はじめに
コンサータとストラテラの「減断薬法」や「妊娠に対する影響」についてまとめて欲しい、という要望がありました。できるだけの事を報告します。
ついでに、同じADHD治療薬であるビバンセとインチュニブについての情報も追加します。
この記事では、ADHD治療薬の「妊娠」に対する影響について書きます。「妊活、妊娠、妊婦、胎児、母乳」に対する影響をまとめて欲しいとの事でした。
最初に言っておきますが、一般的に精神科の薬は、妊娠に対して大きな影響はないとも考えられています。
ADHD治療薬もインチュニブ以外は、過度に心配しなくて大丈夫だと思います。
妊娠、妊婦、胎児、母乳、への影響
妊娠、妊婦、胎児、については、あまり分けて書かれていないので、妊婦としてまとめて書きます。加えて、このセクションで母乳についても書きます。添付文書に書かれている事をまとめるだけです。
コンサータ
まず、コンサータについて書きます。添付文書には、妊婦について次のように書かれています。
「妊婦または妊娠している可能性のある女性には、投与しない事が望ましい。」
その理由は、次のようなものです。
「動物実験(ウサギ)において、最大推奨量の約100倍に相当する量の投与により、催奇形性が報告されている。」
母乳については、次のように書かれています。
「授乳しない事が望ましい。」
その理由は、次のようなものです。
「ヒトで、メチルフェニデートが、乳汁中に移行するとの報告がある。」
ですので、まとめると次のようになります。
妊婦 | 母乳 | ||
対処 | コンサータは投与しない事が望ましい。 | コンサータ服用中は、授乳しない事が望ましい。 | |
理由 | 催奇形作用がある可能性がある。 | コンサータが、母乳中に移行する可能性がある。 |
コンサータは、胎児や母乳への悪影響が懸念されているようです。はっきり投与しない方がいいと言われています。それにも関わらず、「妊娠中でも必要な時は使用する」と言っている医師もいます。
ストラテラ
次に、ストラテラについて書きます。添付文書には、妊婦について次のように書かれています。
「妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」
その理由は、次のようなものです。
「動物実験(ラット)において胎盤通過性が認められている。」
母乳については、次のように書かれています。
「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること。」
その理由は、次のようなものです。
「動物実験(ラット)において乳汁中への移行が認められている。」
まとめるとこうなります。
妊婦 | 母乳 | ||
対処 | 治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与。 | 治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳するかしないか検討する。 | |
理由 | 胎児までストラテラが到達してしまう可能性がある。 | ストラテラが母乳中に移行する可能性がある。 |
ストラテラの胎児への影響は、コンサータやインチュニブよりかは心配が少ないようです。妊婦がストラテラを服薬するかしないかは、本人と医師の判断次第です。
ストラテラの母乳への影響は、コンサータやビバンセのように悪影響が確定しているわけではないです。動物実験で悪影響が見つかっただけで、ヒトでは見つかっていません。授乳するかしないかは、本人と医師の判断次第です。
ビバンセ
次に、ビバンセについて書きます。添付文書には、妊婦について次のように書かれています。
「妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」
その理由は、次のようなものです。
「出生前または出生後早期に、ビバンセの活性体であるアンフェタミンの臨床用量相当量を曝露(ばくろ)したげっ歯類において、出生児に学習障害、記憶障害もしくは自発運動量の変化等の長期の神経行動学変化、発育遅延または生殖能への影響が認められている。」
母乳については、次のように書かれています。
「授乳しない事が望ましい。」
その理由は、次のようなものです。
「ヒト母乳中へ移行することが報告されている。」
まとめるとこうなります。
妊婦 | 母乳 | ||
対処 | 治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与。 | ビバンセ服用中は、授乳しない事が望ましい。 | |
理由 | 出生児に、学習障害、記憶障害、発育遅延、生殖能への悪影響、などが起きる可能性がある。 | ビバンセが母乳中へ移行するということが報告されている。 |
ビバンセは、胎児への影響は、やっかいなものがありそうです。けれど、コンサータやインチュニブのようにはっきりと妊婦へ投与しない方がいいと言われているわけではないです。妊婦がビバンセを服薬するかしないかは、本人と医師の判断次第です。
授乳については、はっきり投与しない方がいいと書かれています。
インチュニブ
次に、インチュニブについて書きます。インチュニブは妊婦への使用は、禁忌(きんき)です。投与できません。添付文書には、妊婦について次のように書かれています。
「妊婦または妊娠をしている可能性がある女性には投与しないこと。」
その理由は、次のようなものです。
「動物実験(マウス)において、大量投与により催奇形作用(外脳症、脊椎破裂症)が報告されている。」
母乳については、次のように書かれています。
「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること。」
その理由は、次のようなものです。
「動物実験(ラット)において乳汁中への移行が認められている。」
まとめるとこうなります。
妊婦 | 母乳 | ||
対処 | 禁忌。インチュニブを投与しないこと。 | 治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳するかしないか検討する。 | |
理由 | 催奇形作用がある可能性がある。 | インチュニブが母乳中に移行する可能性がある。 |
インチュニブは、妊婦に対しては禁忌で使えないです。
インチュニブの母乳への影響は、コンサータやビバンセのように悪影響が確定しているわけではないです。動物実験で悪影響が見つかっただけで、ヒトでは見つかっていません。授乳するかしないかは、本人と医師の判断次第です。
まとめ
まとめの代わりに危険性の順位を書いておきます。
「妊婦へ危険性が高い順」
インチュニブ>コンサータ>ビバンセ=ストラテラ
「母乳へ危険性が高い順」
コンサータ=ビバンセ>インチュニブ=ストラテラ
妊活への影響
最後に、ADHD治療薬の妊活への影響について書きます。
上に書いたように、コンサータは、「妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しない事が望ましい。」となっています。
インチュニブは、「妊婦または妊娠している可能性がある女性には投与しないこと。」となっています。
ストラテラとビバンセについては、「妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」となっています。
ADHD治療薬は、「妊娠している可能性」のある場合にも、注意が必要であると言われています。
妊娠している可能性がある女性 | |
コンサータ | 投与しない事が望ましい。 |
インチュニブ | 投与しないこと。(禁忌) |
ストラテラ | 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。 |
ビバンセ | 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。 |
どういう妊活の計画が立てられるのかはわかりませんが、妊娠しづらいタイミングであっても、性交渉がある場合、妊娠の確率は0%ではないと思います。
ですので、妊活中はだいたいの時に「妊娠している可能性」はあるのではないでしょうか。妊活中は、ADHD治療薬を休止するという選択もあるかもしれません。
患者自身の病状にもよると思いますので、妊活中にADHD治療薬を投与するかしないかは、医師と相談して決めることになると思います。
もし、ADHD治療薬をやめる場合、「婚活を開始したタイミングでをやめればいい」という医師の意見と、「排卵の2-3日前で十分」という別の医師の意見がありました。
妊活中にADHD治療薬を休止するという事もあるようです。患者側と医師の判断次第だと思います。
※ADHD治療薬は、男性の側の性機能障害や、女性の側の月経異常が少し起こり得ます。ストラテラで数%位起こるかもしれません。他のコンサータ、インチュニブ、ビバンセは、生殖系の副作用をすべて合わせても、1%未満しかありません。ほとんどありません。
コメント
この記事は要望を受けて書きましたが、このような内容で大丈夫だったでしょうか。これ以上の事は書けそうにないです。
もちろん、自分はただの素人ですので、医師の意見より優先するものではありません。素人なりに、もっと論文やデータなどのエビデンスを示すべきだったかもしれません。
ですが、何か少しでも参考になっていれば幸いです。加えて欲しい情報などあれば、是非お知らせください。ご要望有り難うございました。
ADHD治療薬の「減断薬」についての記事へのリンクはこちらです。
【減薬&断薬法】コンサータ、ストラテラ、インチュニブ、ビバンセ
参考文献
各ADHD治療薬の「添付文書」と「インタビューフォーム」
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