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はじめに
皆さん、こんにちは。今回は、後何年かのうちに発売されそうな抗精神病薬のうち、補助薬として使われる3つの薬について話します。
今後、この表にある開発中新薬の全てについて、最新情報をお伝えしていく予定です。今回は、エベナミド、ロルペリドン、ベタインについてお伝えします。
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エベナミド
まず、エベナミドについてですが、この薬はかなり有望視されています。
この薬は脳内のグルタミン酸の過剰な放出を阻害して、陽性症状を抑えます。既存薬に追加投与されて使われます。
既存薬だけでは幻聴などが残ってしまう患者や、治療抵抗性の統合失調症患者に対して効果があります。
一年間の長期投与試験では、治療抵抗性の患者に追加投与されました。その結果、70%以上の患者に臨床的に重要な程の効果が見られました。25%の患者は寛解を達成しました。
治療抵抗性の患者、つまり既存薬が十分に効かなかった患者に対する効果として、前例がない程の大きな効果でした。
また、エベナミドを服用する事によって、再発率も格段に下がります。リスパダール、ハロペリドール、カリプラジンを1年間投与された場合、再発率はそれぞれ、23.2%、35.6%、30%となっています。
エベナミドを1年間投与された場合は、再発した人は、なんと1人もいませんでした。これは驚くべき事だと思います。また、副作用についてもほとんどありませんでした。
既存薬を服用しても幻聴などが残ってしまう人は結構いるようなので、この薬はかなり希望が持てる薬だと思います。
米国では、現在、フェーズ3試験が準備中です。2025年の前半にはフェーズ3試験が開始される予定です。日本においては最近、EAファーマがエベナミドの製造・販売ライセンスを取得しています。
なので、日本での導入も結構早いと思います。2028年とか2029年位になると希望的に予想します。
ロルペリドン
次にロルペリドンについて話します。ロルペリドンは、統合失調症の陰性症状治療薬です。今まで陰性症状だけを治す薬はなかったので、期待が高いです。
ロルペリドンは、シグマ2受容体調節薬です。記憶や学習などの認知機能にも効果があると言われています。
フェーズ2試験では、陰性症状への有効性は、効果量0.57と出ています。効果量は一般的に、0.2で小、0.5で中、0.8で大、であると言われています。
ロルペリドンの効果量0.57は、結構大きいように思います。フェーズ2試験では、まあまあ高い有効性が示されました。
けれど、フェーズ3試験では、効果量は0.20しか出ませんでした。陰性症状への有効性は示されませんでした。開発社側はプラセボ反応が大き過ぎたためだと言っています。
長期投与試験では、ある程度の有効性が見られたようです。けれど、米国の規制当局(FDA)からは、安全性を確認するための被験者の数が不十分と言われています。
開発社のミネルバ社は、2022年頃からFDAに製造販売のための承認申請をしたり、FDAと話し合いをしたりしています。
けれど、FDAは、有効性や安全性を確認するためのデータが不足していると考えています。製造販売承認はなかなか下りず、発売に至っていません。
FDAは、追加の治験を行う事を求めています。けれど、ミネルバ社は、コストのかかる治験をなかなかやろうとしていません。
今後どうなるのかはわかりません。ロルペリドンの米国での発売は少なくとも2年遅れる可能性があると言っている人がいます。
その話からすると、日本での発売は、希望的に見ても、2029年位になるのではないでしょうか。けれど、そもそもロルペリドンが世に出る確率は半分位しかないのではないでしょうか。
患者側からしたらもちろん陰性症状に効く薬があれば有り難いです。今後のロルペリドンの開発動向に注目していきたいです。
ベタイン
次に、ベタインについて話します。ベタインもおそらく既存薬に追加して使われると思います。治療抵抗性の患者や既存薬だけでは効果が不十分な患者に使われると思います。
ベタインには、脳に対して抗炎症作用や神経保護作用があります。マウスにベタインを与えると、脳の神経細胞の回復が見られたり、他のマウスとのコミュニケーションの回復が見られたりしています。
2014年に、統合失調症患者の血中ではベタインの濃度が低下している事が発見されました。そこで、ベタインを投与すれば、統合失調症が治療できるのではないかと考えられました。
東大病院では、小規模な臨床試験が行われました。陽性症状への効果が確認されています。確かこの東大病院の試験がうまくいったら、創薬のための開発計画が進められるという事でした。その後、2年以上たちましたが、なかなか治験は始まりません。
発売されるとしたら、2030年代位になってしまうかもしれません。すぐに試したい人は、サプリメントで売っているので、試してみてもいいかもしれません。
ベタインは広く魚介類や植物などに含有している天然の物質です。それ程、危険性はないと思います。
イクレペルチン
3つの開発中の補助薬について述べました。補助薬として使われる開発中の薬には、他にイクレペルチンがありました。イクレペルチンは認知機能障害治療薬です。
けれどフェーズ3試験で有効性を示せず、開発は中止になりました。認知機能障害については、コベンフィの方に期待するしかありません。
まとめ
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- エベナミドは、既存薬が十分に効いていない患者に補助薬として使われます。陽性症状にかなり効果が高い可能性があります。2029年の発売を予想します。
- ロルペリドンは、補助薬として使われて、陰性症状を改善する可能性があります。なんとか発売されて欲しいです。発売されるとしたら、早くて2029年になると予想します。
- ベタインもおそらく補助薬として使われて、陽性症状を改善します。開発はなかなか進んでいません。発売は、2030年代前半位になってしまうのではないでしょうか。
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