はじめに
オランザピンの記事は、2つに分割した。この記事が後半になっている。
前半の記事へのリンクはこちら。
統合失調症 発売済み薬4 オランザピン(前半) 有効性データ編(ジプレキサ、ザイディス)
この記事では、抗うつ効果や体重増加など、オランザピンの効果や副作用について書く。
前半の記事では、陽性症状、陰性症状、認知機能障害への有効性がどれ位なのかデータで示す。
効果と副作用(ki値などから考える)
オランザピンのそれぞれの受容体に対するki値
このセクションでは、ki値を参考に、オランザピンの効果と副作用について考える。
脳細胞(神経細胞)には、抗精神病薬が結合する事ができる「受容体」がついている。受容体には様々な種類がある。
抗精神病薬がどの受容体に結合できるかによって、どの「効果や副作用」が出るかが決まってくる。
下の表の1番左の列に、オランザピンが主にどの受容体に結合(作用)できるか示してある。
作用 | 効果、副作用 | オランザピンki値 |
5HT1B受容体遮断 | 抗うつ | 509 |
5HT2B受容体遮断 | 抗うつ | 12 |
5HT2A受容体遮断 | 抗うつ、睡眠改善、EPS改善、衝動抑制 | 4 |
5HT2C受容体遮断 | 抗うつ、認知改善、EPS改善、体重増加 | 11 |
5HT3受容体遮断 | 抗うつ、嘔吐軽減 | 202 |
5HT6受容体遮断 | 認知改善 | 8 |
5HT5A受容体刺激 | (不明) | 1212 |
5HT7受容体遮断 | 抗うつ、認知改善 | 105 |
α1受容体遮断 | 鎮静、起立性低血圧悪化 | 19 |
α2受容体遮断 | 抗うつ、鎮痛 | 192 |
D1受容体遮断 | (不明) | 31 |
D2受容体遮断 | 陽性改善、EPS悪化、眠気 | 11 |
D3受容体遮断 | 陽性改善、抗うつ | 49 |
D4受容体遮断 | 陽性改善、抗うつ | 27 |
D5受容体遮断 | (不明) | 82 |
H1受容体遮断 | 鎮静、体重増加 | 7 |
M1受容体遮断 | 鎮静、口渇、便秘 | 1.9 |
表に遮断や刺激と書いてある。抗精神病薬は、結合した時に、受容体を刺激する刺激薬か、受容体を遮断する遮断薬に、なり得る。そのどちらかによって、反対の「効果や副作用」が起こり得る。
(上の表を見てみると、オランザピンの場合は、5HT5A受容体以外は刺激薬としての作用はなく、大体の受容体に対しては遮断薬として作用するとなっている。)
また、抗精神病薬の「効果や副作用」の「強さの度合い」は、受容体に「どの程度の強さ」で結合できるかで決まってくる。
受容体への結合の強さ(作用の強さ)は、「ki値」というもので表される。表の1番右の列では、オランザピンの各受容体に対する「ki値」が書いてある。もう一度表を貼っておく。
作用 | 効果、副作用 | オランザピンki値 |
5HT1B受容体遮断 | 抗うつ | 509 |
5HT2B受容体遮断 | 抗うつ | 12 |
5HT2A受容体遮断 | 抗うつ、睡眠改善、EPS改善、衝動抑制 | 4 |
5HT2C受容体遮断 | 抗うつ、認知改善、EPS改善、体重増加 | 11 |
5HT3受容体遮断 | 抗うつ、嘔吐軽減 | 202 |
5HT6受容体遮断 | 認知改善 | 8 |
5HT5A受容体刺激 | (不明) | 1212 |
5HT7受容体遮断 | 抗うつ、認知改善 | 105 |
α1受容体遮断 | 鎮静、起立性低血圧悪化 | 19 |
α2受容体遮断 | 抗うつ、鎮痛 | 192 |
D1受容体遮断 | (不明) | 31 |
D2受容体遮断 | 陽性改善、EPS悪化、眠気 | 11 |
D3受容体遮断 | 陽性改善、抗うつ | 49 |
D4受容体遮断 | 陽性改善、抗うつ | 27 |
D5受容体遮断 | (不明) | 82 |
H1受容体遮断 | 鎮静、体重増加 | 7 |
M1受容体遮断 | 鎮静、口渇、便秘 | 1.9 |
ki値は、数値が小さいほど、結合力が強く、効果や副作用が強い。
1未満「非常に強い作用」、1~10「強い作用」、10~100「中等度の作用」、100~1000「弱い作用」、>1000「無視できるほどのわずかな作用」、となっている。
効果や副作用は、網羅はしていない。重要そうなものを選んで載せた。「EPS」とは「錐体外路症状」の事。
各ki値から考えられる効果と副作用
この項では、上の表で示したki値や、治験結果や実際の現場での話などから、オランザピンの効果と副作用を考えてみる。
(作用機序は、すべて解明されている訳ではなく、不明のメカニズムで効果、副作用が起こる事もある。)
不眠、眠気、鎮静(H1遮断、M1遮断、α1遮断、D2遮断、5HT2A遮断)
まず、オランザピンが、不眠、眠気、鎮静に対してどのように働くか、考えてみる。
脳の睡眠回路は、GABA(ギャバ)という神経伝達物質が作動させる。覚醒回路は、ヒスタミン、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、などの神経伝達物質が作動させる。
神経伝達物質は、脳の神経細胞についている「受容体」に結合して、覚醒回路や睡眠回路を作動させる。
ヒスタミン、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンは、それぞれ順に、H1受容体、M1受容体、α1受容体、D2受容体、5HT2A受容体、に結合し、覚醒回路を作動させる。
(それぞれの神経伝達物質は、別のサブタイプの受容体へも結合するが、覚醒回路を作動させる代表的なサブタイプ受容体を挙げた。)
それらの神経伝達物質が各受容体へ結合するのを、抗精神病薬が遮断(阻害)すると、覚醒回路が遮断(阻害)される。すると、眠気や鎮静が起こる。
オランザピンが、それらの受容体を遮断(阻害)する作用はどれ位か、ki値で考えてみようと思う。下の表にそれぞれのki値を示す。
作用機序 | オランザピンki値 |
H1受容体遮断 | 7 |
M1受容体遮断 | 1.9 |
α1受容体遮断 | 19 |
D2受容体遮断 | 11 |
5HT2A受容体遮断 | 4 |
H1、M1、α1、D2、5HT2Aの受容体の遮断(阻害)作用は、オランザピンの場合、ki値を見てみると、 H1が7、M1が1.9、α1が19、D2が11、5HT2Aが4、となっている。
これらのki値を見てみると、鎮静作用(眠気)がかなり強いと思われる。オランザピンは、一般的に眠気が出やすい薬だと言われる。
実際にオランザピンを使った人が言うところによると・・・・
- 「眠い、ひたすら眠い、ヤバい」
- 「2.5mgから5mgになったけど、日中の傾眠がやばい」
- 「昼間の眠気なんとかなら無いのか?」
- 「オランザピンはよく眠れるよ」
- 「減らしたり無くしたりすると、不眠になる率が極めて高い」
などと言っている人がいた。臨床試験での傾眠(眠気)の副作用の出現率は、 7.27%となっていて、やや高い。
しかし、逆に不眠が出る人もいる。不眠症の副作用が5.45%出現しているし、入眠困難、睡眠維持困難、早朝覚醒などの副作用も、それぞれ10%位出ていて多い。
「俺は10ミリ飲んでいるが、全然眠くならんよ」と言っている人もいた。
一般的には、統合失調症の急性増悪時にオランザピンをドンと20mg多量に使う時には、鎮静がかかり、有効性も高くなるらしい。逆に、少量しか使わない時は、興奮状態をあおってしまう時があるらしい。
うつ状態の人の場合、少量を使うと賦活的な面が出て、元気が出て、意欲も増すということがあるらしい。
要するに、少量で賦活的、多量で鎮静的というケースが多いと思われる。だが、人によって少量でも鎮静的で、多量でも賦活的という事もあるかもしれない。
逆の効果が人によって出るのは、おそらくオランザピンが、たくさんの受容体に結合する結果、鎮静的な効果と賦活(ふかつ)的な効果が、極端な程、共存してしまうからかもしれない。
強い鎮静作用に対抗するほどの、この賦活作用がどの受容体への作用に由来しているのかよく分からない。
5HT2Bや5HT2Cなどのセロトニン系の受容体への作用から来ているのかもしれない。あるいは不明のメカニズムで賦活が起こっているのかもしれない。
オランザピンは眠気が出る人、不眠になる人、両方いる。特に、少量で賦活的、多量で鎮静的に働くことが多い。
抗うつ(多数の受容体を遮断、刺激)
抗うつ効果は、オランザピンのいろいろな受容体への作用から起こり得る。抗うつ効果に関係するki値を下の表に示す。
作用 | オランザピンki値 |
5HT2B受容体遮断 | 12 |
5HT2A受容体遮断 | 4 |
5HT2C受容体遮断 | 11 |
5HT3受容体遮断 | 202 |
5HT7受容体遮断 | 105 |
α2受容体遮断 | 192 |
D3受容体遮断 | 49 |
D4受容体遮断 | 27 |
例えば、5HT2B受容体への作用はki値12となっている。同様に抗うつ効果に関する作用の強さは、5HT2Aは4、5HT2Cは11、5HT3が202、5HT7が105、α2は192、D3は49、D4は27、などとなっている。
いろいろとあるので、抗うつ効果は確かにあり、オランザピンは、うつ状態にも使われる。双極性障害のうつ状態と躁状態にも適応がある。
うつ病の人で、抗うつ薬の効果が得られない人は、オランザピンの少量(1mg~2.5mg)を追加処方すると、非常に自覚症状が改善する人がいるらしい。難治性のうつの人は、1回は試してみるべき処方だとも言われる。
双極性障害の人への気分安定化作用はいくらかはあるが、大きな双極性の波を抑えるには、 やや力不足らしい。
実際に、オランザピンを服用している人は・・・・
- 「2.5mgで激うつから復活したぞ。散々試してダメだったから、希望の光だったぞ。」
- 「双極だから、幻聴系の症状はないけど、激うつから抜け出したのはこの薬だし、中止は構えちゃうかな。飲み始めてから、目が覚めるように安定した。」
- 「中止していいって言われたから飲むのやめてたけど、1週間くらいで沈没船のようにうつ傾向になったから、慌てて再開した。(中略)やっぱりこの薬、ある程度のインパクトはあるよね。太らなかったら結構完璧な薬だと思う。」
などと言っている人がいた。
オランザピン少量でうつが治る人がいるようだ。不安が減ったり、精神が安定するという効果もある。
陽性症状(D2遮断)
陽性症状に関係するki値を下の表に示す。
作用機序 | オランザピンki値 |
D2受容体遮断 | 11 |
H1受容体遮断 | 7 |
陽性症状への効果は、一般的にD2受容体遮断作用が強いと高まると言われる。オランザピンのD2受容体への作用は、ki値が11となっている。他の薬と比べて特に作用が強いというわけではない。
しかし、オランザピンはH1遮断作用などの鎮静作用も強い。H1遮断作用などによる鎮静作用も、陽性症状の改善に貢献することがある。
特に急性期の興奮が激しい時には、D2遮断作用とともに、H1遮断作用などが持つ鎮静作用も、陽性症状を抑えるのに効果を発揮する。
オランザピンの鎮静作用は強いので、急性期の時に20mg高用量で使うと、特に陽性症状に効果的。
非定型抗精神病薬の中ではパワーのある薬物とも言われるが、一方で、やはりD2遮断作用がそれ程強くないので、ものすごく効き味が良いというほどでもないとも言われる。
かなり重い病気のレベルの人では、オランザピン20mgでも幻聴が残ってしまう人もいるらしい。
また、オランザピンが合わない人は、賦活の面が出すぎて、興奮が増し、病状が悪化してしまうことがあるらしい。
しかし、繰り返すが、合う人には陽性症状の年単位の改善が見られ、長期的にも高い効果がある。
オランザピンは、陽性症状へはものすごく効くというわけではない。結局、陽性症状への効果も人によるのかもしれないが、多くの人にとっては十分な効果がある。
体重増加(H1遮断、5HT2C遮断)
体重増加は、H1遮断作用や5HT2C遮断作用が強いと高まる。体重増加に関するki値を下の表に示す。
作用 | オランザピンki値 |
H1受容体遮断 | 7 |
5HT2C受容体遮断 | 11 |
オランザピンのH1受容体への作用はki値7、5HT2C受容体への作用は11、となっていて、他の薬と比べて強い。
なので、オランザピンの一番の弱点として、体重増加が多いことがある。高血糖を来たすことがあり、糖尿病には禁忌になっている。
高血糖は、ずっと問題がなくても、突然生じることがある。定期的に血糖検査をしなくてはいけない。
肥満は、ハンパじゃなく(20kg以上)増える事がある。代謝が落ちるのと、食欲が増すためだと言われる。
しかし、オランザピンがよくフィットする人は、体重減少する傾向にある。体重が激増する人は、オランザピンが合っていないとも言われる。けれど、体重増加があっても、精神的にはかなり良い人も中にはいる。
実際に、オランザピンを飲んでいる人は・・・・
- 「5mg飲んでたけど10kg太った」
- 「数年かけて、体重が50キロから70キロになった」
- 「体重が一気に増えた、食べる量は変わらないのにだ」
などと言っている人がいる一方で、
- 「オランザピン飲んでるけど、むしろ痩せてきてる。なんでだろう」
と言っている人もいた。
臨床試験では、食欲亢進の副作用が30.91%出現して、体重増加の副作用は、13.64%出現した。逆に、食欲減退した人は、2.73%いた。
オランザピンを服用して太る人は多いが、よくフィットする人は、体重が減少する。
ウロタロントが発売されれば、オランザピンに少量追加されることによって、体重増加の問題が解決される可能性がある。とても期待している。
錐体外路症状、アカシジア(D2遮断、5HT2A遮断)
錐体外路症状は、D2受容体遮断作用が強いと起きやすくなる。逆に、5HT2A遮断作用が強いと軽減される。それらの作用のki値を下の表に示す。
作用機序 | オランザピンki値 |
D2受容体遮断 | 11 |
5HT2A受容体遮断 | 4 |
オランザピンのD2遮断のki値は11となっていて、中等度の作用になっている。同様に、5HT2A遮断作用は4になっていて強い。
オランザピンは非定型抗精神病薬なので、5HT2A遮断作用が強く、少なくとも旧来の定型精神病薬やリスパダールよりは、錐体外路症状やアカシジアは少ないと思う。
けれど、いくらかは出現する。臨床試験では、アカシジアが8.18%出現した。振戦は9.09%、運動緩慢が3.64%、ジスキネジアが1.82%、ジストニアが6.36%、歩行障害は2.73%という出現率だった。
オランザピンを実際に服用した人は・・・・
- 「オランザピン飲むと、ロレツが回らない、言葉が出てこないというか、会話ができなくて、上手く喋れない」
- 「副作用でソワソワ感や焦燥感(中略)じっとしたり安静にしているのが辛い」
- 「この薬飲むと喋りづらいです」
- 「オランザピン飲むと手がふるえる」
- 「ちきしょう10ミリでジスキネジア出たわ。舌が飛び出してくる」
ということを言っている人がいた。
錐体外路症状が出る人もいるが、一般的に、オランザピンは錐体外路症状が少ないとされている。
抗コリン性副作用(M1遮断)
抗コリン性の副作用が関係するki値を下の表に示す。
作用機序 | オランザピンki値 |
M1受容体遮断 | 1.9 |
オランザピンは、M1受容体への作用を見ると、ki値が1.9と強いので、抗コリン性の副作用が多い。
臨床試験での出現率は、視覚障害が3.64%、動悸が1.82%、便秘が15.45%、口内乾燥が20.91%、悪心が7.27%、流延過多が5.45%、嘔吐が1.82%、排尿困難が1.82%、口渇が12.73%、となっている。
特に、便秘が多く、実際にオランザピンを服用している人は・・・・
- 「オランザピンは便秘になりやすかった」
- 「便秘がめんどくさい」
- 「自分を便秘で悩んでる、元々は便秘しない体質だったのに、今は下剤飲まないと出ない」
などと言っていて、 便秘で困っているという書き込みは、多くあった。
オランザピンは、抗コリン性副作用が多く、特に便秘で困っている人が多いようだ。
プロラクチン(D2遮断、5HT2A遮断)
プロラクチンは、D2遮断作用が強いと上昇する。逆に、5HT2A遮断作用などで上昇が抑えられる。それらの作用のki値を下の表に示す。
作用機序 | オランザピンki値 |
D2受容体遮断 | 11 |
5HT2A受容体遮断 | 4 |
D2受容体遮断作用はやや強いが、5HT2A遮断作用も強いので、ややプロラクチンの副作用が抑えられている。
プロラクチンに関する副作用の出現率は、血中プロラクチン増加が3.64%、月経障害が4.55%、性欲減退が1.82%だった。
性欲亢進した人は4.55%いたが、こちらは、他の受容体への作用が原因かもしれない。
オランザピンはプロラクチンを増加させる事があるが、それ程多くはない。
臨床試験での副作用データ
まとめとして、オランザピンの製造販売後の臨床試験での、副作用データを書いておく。オランザピンに1.82%以上出現した副作用は、以下のようになっている。
賦活系、鎮静系の副作用
副作用 | オランザピン |
激越 | 10.0% |
不安 | 9.09% |
早朝覚醒 | 9.09% |
入眠困難 | 14.55% |
睡眠維持困難 | 9.09% |
不眠症 | 5.45% |
傾眠(眠気) | 7.27% |
倦怠感 | 12.73% |
起立性低血圧 | 1.82% |
抑うつ症状 | 5.45% |
まず、賦活系や鎮静系の副作用を見てみる。
激越、不安、早朝覚醒、入眠困難、睡眠維持困難、不眠症などの賦活に関わる副作用が、5~15%位出ていて多い。
逆に、傾眠(眠気)、倦怠感、起立性低血圧、抑うつ症状、などの鎮静に関わる副作用も、2~13%位ありやや多い。
体重増加
副作用 | オランザピン |
食欲亢進 | 30.91% |
食欲減退 | 2.73% |
体重増加 | 13.64% |
高血糖 | 5.45% |
高脂血症 | 3.64% |
血中コレステ ロール増加 | 3.64% |
血中トリグリ セリド増加 | 3.64% |
高トリグリ セリド血症 | 3.64% |
次に、H1遮断、5HT2C遮断作用が関わる体重増加の副作用を見てみる。
食欲亢進は30.91%もあり、体重増加は13.64%あった。逆に、食欲減退は2.73%いた。
血液検査の値も、高血糖や高脂血症など、上がってしまうようだ。
錐体外路症状
副作用 | オランザピン |
振戦 | 9.09% |
アカシジア | 8.18% |
ジストニア | 6.36% |
運動緩慢 | 3.64% |
歩行障害 | 2.73% |
ジスキネジア | 1.82% |
D2遮断作用、5HT2A遮断作用などが関わる錐体外路症状の副作用を見てみる。
アカシジアは8.18%でやや多いかもしれない。振戦やジストニアもやや多い。
抗コリン性副作用
副作用 | オランザピン |
口内乾燥 | 20.91% |
便秘 | 15.45% |
口渇 | 12.73% |
悪心 | 7.27% |
流延過多 | 5.45% |
視覚障害 | 3.64% |
動悸 | 1.82% |
嘔吐 | 1.82% |
排尿困難 | 1.82% |
M1受容体遮断作用が関わる抗コリン性副作用を見てみる。
便秘、口内乾燥、口渇などは10%以上起こり、多いようだ。他にもいろいろある。
プロラクチン
副作用 | オランザピン |
性欲減退 | 1.82% |
(性欲亢進) | 4.55% |
月経障害 | 4.55% |
血中プロラ クチン増加 | 3.64% |
D2遮断作用、5HT2A遮断作用などが関わるプロラクチンに関する副作用を見てみる。
表の通りになっている。性欲亢進はプロラクチン増加のせいではないと思う。参考として載せた。
その他の副作用
副作用 | オランザピン |
不動性めまい | 11.82% |
頭痛 | 6.36% |
ほてり | 5.45% |
下痢 | 4.55% |
胃不快感 | 3.64% |
多汗症 | 3.64% |
白血球数減少 | 3.64% |
呼吸困難 | 2.73% |
悪寒 | 2.73% |
重感 | 2.73% |
肝機能異常 | 2.73% |
肝機能 検査異常 | 1.82% |
湿疹 | 1.82% |
背部痛 | 1.82% |
予想外の 治療反応 | 1.82% |
自殺企図 | 1.82% |
その他、1.82%以上出現した副作用は、上の表のようになっている。
まとめ
- オランザピンは、鎮静作用と賦活作用の両方とも強い。眠気が出る人もいるし、不眠になる人もいる。高用量で鎮静や眠気が起こりやすい。
- 少量では賦活作用が出やすく、抗うつ薬に少量(1mg~2.5mg)追加されて、うつが改善する事がある。抗不安作用や精神安定作用もある。
- 陽性症状へはものスゴく効くとは言えないし、かなり重度の人には効果が足りないこともある。しかし、多くの人にとっては、短期的にも長期的にもかなり高い治療効果がある。
- 体重増加は高頻度で起こる。しかし、よくフィットする人は、むしろ体重が減ることがある。
- 錐体外路症状やアカシジアは、定型抗精神病薬やリスパダールなどよりかは少ないし、一般的に少ないと言われている。
- 抗コリン性副作用はやや多く、特に便秘で苦しんでいる人はやや多い。
- プロラクチンの増加が起こることがあるが、それ程多くはない。
コメント
オランザピンはとても優れた薬。さらに、ウロタロントが発売されて併用できるようになれば、体重増加の副作用も解決される可能性がある。
そうすれば、より多くの人たちが使えるようになるので、統合失調症だけでなく、精神疾患全般の治療において一歩前進、という事にもなるのではないか。
ウロタロントとの併用療法は、個人的に期待が高いが、動物実験の段階なので、まだわからない。大した事がなかったら、ぬか喜びになってしまうので、冷静に見ていきたい。
オランザピンの前半の記事で、オランザピンの陽性症状、陰性症状、認知機能障害への有効性データについて書いた。リンクはこちら。
統合失調症 発売済み薬4 オランザピン(前半) 有効性データ編(ジプレキサ、ザイディス)
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