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台本
はじめに
皆さん、こんにちは。今回は、今後何年かで発売される可能性のある抗精神病薬のうち、ウロタロントという薬についてお伝えします。
ウロタロントも、今一般的によく使われている非定型抗精神病薬と作用メカニズムが大きく異なります。革新的な薬です。
ウロタロントは、非定型抗精神病薬とは異なっていて、ドーパミンを抑制するドーパミン遮断薬ではないです。TAAR1作動薬と呼ばれます。独特な薬で、陽性症状を抑える以外にもいろいろな効果があります。この動画で説明していきます。
非定型抗精神病薬には、次のような問題がありました。
- 陰性症状への効果が十分でない
- 認知機能障害への効果が十分でない
- 体重増加がある
- 錐体外路症状がある
- 20~30%の患者については、十分に陽性症状を抑えられない
ムスカリン作動薬と同様、ウロタロントもこれらの問題点を解決したり、軽減できる可能性があります。1つ1つ見ていきたいと思います。
陰性症状への効果
ウロタロントは、陰性症状への効果は、特に期待できます。長期投与試験では、PANSSやMADRS、BNSSなどの尺度で、強固な改善効果が見られています。
ウロタロントの副作用の発生率を見てみると、飲み始めは「眠気」が出る人の方が多いです。けれど、長期的には、眠気より「不眠」が出る人の方が多いです。
ですので、ウロタロントは、鎮静的に作用するより賦活的に作用する人の方が多いかもしれません。要するに元気が出やすいと思います。
ウロタロントには、セロトニン5HT1A受容体を刺激する作用もあります。この作用が賦活的な作用を高めているかもしれません。
ウロタロントは元気が出やすいので、大うつ病への適応も目指されています。うつ病に効果があるとなれば、陰性症状への効果にも期待が持てそうです。
認知機能障害への効果
ウロタロントの認知機能障害への効果についてはあまり情報がありません。サルを使った実験で、認知機能を改善する効果が見られたという事はわかっています。
ウロタロントは、ドーパミンを直接に遮断する薬ではないので、既存薬のように頭を鈍らせる作用は軽減されているかもしれません。
体重増加の防止
ウロタロントは、食欲抑制効果や代謝改善効果があります。「体重減少」が副作用として出る人もいます。
ウロタロントを半年間投与された患者は、平均して0.3kg体重が減少しています。
ウロタロントは、既存薬に少量追加されただけでも体重増加を防げる可能性があります。動物実験でそのような効果が見られています。
錐体外路症状の軽減
ウロタロントのフェーズ2試験では、錐体外路症状は「3.3%」の患者に発生しました。プラセボ薬でも3.2%発生しているので、プラセボと同等になっています。
その「3.3%」もウロタロントが原因で発生したかはわかりません。錐体外路症状はほとんどないと言ってもいいかもしれません。
ウロタロントはむしろ、錐体外路症状を軽減させる可能性があります。動物実験では、既存薬にウロタロントが少量追加された時、錐体外路症状を軽減させる効果が見られています。
陽性症状への効果
ウロタロントは、既存薬に追加投与されて、有効性を増強させる可能性があります。動物実験でそのような効果が見られています。
治療抵抗性の患者や、既存薬だけでは効果が不十分な患者に効くかもしれません。
長期的な有効性
また、ウロタロントは、半年程度の長期的な有効性が高いです。約半年の投与で、患者のPANSSスコアを平均して101点から59点まで改善させています。
PANSSのスコアは、30~58点で正常、58~75点で軽度、75~95点で中等度、95~116点で重度、116~210点で最重度、の症状とされています。
つまり、ウロタロントの半年間の投与で、平均して「重度」の症状からもう少しで「正常」の症状まで改善させています。かなり改善させています。
軽度以下の状態が6カ月以上持続すれば、症状的には寛解であると言われています。ウロタロントを1年間投与すれば、大部分の患者は、症状的な寛解に達するかもしれません。
その他のさまざまな効果
ウロタロントは動物実験で、抗うつ効果、抗社会不安障害的効果、薬物依存を治す効果、日中の覚醒を促進する効果、ADHD改善効果、などが見られています。
ウロタロントは、統合失調症以外にも幅広い症状に使われる薬になるかもしれません。
開発状況
大塚製薬の投資家向けの資料によると、ウロタロントは「第4次中期経営計画中に米国での上市を目指す」となっています。
第4次中期経営計画は、2028年までの計画なので、2028年までの米国発売が目標という事だと思います。
ですので、日本での発売は希望的に見て2030年と予想します。日本では2025年2月中に追加のフェーズ3試験が開始される予定です。
この追加のフェーズ3試験が成功して発売に至る事を期待したいです。
ところで、ウロタロントは全般性不安障害への適応に向けてのフェーズ2/3試験が2026年の2月に終わる予定です。日本と米国での試験です。
もしかしたらウロタロントは、統合失調症より先に全般性不安障害の治療薬として発売される事もあるかもしれません。今後そのあたりの情報も注目していきたいです。
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