動画
YouTubeの方もチャンネル登録お願いします。
台本
はじめに
皆さん、こんにちは。今回は、エビリファイについて、当チャンネルの視点から詳しく見ていきたいと思います。エビリファイについて、次のような観点から考えてみたいと思います。
眠気と不眠(鎮静と賦活)、陽性症状(抗精神病薬作用)、陰性症状(うつ症状)、従来薬より良い点、ドーパミン部分作動薬、錐体外路症状(アカシジア)、体重増加、消化器系の副作用、性機能障害。
ドーパミン部分作動薬
まず、エビリファイがどのような種類の薬か見ていきます。エビリファイは、非定型抗精神病薬です。その中で、DSS(ドーパミン部分作動薬)という種類の薬です。
| 非定型抗精神病薬 | 定型抗精神病薬 | ||
| MARTA | DSS | SDA | DA |
| 多元受容体作用 抗精神病薬 | ドーパミン 部分作動薬 | セロトニン・ ドーパミン遮断薬 | ドーパミン遮断薬 |
| オランザピン | エビリファイ | リスパダール | ハロペリドール |
| シクレスト | レキサルティ | インヴェガ | クロルプロマジン |
| セロクエル | ロナセン | ドグマチール | |
| クロザピン | ルーラン | ヒルナミン | |
| ラツーダ | フルメジン など |
非定型抗精神病薬には他に、MARTA(多元受容体作用抗精神病薬)やSDA(セロトニン・ドーパミン遮断薬)があります。
DSS(ドーパミン部分作動薬)には、エビリファイの他に、レキサルティがあります。レキサルティは、エビリファイを改良した薬で、陽性症状へより効果が高かったり、アカシジアが軽減されたりしています。
けれど、レキサルティよりエビリファイの方がよく合う患者もいます。結果的に、エビリファイを使っている患者は意外に多いようです。
従来薬より良い点
DSS(ドーパミン部分作動薬)は、従来の定型抗精神病薬のようなドーパミン遮断薬ではありません。
| 非定型抗精神病薬 | 定型抗精神病薬 | ||
| MARTA | DSS | SDA | DA |
| 多元受容体作用 抗精神病薬 | ドーパミン 部分作動薬 | セロトニン・ ドーパミン遮断薬 | ドーパミン遮断薬 |
| オランザピン | エビリファイ | リスパダール | ハロペリドール |
| シクレスト | レキサルティ | インヴェガ | クロルプロマジン |
| セロクエル | ロナセン | ドグマチール | |
| クロザピン | ルーラン | ヒルナミン | |
| ラツーダ | フルメジン など |
脳内のドーパミンを強く遮断する薬でなく、ドーパミン系の活動を適度に調節する薬です。
そのため、ドーパミン遮断に由来する副作用が軽減されています。例えば、錐体外路症状や高プロラクチン血症などが軽減されています。
また、エビリファイなどのドーパミン部分作動薬は、そのドーパミンへの働き方によって、賦活作用(元気にさせる作用)があります。うつ病への適応もあります。特に少量でうつへの効果があります。
また、非定型抗精神病薬には体重増加の副作用がある薬が多いですが、エビリファイは、体重増加がかなり少ない薬です。

エビリファイは、従来薬より錐体外路症状が軽減されています。賦活作用もあります。体重増加の副作用も少ないです。
眠気と不眠 (鎮静作用と賦活作用)
エビリファイは、基本的に鎮静作用が少なく、賦活的な薬だと言われています。
某匿名掲示板を見てみると、眠気が出たと言っている人もいましたが、不眠が出たと言っている人の方がだいぶ多かったように思いました。やはり、賦活的な薬なようです。
実際にエビリファイを使った人は、次のように言っています。
- エビリファイに変薬して1ヶ月。毎日4時間ぐらいしか寝れない。それも浅い睡眠。
- 睡眠時間が極端に短くなった
- 昼寝もできないくらい神経が高ぶっている。
- やっぱりこれって眠れなくなる人多いんだね
- 昨日からエビリファイ12ミリ。めっちゃ眠ってしまう
- 3mgでもだめだ、めちゃくちゃに眠い
- 飲み始めは一週間は泥のように眠いよ。気付いたらすぅーっと体動くようになってる
繰り返しますが、数的には、不眠になったと言っている人の方がかなり多かったです。ある治験では、賦活系の副作用と鎮静系の副作用の発生率は、この表のようになっています。
| 賦活系の副作用 | 発生率 | 鎮静系の副作用 | 発生率 |
| 不眠症 | 27.04% | けんたい感 | 4.04% |
| 不安 | 8.61% | 眠気 | 3.10% |
| 激越 | 7.81% | うつ病 | 2.29% |
| 易刺激性 | 3.50% | 抑うつ気分 | 0.27% |
| 落ち着きのなさ | 0.81% |
不眠が27.04%で、眠気が3.10%なので、やはり賦活することが多いようです。他の薬の不眠と眠気の発生率はこの表のようになっています。
| エビリファイ | ロナセン | オランザピン | リスパダール | レキサルティ | ラツーダ | |
| 不眠 | 27.04% | 22.1% | 20.86% | 12.03% | 4.3% | 3.3% |
| 眠気 | 3.10% | 11.8% | 16.72% | 8.99% | 2.0% | 3.2% |
レキサルティやラツーダの不眠は少なく、リスパダールは中間くらいで、オランザピンとロナセンは不眠がかなり多くなっています。一番多いのはエビリファイです。
オランザピンやロナセン、リスパダールは、眠気の副作用の方も結構多く出ていますが、エビリファイは、眠気が3.10%とだいぶ少なくなっています。エビリファイはかなりの程度、賦活的な薬かもしれません。
とは言え、エビリファイは、少量では賦活的な薬なのですが、高用量ではいくらか鎮静作用はあります。高用量ではレキサルティより鎮静作用が強いです。そのため、エビリファイにはそう状態への適応がありますが、レキサルティにはないです。
双極症のそう状態の時には、エビリファイ24mg以上の高用量を使うことが推奨されています。一方、レキサルティの最高量2mgを使っても、エビリファイ24mg程度の鎮静作用は得られないそうです。
他の抗精神病薬も、基本的に少量で賦活、多量で鎮静という働き方はしますが、エビリファイは、用量による差が大きめかもしれません。
ですが、やはり不眠の多さと眠気の少なさを見てみると、高用量でもごく強い程度の鎮静作用は、なかなか得づらいのではないのでしょうか。

エビリファイの賦活作用は、強いと言われています。特に、少量での賦活作用が強いです。反対に、高用量での鎮静作用は割とあります。
陽性症状(抗精神病作用)
エビリファイを統合失調症に使う場合も、24mg以上の高用量から始めた方がいいと言われています。鎮静作用を増すためです。低用量だと、興奮を煽って症状が悪化する恐れがあります。
ですがそもそも、エビリファイの陽性症状を治す作用(抗精神病作用)も、それほど高いわけではありません。オランザピンやリスパダールなどと比べると弱いです。
最近のある論文では、エビリファイは、ラツーダやレキサルティと同様に、急性期でなく安定維持期に使われるべきだと言われています。
エビリファイを含むこれらの薬は、急性期に使われるような強い薬ではないです。けれど、症状の収まった安定維持期の陽性症状に対する効果は十分あります。
また、これらの薬は、陰性症状への悪影響の少なさや、副作用の軽さが期待できます。
実際にエビリファイを使った人は、陽性症状への効果について次のように言っています。
- 統失でエビリファイ24mg半年、集団ストーカー妄想や幻聴も消えない
- これだめだわ、過敏になって幻聴がひどい
- 半年以上飲んでて全く効果なし。
- 3ミリ飲んでるけど、最近人の話し声が悪意持って聞こえることが減ってきた。落ち着いて自分のことに集中できる。
- 飲み始めて2週間。自己批判の幻聴が、少しずつなくなってきた気がする。
もちろん、効いた人と効かなかった人、両方いました。

エビリファイは、陽性症状への効果は弱めです。急性期より安定維持期に使われるべきと言われています。個人的には、安定維持期の場合、レキサルティの方が効く気がしますし、そう言っている精神科医もいます。
陰性症状(抗うつ効果)
エビリファイは、特に少量で陰性症状への効果が期待できると思います。うつ病への適応があり、うつへは1.5~6mg使うと良いそうです。激うつが良くなる人もいます。
うつに効けば、陰性症状のある面が良くなると期待できます。表情が良くなったり、風呂に入れるようになる人もいます。特に、エビリファイの使い始めに極端に効果が出る人がいます。
けれど残念ながら、最初は快活でも、次第に普通になっていき、結局うつ気味に戻るということがよく見られます。エネルギーを喪失した無気力状態に戻る人がいます。
エビリファイの抗うつ効果は、ドーパミン的なものであると言われます。急激に効果が現れますが、やがて効かなくなっていきます。
レキサルティの場合、抗うつ効果は、よりセロトニン的であると言われます。急激な効果はないものの、効果が持続しやすいです。
ドーパミン的な抗うつ効果でも持続する人が、中にはいるのかもしれません。そのあたりは正直よくわからないです。
実際にエビリファイを使った人は次のように言っています。
- このお薬、朝飲むと凄く意欲が湧きますね。会社に行くのが辛くならなくなりました。因みに3mg服用しています。
- 意欲が湧くのはいいんだけど寝れねー
- うつで3mg飲んでる、気分が上がったような気がするのでわりと好き
- エビ3mg飲んでるけどやる気でない
- エビリファイのやる気効果って減弱してこない?慣れてしまったのかな
- エビリファイ飲み始めて気分よくなったけど、最近また憂うつが続いてる
やはり効かなくなった人は複数いました。

エビリファイは、特に少量でうつや陰性症状に効きます。効果が持続する人が、どれくらいいるのかは不明です。
体重増加
エビリファイは、ロナセンやラツーダなどと同じく太りにくい薬です。食欲が落ちる場合もあります。
非定型抗精神病薬の中では、体重増加はかなり少ないです。リスパダールやオランザピンからの変薬では、体重が減ると思います。
エビリファイ服用で、中には太る人もいるかもしれません。総合的には、体重には中立かやや減少する薬だそうです。変化がないことも多いです。
実際にエビリファイを使った人は、体重に関して次のように言っていました。
- 体重は確かに増えない。むしろ全然食欲がない。
- 頑張れば痩せられる薬ではあるよ。
- リスパダール12mgからエビリファイ30mgになりました。二週間で7キロ痩せました!
- 24mg飲んでるよ。体重8キロ増えてた
- 飲みはじめて1ヶ月で3kgぐらい増えた
- 太りにくいって話だけど、どこがって感じですね…
ある治験では、体重や食欲に関する副作用の発生率は、この表のようになっています。
| 食欲亢進 | 0.00% | 食欲減退 | 6.19% |
| 体重増加 | 2.96% | 体重減少 | 9.15% |
治験のデータを見てみると、体重や食欲が減る人の方が多そうです。

エビリファイは、体重増加は少ないと言われています。けれど、個人差があるでしょうし、どの薬からの変薬かにもよります。一般的には、体重に変化がないか、やや減少するくらいだと言われています。
錐体外路症状、アカシジア
エビリファイは、ドーパミン部分作動薬なので、従来のドーパミン遮断薬より錐体外路症状は少ないはずです。錐体外路症状は、ドーパミン遮断が強いほど起こるので、理論的には少ないはずです。けれど実際には、期待されるほど少なくないです。
実際にエビリファイを使った人は、錐体外路症状について次のように言っています。
- 手の震えが止まらず買い物の時とか恥ずかしい。
- 副作用で顎ががくがくいう。
- 顎ががくがくが治らない、アキネトンを飲んだ。
- エビリファイ12mgでアカシジアがでた。
- 9mgしか飲んでないのに激しいアカシジア出た
特にアカシジアの人が多かったように思います。
ある治験では、エビリファイの錐体外路症状の発生率は、この表のようになっています。
| エビリファイ | レキサルティ | エビリファイ | レキサルティ | ||
| アカシジア | 11.71% | 5.1% | ジストニア | 2.02% | 0.3% |
| 振戦(振え) | 10.50% | 2.8% | ジスキネジア | 2.02% | 0.6% |
| 筋固縮 | 6.59% | 0.4% | 構音障害 | 0.40% | 0.0% |
| 流涎過多 | 4.44% | 0.5% | 構語障害 | 0.27% | 不明 |
| 運動緩慢 | 3.10% | 0.3% | パーキンソニズム | 0.13% | 0.5% |
| 歩行障害 | 2.83% | 0.2% | 筋骨格硬直 | 0.13% | 0.5% |
アカシジアや振戦(振え)は10%ぐらい出ていて、それほど少なくないです。他の薬のアカシジアと振戦の発生率は、この表のようになっています。
| ロナセン | リスパダール | オランザピン | エビリファイ | ラツーダ | レキサルティ | |
| アカシジア | 24.1% | 17.43% | 11.90% | 11.71% | 7.1% | 5.1% |
| 振戦(振え) | 21.9% | 13.14% | 11.38% | 10.50% | 2.0% | 2.8% |
エビリファイは、ロナセンやリスパダールよりは少なくなっていますが、オランザピンと同じくらいあります。ラツーダやレキサルティよりも多いです。

エビリファイの錐体外路症状は、従来の古い薬よりは少ないです。けれど、最近の薬としては、並程度あると思います。アカシジアが出る人は結構いるかもしれません。
性機能障害
エビリファイを実際に使った人は、性機能障害について次のように言っています。
- 6mgから12mgにしたら、生理が何度もくるようになった。月経不順に悩まされてる
- 自分も生理21日周期とかでバンバン来るようになった
- 私はロナセン飲んてで生理が止まったからエビリファイに変えたんだけど、エビリファイにしたら問題ないよ
- これ飲んだらEDになる
- 射精障害なのか、精子が出ない
- 精力は落ちない。
- 飲むとギンギンになる
性機能に関して、正反対の意見がありました。ある治験でエビリファイの性機能障害の発生率は、この表のようになっています。
| 性欲亢進 | 0.54% | 性器出血 | 0.34% |
| 月経障害 | 0.34% | 持続勃起症 | 0.22% |
| 無月経 | 0.34% | 血中プロラクチン増加 | 0.00% |
| 月経困難症 | 0.34% | 血中プロラクチン減少 | 0.00% |
女性の月経に関する副作用は、合わせて1%ぐらいです。他の薬では、リスパダールが7%ぐらい、ロナセンとオランザピンが2~3%ぐらい、レキサルティとラツーダは0.1%~0.2%ぐらいです。
ですので、エビリファイは、月経の副作用は比較的少ないと思います。

エビリファイの性機能障害の副作用は少なめです。
消化器系の副作用
エビリファイの消化器系の副作用は、最近の薬の中では並程度だと思います。実際にエビリファイを使った人は、消化器系の副作用について、次のように言っています。
- 吐き気や胸焼けする
- エビ増えたんだが吐きそうになってる
- 3~4日頑張って飲んだけど、吐き気と胃痛で動けなくなり服薬を諦めた
- 吐き気は一週間我慢したら収まって気分上がってきたよ。
- うつで飲み始めてやっと吐気しなくなった
吐き気、つまり悪心があった人が目立ちました。けれど、一時的である場合も多いようです。
ある治験では、エビリファイの消化器系の副作用発生率は、この表のようになっています。
| 便秘 | 4.71% | 下痢 | 0.54% |
| 口喝 | 4.04% | 胃炎 | 0.27% |
| 悪心 | 3.63% | 消化不良 | 0.13% |
| 腹部不快感 | 3.10% | 上腹部痛 | 0.13% |
| 嘔吐 | 2.29% |
便秘、口渇、悪心、嘔吐などが多くありました。他の薬の便秘、悪心、嘔吐の発生率は、この表のようになっています。
| ロナセン | リスパダール | オランザピン | エビリファイ | ラツーダ | レキサルティ | |
| 便秘 | 10.1% | 8.02% | 7.41% | 4.71% | 2.5% | 1.8% |
| 悪心 | 6.3% | 5.53% | 2.93% | 3.63% | 3.8% | 1.8% |
| 嘔吐 | 4.0% | 5.53% | 2.07% | 2.29% | 2.3% | 0.8% |
ロナセンが一番多く、順にリスパダール、オランザピン、エビリファイ、ラツーダ、レキサルティとなっています。エビリファイは、並程度の発生率だと思います。

エビリファイの消化器系の副作用は、並程度です。
全体のまとめ
エビリファイの効果と副作用のまとめをします。
- エビリファイは、かなり賦活的な薬。少量で賦活、多量で鎮静。高用量での鎮静作用は、ある程度ある。
- 陽性症状への効果は弱め。安定維持期に使った方が良いと言われている。
- 陰性症状への効果はあるが、強い効果は持続しにくい。
- 体重増加は少ない。
- 錐体外路症状は古い薬よりは少ないが、最近の薬としては並程度ある。アカシジアは結構ある。
- 性機能障害は少なめ。
- 消化器系の副作用は並程度ある。
このように見てみると、効果や副作用の面で、レキサルティの方がいいようにも思います。ですが、エビリファイを服用している人は意外に多いので、レキサルティよりいい面もあるのかもしれません。
エビリファイやレキサルティは、ドーパミン部分作動薬です。今開発されているドーパミン部分作動薬に、ブリラロキサジンという薬があります。
ブリラロキサジンは、エビリファイやレキサルティの進化版の薬です。体重増加もより少なく、アカシジアもほとんどなく、陽性症状への効果も高いです。2030年前後に日本でも発売されると思います。