【副作用が軽い】セルトレキサント(オレキシン受容体拮抗薬)【睡眠薬】(2024.2.28修正)

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別のオレキシン受容体拮抗薬、ダリドレキサントの記事へのリンクはこちら。
【2024年発売】ダリドレキサント(オレキシン受容体拮抗薬)【睡眠薬】

うつへの有効性 

セルトレキサントは、他のオレキシン1及び2受容体拮抗薬と違って、オレキシン2受容体に選択的に作用し、阻害する薬となっている。選択的オレキシン2受容体拮抗薬(阻害薬)とも呼ばれる。

そのために不眠に加えて、うつに対しても効果があるとされている。うつへの効果はオレキシン1受容体拮抗薬にはなく、オレキシン2受容体拮抗薬の方にだけある可能性があるらしい。

他の抗うつ薬に補助薬として使われるようだ。

セルトレキサントは、SSRIやSNRIが効かないうつ病患者に対しても抗うつ効果があったようだ。また、「臨床的に意味のある改善」が見られた。

治験が行われた時、「統計的に有意な改善」があったと言われるだけでなく「臨床的に意味のある改善」があったと言われる時は、期待が高いと思う。

オレキシン受容体拮抗薬は、従来のうつ病薬と比べて安全だと言われる。うつ病の新しい治療アプローチが出てくる可能性がある。

不眠への有効性ランキング

このセクションでは、オレキシン受容体阻害薬(拮抗薬)であるセルトレキサントの有効性を見ていく。

睡眠薬の有効性には、入眠時間(寝つき)中途覚醒時間総睡眠時間などの項目がある。けれど、セルトレキサントについては、入眠時間中途覚醒への有効性は、わからない。

セルトレキサントの総睡眠時間睡眠効率への効果はわかるので、それらについて書く。

次のリンク先の論文を参考に、有効性のランキングを見ていきたい。十数個の睡眠薬の有効性と比較をしていく。

Efficacy and tolerability of pharmacological treatments for insomnia in adults: A systematic review and network meta-analysis

「総睡眠時間」増加ランキング

まず、14個の睡眠薬における総睡眠時間の増加ランキングを下の表に示す。

1位デエビゴ7位チアガビン13位アモバン
2位ザレプロン8位ドキセピン14位タシメルテオン
3位レストリル9位ベルソムラ
4位マイスリー10位ラメルテオン
5位ダリドレキサント11位ルネスタ
6位セルトレキサント12位ロゼレム
(赤)オレキシン阻害薬 (青)ベンゾジアゼピン系睡眠薬 (緑)メラトニン作動薬 (黒)その他

総睡眠時間の増加では、デエビゴが1位になっている。いくつかのベンゾジアゼピン系睡眠薬がデエビゴに続き、ダリドレキサントが5位になっている。

セルトレキサントは、ダリドレキサントの次の6位になっている。まあまあ効果は高い方のように思う。

「睡眠効率」改善ランキング

次に、13個の睡眠薬の「睡眠効率」改善ランキングを下の表に示す。

睡眠効率は、『実際の睡眠時間÷ベッドにいた時間×100』という計算で算出される。寝つきが悪かったり、中途覚醒時間が多かったりすると、睡眠効率は小さくなる。

例えば、7時間眠っていてベッドにいた時間が7時間ならば睡眠効率は100%になる。 実際には5時間くらいしか眠っていなかったのに早めに就寝して7時間ベッドにいたら、睡眠効率は71%になる。

下の表は、睡眠効率を何%改善できたかのランキングになっている。

1位デエビゴ7位エバミール13位アモバン
2位マイスリー8位トラゾドン
3位セルトレキサント9位ラメルテオン
4位レストリル10位ドキセピン
5位ベルソムラ11位ルネスタ
6位スルモンチール12位ロゼレム
(赤)オレキシン阻害薬 (青)ベンゾジアゼピン系睡眠薬 (緑)メラトニン作動薬 (黒)その他

やはりデエビゴが、一番睡眠効率を改善できるらしい。セルトレキサントも3位で、結構優秀。

セルトレキサントの血中濃度は、0.3~1.5時間位にピークが来て、半減期は、2~3時間になっている。急速にピークが来て、すぐに効き目が切れる。

なので、寝つきへの効果は高いが、中途覚醒への効果は低いかもしれない。

有効性まとめ

セルトレキサントの有効性は、デエビゴには及ばないが、まあまあ高いと思われる。寝つきへの効果はかなり高いが、中途覚醒への効果はそれ程高くないという治験結果がある。

副作用

副作用については、やや情報量の多いうつ病患者に対するフェーズ2b臨床試験の情報を書いておく。

治験参加者は287人だった。

有害事象は、セルトレキサントで41.0%、プラセボで40.9%起こった。

最もよく起こった有害事象(5%以上)は、頭痛、眠気、吐き気だった。

投与中止になった原因で多かった有害事象は、不眠、睡眠麻痺、イラつき、吐き気、嘔吐、アラニンアミノトランスフェラーゼやアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加だった。

大体の有害事象はマイルドで穏やかだった。

深刻な有害事象は報告されていない。

奇妙な夢、睡眠麻痺、悪夢などもあった。

希死念慮や自殺企図などはなかった

「副作用が軽い」睡眠薬ランキング

副作用が軽い睡眠薬ランキングを下の表に示す。

1位エバミール7位スルモンチール13位ベルソムラ
2位セルトレキサント8位レストリル14位ルネスタ
3位タシメルテオン9位ダリドレキサント15位レンドルミン
4位デエビゴ10位ドキセピン16位ザレプロン
5位ロゼレム11位マイスリー17位ハルシオン
6位ラメルテオン12位アモバン
(赤)オレキシン阻害薬 (青)ベンゾジアゼピン系睡眠薬 (緑)メラトニン作動薬 (黒)その他

副作用については、メラトニン作動薬が特に軽いと言われている。

オレキシン阻害薬は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬より、概(がい)して副作用が軽い。

セルトレキサントは、メラトニン作動薬デエビゴよりも副作用が軽い。2位になっている。

開発状況 

セルトレキサントは、米国でミネルヴァ社によって開発されている。

不眠症への適応に向けては、2019年6月にフェーズ2bの結果が出ているが、2024年2月時点で、依然としてフェーズ2の段階にある。

うつ病への適応に向けては、2023年10月にフェーズ3試験が完了している。2024年2月時点で、依然としてフェーズ3の段階にある。

日本ではまだ開発が行われていないようだ。 

コメント(まとめ)

セルトレキサントは、半減期が短いので、中途覚醒への効果は、他のオレキシン受容体拮抗薬よりやや小さい。

けれど、入眠(寝つき)への効果が高いし、即効性がある。入眠への効果はデエビゴよりさらにいい。

もしかしたら、中途覚醒があまりなく、寝つき限定で効果を求めている人には良い薬なのかもしれない。また、毎日でなく頓服で飲むだけの人にもいいかもしれない。

うつへの効果については、SSRIやSNRIのような作用機序ではないオレキシン受容体阻害という治療アプローチになっている。

セルトレキサントは、特に副作用の軽さに期待するが、うつや不眠への有効性も高いかもしれない。 

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参考文献

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