リスパダールの「まとめリンク集記事」があります。
リスパダール はじめに&まとめリンク集(1/11)
リスパダールのki値
これから他の記事で、リスパダールの「効果や副作用」について書く前に、少し準備をします。「ki値」について少し説明します。
脳細胞(神経細胞)には、抗精神病薬が結合する事ができる「受容体」がついています。受容体には様々な種類があります。
抗精神病薬がどの受容体に結合できるかによって、どの「効果や副作用」が出るかが決まってきます。
下の表の1番左の列に、リスパダールが主にどの受容体に結合(作用)できるか示してあります。
作用 | 効果と副作用 | リスパダールのki値 |
5HT2A受容体遮断 | EPS改善、睡眠改善、抗うつ、衝動抑制 | 0.6 |
5HT2B受容体遮断 | 抗うつ | 61.9 |
5HT2C受容体遮断 | 体重増加、睡眠改善、抗うつ、認知改善 | 26 |
5HT5A受容体遮断 | (不明) | 206 |
5HT7受容体遮断 | 抗うつ、認知改善 | 6.6 |
α1受容体遮断 | 眠気、起立性低血圧 | 2 |
D2受容体遮断 | 陽性改善、EPS悪化 | 3 |
D3受容体遮断 | 陽性改善、抗うつ | 14 |
H1受容体遮断 | 体重増加、眠気 | 155 |
M1受容体遮断 | 口喝、便秘、眠気 | >5000 |
表に遮断と書いてありますが、抗精神病薬は結合した時に、受容体を刺激する刺激薬か、受容体を遮断する遮断薬になり得ます。そのどちらかによって、反対の「効果や副作用」が起こり得ます。
(上の表を見てみると、リスパダールの場合は、各受容体に対する刺激薬としての作用はなく、もっぱら、遮断薬として作用する、となっています。)
また、抗精神病薬の「効果や副作用」の「強さの度合い」は、受容体に「どの程度の強さ」で結合できるかで決まってきます。
受容体への結合の強さ(作用の強さ)は、「ki値」というもので表されます。表の1番右の列では、リスパダールの各受容体に対する「ki値」が書いてあります。もう一度表を貼っておきます。
作用 | 効果と副作用 | リスパダールのki値 |
5HT2A受容体遮断 | EPS改善、睡眠改善、抗うつ、衝動抑制 | 0.6 |
5HT2B受容体遮断 | 抗うつ | 61.9 |
5HT2C受容体遮断 | 体重増加、睡眠改善、抗うつ、認知改善 | 26 |
5HT5A受容体遮断 | (不明) | 206 |
5HT7受容体遮断 | 抗うつ、認知改善 | 6.6 |
α1受容体遮断 | 眠気、起立性低血圧 | 2 |
D2受容体遮断 | 陽性改善、EPS悪化 | 3 |
D3受容体遮断 | 陽性改善、抗うつ | 14 |
H1受容体遮断 | 体重増加、眠気 | 155 |
M1受容体遮断 | 口喝、便秘、眠気 | >5000 |
ki値は、数値が小さい程、結合力が強くなり、「効果や副作用」の度合いが強いです。
1未満「非常に強い作用」、1~10「強い作用」、10~100「中等度の作用」、100~1000「弱い作用」、>1000「無視できるほどのわずかな作用」、となっています。
表に書いてある「効果や副作用」は、網羅はしていないです。重要そうなものを選んで載せました。「EPS」とは「錐体外路症状」の事です。
以後のリスパダールの記事では、各受容体に対するki値を参考に、リスパダールの「効果と副作用」について考えてみます。
治験時の副作用データ
最後に付け足しとして、「副作用データ」を載(の)せておきます。
リスパダールの「フェーズ3試験及び製造販売後の調査」で、2%以上の患者に発生した副作用は、次の表のようなものになっています。
副作用 | 発生率 | 副作用 | 発生率 | |
アカシジア | 4.95% | 傾眠(眠気) | 2.55% | |
不眠症 | 4.11% | 流延過多 | 2.53% | |
振戦 | 3.07% | 不安 | 2.38% | |
便秘 | 3.07% | 倦怠感 | 2.29% | |
易刺激性 | 2.98% | 筋固縮 | 2.01% |
錐体外路症状は、やや多いようです。
不眠症などの賦活系の副作用は、陽性症状がまだ残っている患者に起こりやすいです。このデータは、急性期患者に関してのデータなので、賦活系の副作用はやや多めになっています。
けれど、鎮静系の副作用もいくらかあるようです。
(以後の記事でも必要に応じて、この副作用データについて言及します。)
最後に
次の記事へのリンクはこちらです。
リスパダールの「不眠、眠気、鎮静作用」について (3/11)
リスパダールの「まとめリンク集記事」があります。
リスパダール はじめに&まとめリンク集(1/11)
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