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台本
はじめに
皆さん、こんにちは。今後、開発中新薬だけでなく、発売済みの抗精神病薬についての動画も作っていきたいと思います。
次のような観点からいろいろな抗精神病薬について見ていきます。(不眠と眠気/鎮静と賦活、陽性症状、陰性症状、認知機能障害、錐体外路症状、体重増加、抗コリン作用、性機能障害)
それぞれの薬の基礎知識は他のチャンネルでたくさん話されているようなので、当チャンネルではそれらよりも詳しい話をしていけたら良いと思っています。
また、なるべく他の人が言っていない事を言うつもりです。
基本情報
とは言え、まず一応、オランザピンの基本的な事を簡単に述べておきます。
オランザピンは非定型抗精神病薬で、その中でもMARTAと呼ばれる種類の薬です。MARTAは、日本語では、多元受容体作用抗精神病薬と言います。
非定型抗精神病薬には他にSDAやDSSがあります。MARTAは名前の通りさまざまな受容体に作用する抗精神病薬です。いろいろな効果があります。
MARTAであるオランザピンも陽性症状、陰性症状、認知機能障害、不安症状、不眠、うつ症状、吐き気、衝動性、などに効果があります。
統合失調症以外にも、双極性障害の躁状態、うつ状態、抗がん剤投与時の吐き気に対する適応があります。
ジェネリックがあるので安く買えます。剤型は、錠剤、口腔内崩壊錠、細粒、筋注製剤があります。
既存薬の中では、陰性症状や認知機能障害に対して良く効くと言われています。一方、体重増加が酷いのがたまに傷になっていて、残念なところがあります。
ウロタロントとの併用
今、開発されているウロタロントという抗精神病薬をオランザピンに少量追加すると、体重増加の防止や代謝の改善ができる可能性があります。
さらに、ウロタロント少量追加で認知機能障害や陽性症状、陰性症状への効果が増強される可能性があります。また、錐体外路症状を軽減させる可能性もあります。そのような研究結果が出ています。
オランザピンとウロタロントの併用療法は、かなり期待が持てると思います。
オランザピンは傑出した薬
オランザピンは体重増加がなければ現時点で最高の薬です。
けれど、オランザピンは合う人には合いますが、合わない人には全然合わないです。通常はとても優れた薬です。
中には見違えるように奇跡的に効く人もいます。10年以上引きこもっていて何もできなかった人が、オランザピンを服用して以前の能力が復活するという事もあるそうです。
また、年単位で改善していく薬で服用期間に比例して、徐々に良くなっていくという事が見られています。結果的に最高到達点がクロザピンに並ぶ位高いとも言われています。
治療のクオリティが高く、他の薬は結局対症療法っぽく見えるのに対し、オランザピンやクロザピンは根本治療的に作用するように見えるそうです。
ある精神科医の話では、ドーパミン仮説的な対症療法でなく、グルタミン酸仮説的な根本治療になっているのではないかという事でした。
オランザピンほど、精神病の治療に質的な面で貢献した薬はなく、「傑出した薬」「スーパーな薬」などと言っている精神科医もいます。
不眠、眠気、鎮静作用
次に、オランザピンの不眠、眠気、鎮静作用について見ていきます。オランザピンは鎮静作用がかなり強いです。眠気が出やすい薬だと言われています。
ある匿名掲示板では、次のように言われていました。
- 眠い、ひたすら眠い、ヤバい
- 2.5mgから5mgになったけど、日中の傾眠がやばい
- 昼間の眠気なんとかならないのか?
- オランザピンはよく眠れるよ
- 減らしたり無くしたりすると、不眠になる率が極めて高い
臨床試験での眠気の副作用の発生率は、7.27%となっていてやや高いです。けれど、逆に不眠が出る人もいます。
不眠の副作用が5.45%発生しています。また、入眠困難、早朝覚醒、睡眠維持困難の副作用も、それぞれ10%位発生していて多いです。
- 俺は10ミリ飲んでいるが、全然眠くならんよ
と言っている人もいました。
真逆の効果が人によって出るのは、おそらくオランザピンがたくさんの受容体に結合するからだと思われます。
鎮静作用を起こす受容体にも結合するし、賦活作用(元気にさせる作用)を起こす受容体にも結合します。
その結果、個人の体質によって、鎮静作用が出やすい人は鎮静作用が出て、賦活作用(ふかつさよう)が出やすい人は賦活作用が出るという事だと思います。
昔の薬の定型抗精神病薬と違って最近の非定型抗精神病薬は、鎮静作用と賦活作用をあわせ持つ薬が多いですが、オランザピンはその傾向が顕著だと思います。
また、抗精神病薬は、一般的に少量で賦活的、多量で鎮静的に働く事が多いと言われています。ですので、オランザピンを多く飲むと眠気が出やすく、少なく飲むと元気になりやすいかもしれません。
うつ症状、陰性症状
次に、オランザピンの抗うつ効果や陰性症状への効果について見ていきます。
オランザピンは、現在使われている薬の中では陰性症状やうつ症状への効果は高いと言われています。特に、少量を使うと賦活的(ふかつてき)な面が出て、元気や意欲が出る事があります。
うつ病の人で抗うつ薬の効果が得られない人は、オランザピンの少量(1mg~2.5mg)を追加処方すると、非常に自覚症状が改善する人がいます。
難治性のうつの人は、1回は試してみるべき処方だと言われています。
実際にオランザピンを服用している人は次のように言っていました。
- 2.5mgで激うつから復活したぞ。散々試してダメだったから、希望の光だったぞ。
- 双極だから、幻聴系の症状はないけど、激うつから抜け出したのはこの薬のおかげ。飲み始めてから、目が覚めるように安定した。
- 中止していいって言われたから飲むのやめてたけど、1週間くらいで沈没船のようにうつ傾向になったから、慌てて再開した。やっぱりこの薬、ある程度のインパクトはあるよね。
抗うつ効果や陰性症状への効果にもある程度期待が持てそうです。
陽性症状
次に、オランザピンの陽性症状への効果について見ていきます。オランザピンは他の薬と比べて陽性症状に対してパワーのある薬とも言われています。
一方で、ドーパミン遮断作用はそれ程強くないので、ものすごく効き味が良いという程でもないようです。かなり重い病気のレベルでは、オランザピン20mgでも幻聴が残ってしまう人もいます。
また、オランザピンが合わない人は、賦活(ふかつ)の面が出過ぎて興奮が増し、病状が悪化してしまう人がいます。
けれど、繰り返しますが、合う人には良く合う薬で、陽性症状の改善も年単位で見られ、長期的にも高い効果があります。
また、急性期の興奮が激しい時には、オランザピンをドンと20mg多量に使えば鎮静がかかって、陽性症状に対してかなり効果的であると言われています。
少量しか使わない場合は、興奮状態を煽ってしまう事があります。
体重増加
次に、オランザピンの体重増加の副作用について見ていきます。オランザピンの1番の弱点として体重増加が多い事があります。高血糖を来たす事もあり、糖尿病には禁忌になっています。
肥満は20kg以上増える事もあります。代謝が落ちるのと、食欲が増すためです。
臨床試験では、食欲亢進が30.91%の患者に発生しました。体重増加が13.64%の患者に発生しました。多いです。
けれど、オランザピンがよく合い精神症状が良い人は体重が減少する傾向にあります。体重が激増する人はそもそもオランザピンが合っていないとも言われています。
ですが、中には体重増加があっても、精神的にかなり良い人もいます。
実際にオランザピンを服用している人は次のように言っています。
- 5mg飲んでたけど10kg太った
- 数年かけて、体重が50キロから70キロになった
- 体重が一気に増えた、食べる量は変わらないのにだ
逆に次のように言っている人もいます。
- オランザピン飲んでるけど、むしろ痩せてきてる。なんでだろう
この人は、オランザピンがよく合っているのかもしれません。
錐体外路症状、アカシジア
次に、オランザピンの錐体外路症状の副作用について見ていきます。オランザピンは、非定型抗精神病薬なので錐体外路症状は少ないです。ですが、いくらかはあります。
臨床試験での発生率は、振えが9.09%、アカシジアが8.18%、ジストニアが6.36%、運動緩慢が3.64%、歩行障害が2.73%、ジスキネジアが1.82%、となっています。
オランザピンを実際に服用した人は次のように言っています。
- オランザピン飲むと、ロレツが回らない、言葉が出てこないというか、会話ができなくて、上手く喋れない
- 副作用でソワソワ感や焦燥感がある。じっとしたり安静にしているのが辛い
- この薬飲むと喋りづらいです
- オランザピン飲むと手がふるえる
- ちきしょう10ミリでジスキネジア出たわ。舌が飛び出してくる
錐体外路症状はいくらかはあるようです。
抗コリン作用
オランザピンは、抗コリン作用がやや強いと言われています。アセチルコリン受容体を遮断する作用が強いためです。
ある臨床試験での発生率は、口内乾燥が20.91%、便秘が15.45%、口喝が12.73%、視覚障害が3.64%、動悸が1.82%、排尿困難が1.82%、でした。
実際にオランザピンを服用している人は次のように言っています。
- オランザピンは便秘になりやすかった
- 便秘がめんどくさい
- 自分も便秘で悩んでる、元々は便秘しない体質だったのに、今は下剤飲まないと出ない
便秘で困っている人が多かったです。
性機能障害
次に、オランザピンの高プロラクチン血症の副作用について見ていきます。高プロラクチン血症は、ドーパミン受容体遮断の影響で起こります。
プロラクチンに関する副作用の発生率は、性欲減退が1.82%、月経障害が4.55%、血中プロラクチン増加が3.64%になっています。
性欲亢進はプロラクチンのせいではないですが、参考に載せました。4.55%発生しました。性欲亢進は、オランザピンの賦活作用に関係しているかもしれません。
オランザピンのプロラクチンに関する副作用は、それ程多い方ではないと思います。
認知機能障害
次に、オランザピンの認知機能障害への効果について見ていきます。
認知面での改善に限れば、オランザピンよりエビリファイやレキサルティなどのドーパミン部分作動薬の方が優れていると言われています。
けれど、オランザピンも他の抗精神病薬よりかは認知機能の改善効果は高いと思われます。
実際にオランザピンを服用している人は次のように言っています。
- オランザピンを飲むと確かに記憶や計算などの能力が下がっている気がするのですが、難しい事を考えている時はオランザピンを飲んでない時より飲んでいる時のほうが脳が混乱せずに正しい思考が出来る場合もある様な気がする
- 自分の思考や考え方、まとまりのよさが上がってたなぁなんだかんだで良い薬だよ
その他言い残したこと
オランザピンは、タバコを吸う人は効果がかなり落ちると言われています。オランザピンの量をやや多くしないといけなくなります。
まとめ
オランザピンの特徴をまとめます。
- オランザピンは、鎮静作用と賦活作用の両方とも強い。個人の体質によって、眠気が出る人もいるし、不眠になる人もいる。高用量で鎮静や眠気が起こりやすい。
- 少量では賦活作用が出やすく、抗うつ薬に少量追加されて、うつが改善する事がある。
- 陽性症状へはものスゴく効くとは言えないし、かなり重度の人には効果が足りない事もある。しかし、多くの人にとっては短期的にも長期的にもかなり高い治療効果がある。
- 体重増加は高頻度で起こる。しかし、よくフィットする人では体重が減る傾向にある。
- 錐体外路症状やアカシジアは、古い薬やリスパダールよりかは少ない。いくらかはある。
- 抗コリン作用がやや強い。特に便秘に苦しんでいる人は多い。
- プロラクチンの増加が起こる事があるが、それ程多くはない。
- 認知機能障害への効果は比較的強い。
最後に
オランザピンは、体重増加が出ない人には現時点で一番良い薬だと思います。
単に陽性症状を抑えるだけでなく、表情が明るくなったり、生活を豊かにするとも言われています。他の薬より精神病を根治できるかもしれません。
ウロタロントと併用されて体重増加の欠点が解決されれば、さらに良いのではないでしょうか。ウロタロントの開発状況や最新研究についても今後発信していきます。
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