑性促進 | 前臨床(米国) |
新しい非定型抗精神病薬
| カプリタ(ルマテペロン) | ドーパミン2 及び セロトニン2A 受容体遮断薬、セロトニン再取り込み阻害、ドーパミン1受容体作動薬、ドーパミン2自己受容体部分作動薬 | 発売済み(米国) |
| バイサンティ(イロペリドン改良版, milsaperidone) | ドーパミン2受容体遮断薬、セロトニン2A受容体遮断薬、α受容体遮断薬、その他の作用 | 発売済み(米国) |
| カリプラジン(Vraylar, Cariprazine) | ドーパミン2 及び セロトニン1A 受容体部分作動薬、セロトニン2A受容体遮断薬、その他の作用 | 発売済み(米国) |
| ブリラロキサジン(Brilaroxazine, oxaripiprazole) | ドーパミン2受容体部分作動薬、 セロトニン2A受容体遮断薬、その他の作用 | フェーズ3(米国) |
| LB-102(ソリアン改良版) | ドーパミン2、ドーパミン3 及び セロトニン7、セロトニン2B 受容体遮断薬 | フェーズ3(米国) |
| FKF-02SC(TGOF-02N) | ドーパミン2及び セロトニン2A 受容体遮断薬、その他の作用 | フェーズ2(米国) |
その他の作用メカニズム
| リバルビ(オランザピン+サミドロファン, Lybalvi) | (ドーパミン2 及び セロトニン2A 受容体遮断薬、その他の作用) + (μオピオイド受容体遮断薬) | 発売済み(米国) |
| AM-01 | (クロザピンの危険な副作用を軽減する薬) | フェーズ3(米国) |
| ナベン(安息香酸ナトリウム, Clozaben, NaBen) (補助薬) | D-アミノ酸酸化酵素阻害薬 | フェーズ2/3(米国) |
| デューデキストロメトルファン(Deudextromethorphan、AVP-786, CTP-786) | シグマ1受容体作動薬,、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害薬、非競合的NMDA受容体遮断薬、ムスカリン作動薬、その他の作用 | フェーズ2/3(米国) |
| マスピルジン(Masupirdine, SUVN-502) | セロトニン6受容体遮断薬 | フェーズ2(米国) |
| ルバダキシスタット(Luvadaxistat, TAK-831)(補助薬) | D-アミノ酸酸化酵素阻害薬 | フェーズ2(米国) |
| SP-624 | 遺伝子発現、代謝、DNA修復、の調節 | フェーズ1/2(米国) |
| AVAT-021(CBD, カンナビジオール) | カンナビノイド受容体調節薬、抗酸化薬、 その他の作用 | フェーズ1(米国) |
| CVN766 | オレキシン1受容体阻害薬 | フェーズ1(米国) |
| TS-134 | 作用メカニズム不明 | フェーズ1(米国) |
| NXE0048149 | GPR52作動薬(オーファンGタンパク質共役型受容体52受容体作動) | フェーズ1(米国) |
| OV4071 | KCC2直接活性化薬(カリウム・クロライド共輸送体2 直接活性化薬) | フェーズ1(米国) |
| オーティフォニー社の薬 | Kv3カリウムチャネル調節薬 | 前臨床(米国) |
| ベタイン(Betaine)(補助薬) | 作用メカニズム不明 | 不明(日本) |
認知機能障害治療薬
| イニダスカミン(Inidascamine, RL-007) | アセチルコリン受容体調節薬、GABAB受容体調節薬、NMDA受容体調節薬 | フェーズ2(米国) |
| KYN-5356 | キヌレニン-オキソグルタル酸トランスアミナーゼ阻害薬 | フェーズ2(米国) |
| VQW-765 | ニコチン作動薬(α7ニコチン性アセチルコリン受容体作動薬) | フェーズ2(米国) |
| ASP-4345 | ドーパミン1受容体アロステリック作動薬 | フェーズ2(米国) |
| GT-002 | GABA Aアロステリック作動薬 | フェーズ2(デンマーク) |
| ALTO-101 | PDE4阻害薬 | フェーズ2失敗(米国) |
| SKL-15508 | ニコチン作動薬 | フェーズ1/2(米国) |
| MT1988 | ニコチン作動薬 | フェーズ1(米国) |
| プラジネムドール(Plazinemdor) | NMDA受容体アロステリック作動薬 | フェーズ1(米国) |
| NXE0041178 | GPR52作動薬 | 不明 |
| サマリサント(samelisant) | ヒスタミンH3逆作動薬 | 不明 |
| ウスマラプリド(Usmarapride, SUVN-D4010) | セロトニン4受容体部分作動薬 | 不明 |
| BMS-955829 | mGluR5アロステリック作動薬 | 不明 |
| ASP-5736 | セロトニン5A受容体阻害薬 | 不明 |
陰性症状治療薬
| ロルペリドン(Roluperidone) | セロトニン2A 及び シグマ2 受容体遮断薬 | フェーズ3(米国) |
| CT-155 | デジタル機器(スマートフォンアプリ) | フェーズ3(米国) |
| バフィデムスタット(vafidemstat) | LSD1阻害薬(リジン特異的脱メチル化酵素1阻害薬) | フェーズ2(米国) |
| LY03017 | セロトニン2A逆作動薬 | フェーズ1(米国) |
「認知機能障害治療薬」や「陰性症状治療薬」については、次の記事で詳しく書いています。
統合失調症の認知機能障害や陰性症状に効く開発中新薬22個