はじめに
発売済みの薬の記事を作ってもらいたい、という要望があったので今後作っていこうと思う。
レキサルティは、エビリファイを元にして作られた。
エビリファイの持っているドーパミン安定化作用を持っている。加えて、セロトニンに対する調節作用も強い。セロトニンへの作用によって、アカシジアなどの錐体外路症状が軽減されている。
だいたいの患者は、症状の激しい急性期から回復して、その後、「安定維持期」に入る。
レキサルティは、「安定維持期」にある患者の陽性症状に対しては、エビリファイより効果が高いとされている。
安定維持期における「陰性症状」や「認知機能」への効果についても良好で、オランザピンにやや劣る程度のレベルと言っている精神科医もいる。
ただ、「急性期」にはあまり向かない薬のようで、「メタ分析」では、有効性はかなり低く出ている。
この記事では、まず、メタ分析で算出された陽性症状や陰性症状への「有効性」について書く。
その後、後半でレキサルティの「ki値」を示し、それによってどのような「効果や副作用」が起きるのか考えてみる。
有効性(統合失調症、メタ分析)
レキサルティを含めて、抗精神病薬の有効性は、メタ分析という手法で算出されたりする。
メタ分析では、何百という臨床試験や治験の結果を統合して、有効性がどれくらいかなどが計算される。
メタ分析は、フェーズ2やフェーズ3などの個別の臨床試験より、エビデンスとして強いものとなっている。
この有効性の節では、2019年にマクシミリアン・ハーンらによって行われた、メタ分析の結果を見て、レキサルティの統合失調症への有効性を考えてみる。
全般的な効果
まず、2019年のメタ分析で、PANSS合計スコアの「効果量」は、次の表のように出た。
PANSS合計 | 効果量 | ||||||
クロザピン | 0.89 | ハロペリドール | 0.47 | シクレスト | 0.39 | ||
ソリアン | 0.73 | クロルプロマジン | 0.44 | ラツーダ | 0.36 | ||
オランザピン | 0.56 | セロクエル | 0.42 | カリプラジン | 0.34 | ||
リスパダール | 0.55 | エビリファイ | 0.41 | イロペリドン | 0.33 | ||
インヴェガ | 0.49 | ジプラシドン | 0.41 | レキサルティ | 0.26 | ||
ドグマチール | 0.48 | セルチンドール | 0.40 |
レキサルティのPANSS合計スコアの効果量は、0.26となっていて、最下位になっている。
なぜ、こんなに有効性が低く出たのか、後半でも補足するが、とりあえず「3つ」程原因が考えられる。
- D2受容体「部分刺激」では陽性症状を抑えるパワーが弱いため。
- 「大量処方」での鎮静作用が弱いため。
- 「短期的」な有効性を算出するメタ分析では、長期的にだけ効果の高い薬については検出できないため。
しかし、このメタ分析の結果は低すぎて、正直このまま信じていいのかわからない。レキサルティは比較的新しい薬なので、今後のエビデンスの追加でランキングが上がることもあるかもしれない。
レキサルティは、症状が重い患者に対する短期的な効果は、かなり低いというメタ分析の結果になっている。
陽性症状への効果
次に、レキサルティの「陽性症状」への効果に絞って見ていく。
メタ分析におけるPANSS陽性スコアの「効果量」は、次の表のようになっている。
PANSS陽性 | 効果量 | ||||||
ソリアン | 0.69 | ハロペリドール | 0.49 | ラツーダ | 0.33 | ||
クロザピン | 0.64 | シクレスト | 0.47 | カリプラジン | 0.30 | ||
リスパダール | 0.61 | ジプラシドン | 0.43 | イロペリドン | 0.30 | ||
クロルプロマジン | 0.57 | セロクエル | 0.40 | レキサルティ | 0.17 | ||
オランザピン | 0.53 | セルチンドール | 0.40 | ||||
インヴェガ | 0.53 | エビリファイ | 0.38 |
ここでも、レキサルティの陽性症状への効果は、効果量が0.17になっていて、最下位になっている。
レキサルティは、陽性症状への効果がかなり低い、というメタ分析の結果だった。
陰性症状への効果
次に、レキサルティの「陰性症状」への効果に絞って見ていく。
メタ分析におけるPANSS陰性スコアの「効果量」は、次の表のようになっている。
PANSS陰性 | 効果量 | ||||||
クロザピン | 0.62 | インヴェガ | 0.37 | ハロペリドール | 0.29 | ||
ソリアン | 0.50 | クロルプロマジン | 0.35 | ラツーダ | 0.29 | ||
オランザピン | 0.45 | エビリファイ | 0.33 | レキサルティ | 0.25 | ||
シクレスト | 0.42 | ジプラシドン | 0.33 | イロペリドン | 0.22 | ||
セルチンドール | 0.40 | カリプラジン | 0.32 | ||||
リスパダール | 0.37 | セロクエル | 0.31 |
レキサルティの陰性症状への有効性は、効果量が0.25となっていて、下から2番目となっている。あまり大きくない。
けれど、陽性スコアの効果量は0.17しかないにも関わらず、陰性スコアの効果量が0.25もあるのは、結構頑張っているように思われる。
陽性症状がおさまった「安定維持期」には、陰性症状への効果が高い事が、示唆されている。
レキサルティは陰性症状への効果がかなり低い、というメタ分析の結果だった。だが、陽性症状への効果ほど低くは出なかった。
まとめ
メタ分析では、レキサルティの有効性は低いと出た。だが、先程のメタ分析では、安定維持期の有効性はわからない。安定維持期の患者に対してはレキサルティの有効性は高い、と言っている精神科医もいる。その辺りの事については、後でもう少し詳しく述べる。
効果と副作用(ki値などから考える)
レキサルティのki値
このセクションでは、ki値を参考に、レキサルティの効果と副作用について考える。
脳細胞(神経細胞)には、抗精神病薬が結合する事ができる「受容体」がついている。受容体には様々な種類がある。
抗精神病薬がどの受容体に結合できるかによって、どの「効果や副作用」が出るかが決まってくる。
下の表の1番左の列に、レキサルティが主にどの受容体に結合(作用)できるか示してある。
作用 | 効果、副作用 | レキサルティのki値 |
5HT1A受容体部分刺激 | EPS改善、認知改善、抗うつ、抗不安 | 0.12 |
5HT2A受容体遮断 | EPS改善、抗うつ、睡眠改善、衝動抑制 | 0.47 |
5HT2B受容体遮断 | 抗うつ | 1.9 |
5HT2C受容体部分刺激 | 体重増加、睡眠改善、認知改善、抗うつ | 34 |
5HT6受容体遮断 | 認知改善 | 58 |
5HT7受容体遮断 | 認知改善、抗うつ | 3.7 |
α1受容体遮断 | 眠気、起立性低血圧悪化 | 3.8 |
D2受容体部分刺激 | 陽性改善、EPS悪化 | 0.3 |
D3受容体部分刺激 | 陽性改善、抗うつ | 1.1 |
H1受容体遮断 | 眠気、体重増加 | 19 |
M1受容体遮断 | 眠気、口渇、便秘 | >1000 |
表に部分刺激や遮断と書いてある。抗精神病薬は、結合した時に、受容体を刺激する刺激薬か、受容体を遮断する遮断薬に、なり得る。そのどちらかによって、反対の「効果や副作用」が起こり得る。
部分刺激の場合は、とりあえず、刺激と遮断の中間と考えてもらっていいと思う。ある程度、受容体を刺激する。
(上の表を見てみると、レキサルティは、5HT1A、5HT2C、D2、D3受容体に対しては部分刺激薬として作用し、他の受容体に対しては遮断薬として作用するとなっている。)
また、抗精神病薬の「効果や副作用」の「強さの度合い」は、受容体に「どの程度の強さ」で結合できるかで決まってくる。
受容体への結合の強さ(作用の強さ)は、「ki値」というもので表される。表の1番右の列では、レキサルティの各受容体に対する「ki値」が書いてある。もう一度表を貼っておく。
作用 | 効果、副作用 | レキサルティのki値 |
5HT1A受容体部分刺激 | EPS改善、認知改善、抗うつ、抗不安 | 0.12 |
5HT2A受容体遮断 | EPS改善、抗うつ、睡眠改善、衝動抑制 | 0.47 |
5HT2B受容体遮断 | 抗うつ | 1.9 |
5HT2C受容体部分刺激 | 体重増加、睡眠改善、認知改善、抗うつ | 34 |
5HT6受容体遮断 | 認知改善 | 58 |
5HT7受容体遮断 | 認知改善、抗うつ | 3.7 |
α1受容体遮断 | 眠気、起立性低血圧悪化 | 3.8 |
D2受容体部分刺激 | 陽性改善、EPS悪化 | 0.3 |
D3受容体部分刺激 | 陽性改善、抗うつ | 1.1 |
H1受容体遮断 | 眠気、体重増加 | 19 |
M1受容体遮断 | 眠気、口渇、便秘 | >1000 |
ki値は、数値が小さいほど、結合力が強く、効果や副作用が強い。
1未満「非常に強い作用」、1~10「強い作用」、10~100「中等度の作用」、100~1000「弱い作用」、>1000「無視できるほどのわずかな作用」、となっている。
効果や副作用は、網羅はしていない。重要そうなものを選んで載せた。「EPS」とは「錐体外路症状」の事。
ki値から考えられる効果と副作用
この項では、上の表で示した「ki値」や、「実際の現場での話」などから、レキサルティの「効果と副作用」を考えてみる。
陰性症状、抗うつ(5HT1A部分刺激、5HT2A遮断、5HT2B遮断、5HT7遮断)
まず、レキサルティの「陰性症状」への効果や「抗うつ」効果について書く。下の表で、抗うつ効果に関係するki値を示す。
作用 | レキサルティのki値 |
5HT1A受容体部分刺激 | 0.12 |
5HT2A受容体遮断 | 0.47 |
5HT2B受容体遮断 | 1.9 |
5HT2C受容体部分刺激 | 34 |
5HT7受容体遮断 | 3.7 |
D3受容体部分刺激 | 1.1 |
レキサルティの陰性症状やうつ症状への効果に1番貢献しているのは、5HT1A受容体への作用らしい。5HT1A受容体へのki値は、0.12となっていて、非常に強い作用がある。
特に、「うつ病」の人には0.25~0.5mgの少量で効果が高いらしい。「陰性症状」や「社会不安障害的症状」にも、特に少量で改善が大きい。
実際に服用した人の中には「勉強へのやる気が少し出た」人、「躁転して買い物をしまくった」人、「1か月は効いたが2ヶ月目でうつ転した」人、などがいた。
様々だったが、概(おおむ)ね、陰性症状やうつ状態によく効く薬なのではないか。
認知機能障害(5HT1A部分刺激、5HT7遮断、5HT6A遮断)
認知機能障害に関係するki値を下の表に示す。
作用 | レキサルティのki値 |
5HT1A受容体部分刺激 | 0.12 |
5HT6受容体遮断 | 58 |
5HT7受容体遮断 | 3.7 |
「認知機能」への効果も5HT1A受容体への作用から多く出てくるらしい。
「認知機能が向上して、陰性症状は全くなくなりました」という人や、「記憶力や頭が良くなったような、認知機能障害にも(効果の)実感があります」というような人もいた。
ある精神科医も、レキサルティの認知機能への効果は良い印象だ、と繰り返し言っている。
自分もレキサルティをかつて飲んだことがあるが、認知機能の面で言うと、言葉が出てきやすくなる気がした。
病院へ行ったり、役所へ行ったりする時、自分の事をいろいろ説明する必要がある。それが苦手なのだが、レキサルティを飲むと、それがややスムーズに行く気がした。口数も増える気がした。
体重増加(H1遮断、5HT2C部分刺激、D2部分刺激)
体重増加に関係するki値を下の表に示す。
作用 | レキサルティのki値 |
H1受容体遮断 | 19 |
5HT2C受容体部分刺激 | 34 |
D2受容体部分刺激 | 0.3 |
H1受容体への作用の強さはki値19で、中等度になっている。オランザピンやリスパダールよりかは、やや弱い位になっている。
5HT2C受容体への作用の強さはki値34になっている。けれど、「遮断」作用でなく「部分刺激」作用となっているので、体重増加は抑えられているかもしれない。
また、D2受容体への作用も「遮断」でなく、「部分刺激」になっているので、体重増加は抑えられていると思う。
オランザピン、リスパダール、セロクエルなどからはもちろん、「平均的な抗精神病薬」から変薬した場合、むしろ体重が減少するらしい。
ただ、「エビリファイ」から変薬した場合は、やや体重増加するケースがあるらしい。
アカシジア、錐体外路症状(D2部分刺激、5HT2A遮断、5HT1A部分刺激)
アカシジア、錐体外路症状に関係するki値を下の表に示す。
作用 | レキサルティのki値 |
D2受容体部分刺激 | 0.3 |
5HT2A受容体遮断 | 0.47 |
5HT1A受容体部分刺激 | 0.12 |
D2受容体部分刺激薬のエビリファイやレキサルティは、「アカシジア」が多い。
けれど、レキサルティは、エビリファイより5HT2A受容体や5HT1A受容体への作用が強いので、その働きによって、「アカシジア」は軽減されている。
エビリファイ服用でアカシジアが出てダメだった人は、レキサルティに挑戦してみるといいのではないかと言われている。
振えなどの「錐体外路症状」も、エビリファイよりレキサルティの方がだいぶ少ない。
不眠、眠気、鎮静(H1遮断、M1遮断、α1遮断、D2部分刺激、5HT2A遮断)
レキサルティが、不眠、眠気、鎮静に対してどのように働くか、考えてみる。
脳の睡眠回路は、GABA(ギャバ)という神経伝達物質が作動させる。覚醒回路は、ヒスタミン、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、などの神経伝達物質が作動させる。
神経伝達物質は、脳の神経細胞についている「受容体」に結合して、覚醒回路や睡眠回路を作動させる。
ヒスタミン、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンは、それぞれ順に、H1受容体、M1受容体、α1受容体、D2受容体、5HT2A受容体、に結合し、覚醒回路を作動させる。
(それぞれの神経伝達物質は、別のサブタイプの受容体へも結合するが、覚醒回路を作動させる代表的なサブタイプ受容体を挙げた。)
それらの神経伝達物質が各受容体へ結合するのを、抗精神病薬が遮断(阻害)すると、覚醒回路が遮断(阻害)される。すると、眠気や鎮静が起こる。
レキサルティが、それらの受容体を遮断(阻害)する作用はどれ位か、ki値で考えてみようと思う。下の表にそれぞれのki値を示す。
作用 | レキサルティのki値 |
H1受容体遮断 | 19 |
M1受容体遮断 | >1000 |
α1受容体遮断 | 3.8 |
5HT2A受容体遮断 | 0.47 |
D2受容体部分刺激 | 0.3 |
レキサルティのH1受容体遮断作用は、ki値が19になっていて、まあまあ強い。同様に作用の強さは、M1遮断は>1000、α1遮断は3.8、5HT2A遮断は0.47、D2部分刺激は0.3、となっている。
これらの数値からは鎮静作用は「それなりにある」のではないかと思われるかもしれない。
しかし、D2受容体への作用については、レキサルティは、D2受容体「遮断」作用でなく、D2受容体「部分刺激」作用を起こす。
レキサルティは、この作用のせいか、H1やα1や5HT2A受容体への強い作用に関わらず、エビリファイとともに鎮静作用が弱い薬になっている。
不眠が出る人の方が、眠気が出る人より多くなっている。しかし、H1遮断、α1遮断、5HT2A遮断の作用もまあまあ強いので、中には不眠が改善する人もいるようだ。
実際に服用した人の中には「1mgで睡眠時間が半減し、2mgで不眠になった」人、「睡眠時間が減ったが、日中眠くならない」人、「3週間ぐらいで不眠は治った」人などがいた。
睡眠が悪化しないで「改善する人」は、レキサルティが「よく合っている」と考えて良いらしい。
出現頻度が低いとは言え、眠気が出た人もいる。「1mg飲んで活動的だったが、2mgで眠気やしんどさを感じた」人や、「24時間とか寝てしまう」という人がいた。
レキサルティとエビリファイの鎮静作用
ところで「メタ分析では、エビリファイよりレキサルティの陽性症状への効果が低くなっている」。
この事についてTwitterで質問(疑問)があったので、それに答えるために、この2つの薬の「鎮静作用」について少し書いてみたい。
エビリファイとレキサルティは両方とも鎮静作用が弱い。そして一般的に、「エビリファイ」の方がレキサルティより鎮静作用が弱いとされている。しかし、そう単純ではないらしい。
というのも、低用量の時は「レキサルティ」の方がエビリファイより鎮静的だが、高用量の時はむしろ「エビリファイ」の方が鎮静的になるらしい。正直、なぜそのような働きになるのかわからない。
「躁状態」の患者や、「急性期」の統合失調症患者には、「レキサルティ」の上限2mgだけでは鎮静作用が足りない。だが、「エビリファイ」を24~30mg大量に上限近くまで使えば、なんとか鎮静させることが可能らしい。
特に、急性期の症状が激しい時には、強いD2遮断作用に加えて、他にも鎮静作用が必要になる。レキサルティは、「大量処方時の鎮静作用がなぜか小さい」ので、急性期には向かないのだと言われている。
先程のメタ分析は、急性期の患者に対する有効性ランキング表になっている。そのために、レキサルティの陽性症状への有効性がエビリファイより低く出たのだと思われる。
陽性症状(D2部分刺激)
「陽性症状」について繰り返すと、急性期に陽性症状を抑える効果が、エビリファイよりレキサルティの方が弱い。
それは何らかの原因で、「大量処方時の鎮静作用が小さい」事によると書いた。
実際、前半の「メタ分析」の項で書いたように、レキサルティの「陽性症状」への効果は、最下位になっている。
しかし、メタ分析は、主に急性期の患者に対する6週間程度の臨床試験の結果の統合なので、「長期的な有効性」はわからない。
レキサルティは、症状が「安定した維持期」には「陽性症状」への効果は十分発揮されるらしい。
その他
他に、よく言われる効果や、自分が服用してみて感じたことを少し書く。
よく言われるのが、体が動きやすくなるという事。家事の手伝いが増えたり、外出が増えたりする人もいるらしい。
自分も冬に体が動きにくくなるが、寒さに強くなったりして、若干、家事がしやすくなったかもしれない。
また、レキサルティを飲むと、表情が柔らぐと言われる。それは自分もあったかもしれない。顔が険しくなってしまうのが柔らいだ気がした。
治験での副作用データ
まとめとして、レキサルティの治験での副作用データを書いておく。比較としてエビリファイのデータもわかるものは書く。2%以上の患者に生じた副作用は、次の表のようになっている。
レキサルティ | エビリファイ | |
アカシジア | 5.1% | 11.7% |
頭痛 | 4.5% | 2.7% |
不眠 | 4.5% | 26.5% |
体重増加 | 3.1% | ? |
統合失調症悪化 | 3.0% | ? |
振え(錐体外路症状) | 2.8% | 10.5% |
眠気、傾眠、鎮静 | 2.0% | 3.1% |
レキサルティは、D2受容体部分刺激薬なので、「アカシジア」は他の抗精神病薬より少し多い(5.1%)。けれど、エビリファイよりはだいぶ少なく、半分以下になっている。
不眠(4.5%)の方が眠気(2.0%)より多い。急性期患者に対する鎮静作用が低いかもしれない。エビリファイの不眠が26.5%と多いのは、アカシジアが多いことも関係している。
「陽性症状が悪化」したと思われる患者が3.0%いる。D2受容体「部分刺激」では、D2受容体「遮断」ほどのパワーがない事が原因かもしれない。また、鎮静作用の低さによるかもしれない。
「錐体外路症状」の振戦(振え)も2.8%あるが、エビリファイの10.5%よりだいぶ少なく、レキサルティでは錐体外路症状が軽減されている。
「体重増加」は3.1%となっている。長期の試験(52週間)では、平均1.8kg増加という事だった。平均的な抗精神病薬と比べて「体重増加」は少ない。
オランザピン、リスパダール、セロクエルから変薬した場合、むしろ体重減少する。エビリファイからの変薬では体重増加するケースが多いらしい。
まとめ
現時点で使える薬を維持期に使う場合、レキサルティは、陰性症状、うつ症状、認知機能障害、を改善させる事について、最も有望な抗精神病薬のうちの1つになっている。
体重増加は平均的な抗精神病薬より少ない。
アカシジアはやや多いが、エビリファイよりだいぶ少ない。
不眠が出る場合と、睡眠が改善する場合がある。改善した場合、その人は、レキサルティがよく合っていると考えられる。
陽性症状への効果はかなり低いというメタ分析の結果になっている。しかし、メタ分析ではわからない長期的な効果については、十分あると言われる。
体が動きやすくなる。表情が改善する効果があるとよく言われる。
コメント
レキサルティは、かなりいい薬かもしれない。
安定維持期に使うとしたら、陰性症状や認知機能の改善については、かなり効果の高い薬と言われる。安定維持期には、オランザピンにも近い位の効き目があるとも言われる。
一方、メタ分析ではレキサルティの有効性は最下位となっている。その辺りで矛盾を感じる人もいるかもしれない。
あのメタ分析は、急性期患者に対する有効性ランキングなので、レキサルティのような安定維持期に対してだけ有効性が高い薬を発見する事ができない。
今後、抗精神病薬の長期的有効性を比較した文献、なども探していけたら良いと思う。
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