統合失調症 発売済み薬5 リスパダール(リスペリドン)

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はじめに

リスパダールは、ドーパミンやセロトニンなどを遮断する非定型抗精神病薬です。統合失調症、双極症の躁状態、不眠や不安、衝動性、小児ASDの易刺激性、などに対して使われます。

陽性症状にしっかりとした効果があると言われる一方、錐体外路症状、高プロラクチン血症、鎮静、眠気、などの副作用が強めです。体重増加も中等度あります。

リスパダールは、錠剤もありますが、リスパダールコンスタと言う持効性注射剤(LAI)もあります。持効性注射剤の方が錠剤より、副作用も軽く、陰性症状への効果も高いと言われています。

リスパダールのki値

このセクションでは、リスパダールのki値について書きます。効果と副作用について考える準備をします。

脳細胞(神経細胞)には、抗精神病薬が結合する事ができる「受容体」がついています。受容体には様々な種類があります。

抗精神病薬がどの受容体に結合できるかによって、どの「効果や副作用」が出るかが決まってきます。

下の表の1番左の列に、リスパダールが主にどの受容体に結合(作用)できるか示してあります。

作用効果と副作用リスパダールのki値
5HT2A受容体遮断EPS改善、睡眠改善、抗うつ、衝動抑制0.6
5HT2B受容体遮断抗うつ61.9
5HT2C受容体遮断体重増加、睡眠改善、抗うつ、認知改善26
5HT5A受容体遮断(不明)206
5HT7受容体遮断抗うつ、認知改善6.6
α1受容体遮断眠気、起立性低血圧2
D2受容体遮断陽性改善、EPS悪化3
D3受容体遮断陽性改善、抗うつ14
H1受容体遮断体重増加、眠気155
M1受容体遮断口喝、便秘、眠気>5000

表に遮断と書いてありますが、抗精神病薬は結合した時に、受容体を刺激する刺激薬か、受容体を遮断する遮断薬になり得ます。そのどちらかによって、反対の「効果や副作用」が起こり得ます。

(上の表を見てみると、リスパダールの場合は、各受容体に対する刺激薬としての作用はなく、もっぱら、遮断薬として作用する、となっています。)

また、抗精神病薬の「効果や副作用」の「強さの度合い」は、受容体に「どの程度の強さ」で結合できるかで決まってきます。

受容体への結合の強さ(作用の強さ)は、「ki値」というもので表されます。表の1番右の列では、リスパダールの各受容体に対する「ki値」が書いてあります。もう一度表を貼っておきます。

作用効果と副作用リスパダールのki値
5HT2A受容体遮断EPS改善、睡眠改善、抗うつ、衝動抑制0.6
5HT2B受容体遮断抗うつ61.9
5HT2C受容体遮断体重増加、睡眠改善、抗うつ、認知改善26
5HT5A受容体遮断(不明)206
5HT7受容体遮断抗うつ、認知改善6.6
α1受容体遮断眠気、起立性低血圧2
D2受容体遮断陽性改善、EPS悪化3
D3受容体遮断陽性改善、抗うつ14
H1受容体遮断体重増加、眠気155
M1受容体遮断口喝、便秘、眠気>5000

ki値は、数値が小さい程、結合力が強くなり、「効果や副作用」の度合いが強いです。

1未満「非常に強い作用」1~10「強い作用」10~100「中等度の作用」100~1000「弱い作用」、>1000「無視できるほどのわずかな作用」、となっています。

表に書いてある「効果や副作用」は、網羅はしていないです。重要そうなものを選んで載せました。「EPS」とは「錐体外路症状」の事です。

以後のセクションでは、各受容体に対するki値を参考に、リスパダールの「効果と副作用」について考えてみます。

不眠、眠気、鎮静

このセクションでは、リスパダールが不眠、眠気、鎮静、に対してどのように作用するかを考えてみます。

脳の睡眠回路は、GABA(ギャバ)という神経伝達物質が作動させます。覚醒回路は、ヒスタミン、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、などの神経伝達物質が作動させます。

神経伝達物質は、脳の神経細胞についている「受容体」に結合して、覚醒回路や睡眠回路を作動させます。

ドーパミンの覚醒回路を例として示します

ヒスタミン、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンは、それぞれ順に、H1受容体、M1受容体、α1受容体、D2受容体、5HT2A受容体、に結合し、覚醒回路を作動させます。

(それぞれの神経伝達物質は、別のサブタイプの受容体へも結合しますが、覚醒回路を作動させる代表的なサブタイプ受容体を挙げました。)

それらの神経伝達物質が各受容体へ結合するのを、抗精神病薬が遮断(阻害)すると、覚醒回路が遮断(阻害)されます。すると、眠気や鎮静が起こります。

リスパダールが、それらの受容体を遮断(阻害)する作用はどれ位か、ki値で考えてみたいと思います。下の表にそれぞれのki値を示します。

作用リスパダールのki値
H1受容体遮断155
M1受容体遮断>5000
α1受容体遮断2
D2受容体遮断3
5HT2A受容体遮断0.6

鎮静作用に1番影響を及ぼすH1遮断作用は、ki値155で、いくらかあります。

M1遮断作用は、ほぼないです。α1遮断作用は、ki値2で強いです。D2遮断作用も、ki値3で強いです。5HT2A遮断作用は、ki値0.6で非常に強いです。

D2遮断作用がki値3で、やや強い程度ですが、リスパダールはD2受容体に長く結合するので、ki値3という数値以上に、その作用はかなり強くなっています。

結果的に、ある程度鎮静作用は高くなっています。特に、安定維持期になってくると、鎮静作用を強く感じる人の方が多いようです。

実際にリスパダールを使った人の話では・・・・

  • 「眠気の副作用が強く出る事と、寝過ぎ+寝起きが悪くなるのが困る。」
  • 「昼間は体がだるくしんどく眠いです。」
  • 「何も手につかなくなって、ただひたすら寝ておきたいってのはあるな。」
  • 「普段やたらと眠くなって疲れやすくなる。」

などと、言っている人がいました。逆に、ごく一部の人は・・・

  • 「夜、眠気が全く来ないから仕事もできない。」
  • 「私は22時に就寝して3時に中途覚醒。その後、起きだしてはまた眠るのを2~3回繰り返して、8時起床。朝は体がだるくて眠くてしんどい。」

などと、言っていました。

治験の副作用データでは、賦活系(興奮系)と鎮静系の副作用は、下の表のようになって

賦活系副作用発生率鎮静系副作用発生率
不眠症4.11%眠気2.55%
易刺激性2.98%倦怠感2.29%
不安2.38%鎮静0.7%
激越1.10%
落ち着きのなさ0.54%

賦活系の副作用の方が若干目立っているように見えますが、表の副作用データは「急性期」患者に対するデータなので、そのせいで賦活系の副作用が少し多く出たのかもしれません。

安定維持期の患者の感想では、眠くなる人の方が、断然多かったように思います。

リスパダールは、安定維持期の患者に使われた場合、眠気が出る事が多く、どちらかと言うと、「鎮静的な薬」のように思われます。急性期に使われた場合も鎮静作用はある方だと思います。

抗うつ効果、陰性症状への効果

このセクションでは、リスパダールの陰性症状への効果や抗うつ効果について書きます。陰性症状やうつへの効果に関係のあるki値を下の表に示します。

作用リスパダールのki値
5HT2A受容体遮断0.6
5HT2B受容体遮断61.9
5HT2C受容体遮断26
5HT7受容体遮断6.6
D3受容体遮断14
D2受容体遮断3

上の表のD2遮断作用以外の作用は、抗うつ効果や陰性症状への効果につながると思われます。

一方、D2遮断作用が強いと陰性症状の悪化につながります。リスパダールのD2遮断作用はki値3で、他と比べてそれ程大きいものではないです。

けれど、一般的にリスパダールは、陰性症状への効果はあまり高いとは言われていません。

なぜ、陰性症状への効果があまり高くないかというと、リスパダールがD2受容体に「より長く持続的に」結合する事が原因であるらしいです。

その結果、リスパダールのD2遮断作用は、ki値3で、他と比べてものすごく強いわけではないですが、その数値以上に大きな作用になっている、という事らしいです。

D2遮断作用がより長く持続的に働く事によって、陰性症状を悪化させることにもつながっていると思います。

実際の臨床の現場では、陰性症状に対する効果がびっくりする程ある場合もあり、まあまあの効果はあるとも言われます。けれどやはり、他の非定型抗精神病薬と比べると見劣りするらしいです。

陽性症状へ比較的しっかり効く一方、陰性症状への効果が弱いと言う意味では、セレネース(ハロペリドール)的な非定型抗精神病薬とも言えるらしいです。

実際にリスパダールを服用している人の話では・・・・

  • 「これ若干感情が平坦になるね。何やってもあんまり楽しくない。」
  • 「何をしても楽しいって感じない。いつもだるいし面倒臭いし、一応こなせるんだけど、本当にやな感情がつきまとう。」
  • 「自分はこの薬を飲み始めて(1mg)から仕事のペースが劇落ち、原因不明の抑うつ感情が出はじめました。」
  • 「2ミリ飲んでるけど大学受験のための勉強のやる気が出ない。」

などと、言っている人がいました。逆にごく一部の人は・・・

  • 「俺にとってはリスパダールは活力を生む薬だ。」
  • 「リスパダールに躁状態になる副作用ってありますか?インプロメンからリスパダールに変えたら何か何でもかんでもやりたくなってしまって。」

などと、言っている人もいました。

リスパダールは、ki値からはよくわからなかったのですが、多くの場合、陰性症状への効果や抗うつ効果は、弱く出るようです。

高用量で使われた場合、むしろやる気や元気を削ぐように働くかもしれません。

けれど、5HT7A受容体遮断作用なども強いので、特に低用量では、元気が出る人も、中にはいるかもしれません。

陽性症状への効果

このセクションでは、リスパダールの陽性症状への効果について考えてみます。陽性症状への効果に関係するki値を下の表に示します。

作用リスパダールのki値
D2受容体遮断3

リスパダールのD2遮断作用はki値3で、他の抗精神病薬と比べて特別に強いわけではないです。

けれど、先程書いたように、リスパダールはD2受容体に「長時間結合」する事で、陽性症状への効果は高くなる傾向にあります。

リスパダールの「有効性」のセクションでも、陽性症状への効果はオランザピンよりある、というデータを示しました。

ある精神科医も、強い薬なので、安定維持期にリスパダールを使う事は勧めていないです。けれど、急性期に使う事は悪くないと言っています。

オランザピンやセロクエルに比べてリスパダールは、非常にタイトな薬で効果に隙(すき)がないとも言っています。ハロペリドール的な強い薬らしいです。

一方で、リスパダールを使って、逆に陽性症状が悪化する人がポツポツ見られるようです。リスパダールを実際に使用した人の話では・・・・

  • 「リスパ飲んでから幻聴が聞えるようになった。」
  • 「昨日から他のが合わなくてリスパダール1mg処方されたんだが、より幻覚見えるんだけど・・・」
  • 「リスパダールを飲むとものすごく体調は悪くなるし、妄想や幻聴、幻覚は出るし、周囲は気になりだすし、いいとこなし。」

などと言っている人がいました。

ある精神科医によると、高容量(4mg以上)の人では、減量する事で一時、悪化する人も多いですが、そのような離脱症状を乗り越えると、ほとんどの人で以前より精神症状が軽快するそうです。

減量によって幻聴や幻視が改善する事すらあり、ほとんどの人で不快感、不機嫌、希死念慮、倦怠感、錐体外路症状、が軽快するそうです。

ですがもちろん、リスパダールで陽性症状がかなり良くなる人もいます。

  • 「私はリスパで救われたよ。強い幻聴と妄想がほぼなくなった。」
  • 「なんだかんだで精神病にはよく効く薬だよなぁ・・・」
  • 「この薬すごい効いてくれてる。体感幻覚、緊張感、頭に音が飛び込んでくることとか、電波攻撃がかなり薄くなってくれた、うれしい。」

などと言っている人がいました。

リスパダールの陽性症状への効果は、概(がい)して高いと思われます。けれど、ごく一部の人で陽性症状が生じてしまう人がいます。減量によってかえって良くなる人もいます。

錐体外路症状

このセクションでは、リスパダール服用によって起こる錐体外路症状について書きます。錐体外路症状に関するki値を下の表に示します。

作用リスパダールのki値
5HT2A受容体遮断0.6
D2受容体遮断3

リスパダールの5HT2A遮断作用は、ki値0.6で、かなり強く、その分錐体外路症状を軽減していると思われます。

一方、リスパダールのD2遮断作用は、ki値的には3やや強い程度なはずですが、実際には長く受容体に結合する結果、3という数値よりかなり強くなっています。

結果的に、リスパダールの錐体外路症状は、非定型抗精神病薬の中では、強い方になっています。

特に、リスパダールを高用量使うと、セレネース(ハロペリドール)と変わらない位、錐体外路症状が出現するらしいです。高用量では、従来の定型抗精神病薬と同じ位出現すると言われています。

治験の時の副作用データでは、錐体外路症状の出現率は、次の表のようになっています。

副作用出現率
アカシジア4.95%
振戦3.07%
流延過多2.53%
筋固縮2.01%
構音障害1.77%
ジストニア1.06%
ジスキネジア0.52%

上の表のように錐体外路症状は、いろいろ出ていると思います。実際にリスパダールを服用した人の話では・・・・

  • 「リスパダール2mgだと振えが来て、アキネトン飲んでもだめで、1.5mg処方にされた・・・」
  • 「アカシジアは最初の病院ではいきなりリスパだけ出されて、苦しかった。アキネトンとアーテンとヒルベナ飲んでます。」
  • 「最近ジストニア(体が曲がる)が出始めて焦っています。」
  • 「口が勝手に動くよ。物嚙んでないのに動くよ。1mgを2錠です。」
  • 「リスパダールのためにろれつが回らなくなり、友達から中国語をしゃべっているのって言われます。」

などと、言っている人がいました。

リスパダールは錐体外路症状が出やすいです。特に高用量では、従来の定型抗精神病薬と同じ位出ます。

体重増加

このセクションでは、リスパダールの体重増加の副作用について考えてみます。体重増加に関係するki値を下の表に示します。

作用リスパダールのki値
H1受容体遮断155
5HT2C受容体遮断26

リスパダールのH1遮断作用は、ki値155で、いくらかあります。5HT2C遮断作用は、ki値26で、中等度あります。

結果的に、オランザピンやセロクエル程ではないですが、リスパダールは、体重増加が起こりやすいと思います。

オランザピンは少量でも使えば、体重増加が起こりますが、リスパダールは、特に高用量になる程、体重増加の副作用が増えるらしいです。

実際にリスパダールを服用している人で、体重増加で苦しんでいる人は、かなり多いように感じました。

  • 「散々言われているけどこの薬太るね。」
  • 「オランザピンより太る気がするよ。」
  • 「やっぱりこの薬太るのか・・・。3か月で5kgも太ってしまった。」
  • 「リスパ8mgで11kg太った。」
  • 「リスパダールで50キロふとった。」
  • 「59kgだったのに1年で77kgまで増えた。たしかに食べる量は増えたけどこの太り方は異常。」

などと、言っている人がいました。

リスパダールを服用して太る人は多いかもしれません。高用量ではさらに太るらしいです。

性機能障害

このセクションでは、リスパダールによって起こる高プロラクチン血症について書きます。高プロラクチン血症に関するki値を下の表に示します。

作用リスパダールのki値
D2受容体遮断3

リスパダールのD2遮断作用は、ki値3となっていますが、何度も言うようにD2受容体に長く結合するので、その作用は、3という数値以上に強いものになっています。

結果として、高プロラクチン血症に関する副作用は多いです。この欠点は大きなもので、クセモノだと言っている精神科医もいます。

実際にリスパダールを服用している人の話では・・・・

  • 「8か月生理こないよー」
  • 「乳汁が出るようになったので、断薬してる。」
  • 「性欲は本当なくなるね。精子でないし。」
  • 「性障害の人多いね。俺もだけど。」
  • 「俺はやっぱり性欲の減退で苦しんだ。」

などと、言っている人がいました。

治験のデータでは、「生殖系」の主な副作用は次の表のようになっていました。

副作用発生率
月経障害1.08%
無月経0.69%
不規則月経0.24%
乳汁漏出症0.24%
射精障害0.12%

パーセントとしてはあまり多くない感じですが、実際にはもっと多い気がします。おそらくこの表は何週間かの短期のデータなので、長期的にはもっと多いのかもしれません。

リスパダール使用者の掲示板を見てみると、性機能障害が出ている人は結構多かったです。

高プロラクチン血症に関する副作用で苦しんでいる人は多くいました。リスパダールに多い副作用かもしれません。

全般的な有効性

このセクションではリスパダールの有効性の度合いについて書きます。

リスパダールの有効性を、2019年にマクシミリアン・ハーンらによって行われた「メタ分析」で考えてみます。

このメタ分析は、何百という臨床試験の結果を統合して計算したものとなっています。平均して6週間程度の短期試験の結果が、計算に入れられています。

代表的な抗精神病薬のPANSS合計スコアの「効果量」は、メタ分析で下の表のように出ました。

PANSS合計効果量
クロザピン0.89ハロペリドール0.47シクレスト0.39
ソリアン0.73クロルプロマジン0.44ラツーダ0.36
オランザピン0.56セロクエル0.42カリプラジン0.34
リスパダール0.55エビリファイ0.41イロペリドン0.33
インヴェガ0.49ジプラシドン0.41レキサルティ0.26
ドグマチール0.48セルチンドール0.40

メタ分析の結果では、リスパダールの効果量は、0.55となっています。インヴェガの0.49より大きく、オランザピンの0.56よりわずかに小さいとなっています。

リスパダールの陽性症状、陰性症状、その他の症状、などに対する全般的な有効性は、オランザピンに近い位で、高いように思われます。

陽性症状への効果

次に、リスパダールの「陽性症状」への効果に絞って見ていきます。メタ分析におけるPANSS「陽性」スコアの「効果量」は、下の表のようになっています。

PANSS陽性効果量
ソリアン0.69ハロペリドール0.49ラツーダ0.33
クロザピン0.64シクレスト0.47カリプラジン0.30
リスパダール0.61ジプラシドン0.43イロペリドン0.30
クロルプロマジン0.57セロクエル0.40レキサルティ0.17
オランザピン0.53セルチンドール0.40
インヴェガ0.53エビリファイ0.38

メタ分析の結果では、リスパダールのPANSS陽性スコアの効果量は、0.61となっています。

オランザピンの0.53より大きいです。ソリアンやクロザピンに次ぐ陽性症状への効果の高さになっています。

リスパダールの陽性症状への効果は、とても高いというメタ分析の結果になっています。

陰性症状への効果

次に、リスパダールの「陰性症状」への効果に絞って見ていきます。メタ分析におけるPANSS「陰性」スコアの「効果量」は、下の表のようになっています。

PANSS陰性効果量
クロザピン0.62インヴェガ0.37ハロペリドール0.29
ソリアン0.50クロルプロマジン0.35ラツーダ0.29
オランザピン0.45エビリファイ0.33レキサルティ0.25
シクレスト0.42ジプラシドン0.33イロペリドン0.22
セルチンドール0.40カリプラジン0.32
リスパダール0.37セロクエル0.31

メタ分析の結果では、リスパダールのPANSS陰性スコアの効果量は、0.37となっています。

オランザピンの0.45よりだいぶ小さいです。シクレストの0.42よりも小さく、インヴェガの0.37と同程度になっています。

リスパダールの陰性症状への効果は、それ程高くないと思われます。

リスパダールの短期的な有効性は、総合的に見ると、オランザピンと同じ位あります。オランザピンより、陽性症状への効果は高いですが、陰性症状への効果は低いです。

リスパダールコンスタ

このセクションでは、リスパダールコンスタについて書きます。

リスパダールコンスタは、持効性注射剤(LAI)で、一回打てば2週間効果が持続します。有効成分自体はリスパダールと同じだと思います。

持効性注射剤(LAI)であれば、リスパダールコンスタよりゼプリオンの方がいいかもしれないです。ゼプリオンは、長期的な再発防止効果が特に高い、という調査結果があります。

また、ゼプリオンなら4週間に1回注射を打てば済みます。ゼプリオンTRIというのもあって、これは12週間に1回打てばいいらしいです。

リスパダールコンスタは、ある精神科医によると、リスパダールより良い薬らしいです。この2つの薬は別の薬のような印象すらあるとも言っています。

リスパダールの場合、従来の定型抗精神病薬っぽい所があって、副作用が重かったり、陰性症状への効果が弱かったりします。

リスパダールコンスタは、より非定型抗精神病薬っぽいらしいです。

リスパダールからリスパダールコンスタへ変薬すると血中プロラクチンを減少させる、という調査結果もあるそうです。

また、コンスタへの変薬で、下剤が必要でなくなったり、錐体外路症状もより少なくなったりします。体重増加もリスパダールよりは少ないと言われています。

それにコンスタは、より賦活的な薬で、陰性症状に効きやすいです。表情を明るくし、抑うつ気分への効果が高いそうです。

けれど、賦活し過ぎて情緒不安定になる人もいます。賦活が仇となって幻聴が出てしまったり、プチ躁転のような状況になり、次第に妄想が出る人がいます。

リスパダールからリスパダールコンスタに変薬したある患者によると・・・・

「頭がスッキリして調子が良い。病気になって一番良いくらい。今までは取り組めなかった事が今は可能。本が読めるようになった。」

と言っています。

また、リスパダールを減量または断薬したい人がいれば、リスパダールコンスタは、他の薬への橋渡しとして使えるらしいです。

リスパダールから一旦すべてをリスパダールコンスタに変更した後に、オランザピンなどに変薬するなども良いそうです。リスパダールから直接オランザピンに変更するより離脱症状が少なくて済むそうです。

リスパダールコンスタは、リスパダールよりも副作用が軽く、陰性症状への効果も高いです。リスパダールをやめたい場合にも使えます。

治験時の副作用データ

まとめとしてある治験時の「副作用データ」を載(の)せておきます。

リスパダールの「フェーズ3試験及び製造販売後の調査」で、2%以上の患者に発生した副作用は、次の表のようなものになっています。

副作用発生率副作用発生率
アカシジア4.95%傾眠(眠気)2.55%
不眠症4.11%流延過多2.53%
振戦3.07%不安2.38%
便秘3.07%倦怠感2.29%
易刺激性2.98%筋固縮2.01%
緑/錐体外路症状赤/賦活系副作用青/鎮静系副作用

錐体外路症状は、やや多いようです。

不眠症などの賦活系の副作用は、陽性症状がまだ残っている患者に起こりやすいです。このデータは、急性期患者に関してのデータなので、賦活系の副作用はやや多めになっています。

けれど、鎮静系の副作用もいくらかあるようです。

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