Serial experiments lain OP『Duvet』歌詞和訳&考察

この記事は約9分で読めます。

「Duvet」の和訳&考察をしてみました。他の人の和訳との比較もしています。思ったより好評な和訳&考察で、Twitter等でもよく話題にしてもらっています。タロウ(滝本啓人さん)もいいねしてくれました。

ちなみに歌詞カードの和訳は、他の和訳と比べてもあまり良い訳だと思いません。

和訳つき動画もここに設置しました。

Duvet 和訳

And you don’t seem to understand
理解していないようね
A shame you seemed an honest man
あなたは自分に正直な人のように思えたのにとても残念
And all the fears you hold so dear
あなたが大切に抱いているその恐れすべては
Will turn to whisper in your ear
あなたの耳元へのささやきにかわるでしょう

And you know what they say might hurt you
そして、あなたはそのささやきがあなたを傷つける事を知っているし
And you know that it means so much
それが重要なことを意味していることを知っている
And you don’t even feel a thing
それなのに、あなたは何一つも感じない

I am falling, I am fading
私は落ちていく 私は消えていく
I have lost it all
私はそのすべてを失ってしまった

And you don’t seem the lying kind
嘘の優しさではないようね
A shame that I can read your mind
私があなたの心を読めることは残念な事
And all the things that I read there
私がそこに読むことができるのは
Candle lit smile that we both share
キャンドルが灯る中でほほ笑みを分かち合う、という(陳腐な)もの

And you know I don’t mean to hurt you
私があなたを傷つけるつもりはない事、
But you know that it means so much
でもそれが重要なことを意味している事を、あなたは知っている
And you don’t even feel a thing
それなのに、あなたは何ひとつも感じない

I am falling, I am fading, I am drowning
私は落ちていく 私は消えていく 溺れてしまう
Help me to breathe
息ができない助けて
I am hurting, I have lost it all
私は傷ついていく 私はすべて失ってしまった
I am losing
私は損なわれていく
Help me to breathe
息ができない助けて

曲の解釈、考察

自分がイメージしたこの曲のイメージは、自閉して、「他者」を持たないような男をパートナーとして持つ女の苦しみ、嘆き。

この男は、キャンドルが灯る中でほほ笑みを分かち合う(Candle lit smile that we both share)というような、ありきたりのイメージで二人の関係をつくっていきたいと思っているようだが、それは勝手な独り善(よ)がりなイメージで、

目の前にいるこの女という「他者」はそこから疎外されているように思う。その女自身を全く感じていない(And you don’t even feel a thing)

男は、現状の自分やナルシシズムを守ろうとしていて、恐れを感じている(And all the fears you hold so dear)

未知で理不尽で不可解だが、受け入れるべき「他者」の存在を予感している。(And you know what they say might hurt you And you know that it means so much)

でも男は自分に正直でなく(A shame you seemed an honest man)、それらをその女とともにシャットアウトし、結果的に女は傷ついて、窒息している。

他の和訳との比較

自分の訳は、他の人の和訳と大きくは違わないが、いくつかの点について違いがある。長くなるのですべてはできないが、それらについていくらか説明をしてみる。

今後和訳する人や英文に興味のある人、に向けて書きたい。そうでない人は、少し難しいかもしれない。

些細なものから始めるが、まず、「an honest man」を他の人の和訳では、「誠実な人」とか「正直な人」としている。自分の訳では、「自分に正直な人」とした。

自分の曲全体の解釈に合わせるために「自分に正直な人」とした。ここはあまり、他の人の訳とかけ離れていないだろう。

2つ目は、2番の「And you don’t seem the lying kind」が、他の人の訳では、「嘘をつくような人には見えない」とか「嘘をつくタイプには思えない」などとなっている。kind を名詞の「タイプ」とか「種類」の意味にしたのだと思う。

別の訳に「嘘の優しさには思えない」や「上辺だけの優しさなのね」という訳もあった。kind を「優しさ」という訳にしている。自分も「嘘の優しさではないようね」とこっちの立場で訳している。

でも「優しさ」というなら、 the という定冠詞がついているし、名詞の kindness にするべきではないか?

the がついていて、kind となっているなら「タイプ」とか「種類」の方が正しいのではないか? そうも考えて修正しようとしたがやめた。

やめた理由は、「the lying kind」という題のコメディドラマがあるのだが、その脚本を読んでみると、明らかに、この kind が「タイプ、種類」でなく「優しさ」の意味で使われている。

歌詞や宣伝のキャッチコピーなどでは、わざと文法的に間違った表現を使って、効果的な表現にすることがあるらしい。

「Duvet」でもそのコメディドラマと同じようにしているということは大いに考えられる。

kindness と言わず kind といった方が語呂がいいし、kind にすれば、1番の1文目のunderstand と語尾が同じ nd になって、韻(いん)を踏める

なので、 kind を「優しさ」とする立場に従う。その方が、自分の解釈とも整合性が持てる。

2021年7月8日追記:the lying kind について、コメントで指摘がありました。the をkind(優しい) という形容詞につけていいのか疑問でしたが、the をつけて形容詞 kind を抽象名詞化しているのだそうです。このkind は、「優しさ」で正しいそうです。ご指摘ありがとうございました。

3つ目に、「And all the things that I read there」「Candle lit smile that we both share」という文をみてみる。

この文は、他の人の訳では、分割しているものが多かったが、自分は、この2つの文はつながっていると考えた。

曲の1番でも、3つ目の文と4つ目の文が、明らかにつながっている。2番でも、3つ目の文と4つ目の文がつながっているという事は、あり得るだろう。

この2つを文と言ってしまったが、両方とも名詞句になっているだけで、それだけでは文になっていない。(それぞれ things と smile を中心にした名詞句になっているだけ。) 完全な文にした場合は、この二つの名詞句の間にbe動詞areが入ると思われる。

ここも there と share で韻(いん)を踏むために、比較的軽い動詞であるbe動詞の are が省略されていると考えた。

つまり、もし完全な文にした場合は「And all the things that I read there are candle lit smile that we both share」 となる。

たとえ、are を入れないとしても、この2つの名詞句はイコールの関係になっていると思われる。

だから、訳すときは、2つの文をつなげて、「私がそこに(あなたの心の中に)読むことができる全てのもの私たちによって互いに共有された、キャンドルが灯る中における、微笑み」と直訳できる。

これを意訳して「私がそこに読むことができるのはキャンドルが灯る中で微笑みを分かち合う(イメージ)」とした。

Candle lit smile that we both share」という文の意味内容については、ネイティブスピーカーの人にとっても難解で、なぜこの文がここにあるのか唐突に思われるらしい。

あるネイティブに「Candle lit smile that we both share」の意味を聞いた人がいて、それによると、「男女が互いに微笑み合いながら、暗いレストランで、キャンドルが灯ったテーブルに座っている。その会食や時間を楽しんでいる」という情景が心に浮かぶらしい。

どこかの画像検索でも、この語で検索して、そのような画像が出てきたかと思った。

英語圏の人が幸せのイメージを思い浮かべた時、このイメージはよくあるものになっているのではないか。

歌詩の中で、男が心に持っているそのようなイメージに対して、女がありきたり過ぎて陳腐(ちんぷ)だと、皮肉的に言っているような感じに自分には聞こえた。

Candle lit smile that we both share」と、smile という名詞に対して、やたらたくさんの形容詞が向けられていて、皮肉っぽく聞こえた。

そこで、ちょっと解釈を入れ過ぎたかもしれないが、文尾に「という陳腐なもの」という原文にはない和訳を入れた。わかりやすくなると思って入れた。

4つ目に、「I am losing」を他の人の訳では、「私の負け」とか「私は失っていく」とか「私を失っていく」という訳になっている。

ここは、他のある和訳者が、ネイティブスピーカーに聞いたところこう言っていたらしい。

I am losing」と言って、I)が何を失っていく(lose していく)かというと、自分自身(myself) を失っていくと考えるのが、この詩の文脈に限れば、自然でロジカルな解釈、ということらしい。

このネイティブの言っている事によると、少なくとも、「負け」という訳は違うのではないか。自分は「私が私自身を失っていく」つまり「私は損なわれていく」とした。

辞書で lose を調べてみると「価値が減じる」とか「美点を失う」という意味もある。はっきりした、ぎこちない表現で言うと「I am losing」は「私の価値、美点が減じていく」とも言えて、そのような意味も、あるいは含まれていると自分は解釈した。

もちろん、lose には、「損なう」という意味もあって、辞書にもそう載っている。

他訳との違いまとめ

an honest man」は、「誠実な人」や「正直な人」をとらず「自分に正直な人」とした。

「And you don’t seem the lying kind」の「kind」は、「タイプ、種類」でなく、「優しさ」とした。

And all the things that I read there」「Candle lit smile that we both share」は、分割せず、つながっているものと考えた。

Candle lit smile that we both share」は、皮肉的に聞こえたので、文尾に「という陳腐(ちんぷ)なもの」という語を入れ、わかりやすいようにした。

I am losing」は「私の負け」ではなく、「私は損なわれていく」とした。

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コメント

  1. ライス将軍(大盛) より:

    初めまして、私もこの歌のことが好きでぼんやり翻訳していたことがあるのでコメントします。
    私がこの歌に感じる印象は『夫の裏切り(浮気)に気付いた嫁の打ち明けられぬ苦しみ』でした。

    特に重要視したのが“A shame you seemed an honest man”の部分のseemの時制です。
    歌詞の中で他の“seem”は現在形ですが、ここだけわざわざ過去形で書かれています。
    過去形の特徴としては現在との断絶です。
    つまり、『昔は誠実な男だと思ってたけど、今はそうは思わないわ』という意味が込められているのではないでしょうか?
    このような心情の変化が起こる場合は通常何かに裏切られた時です。
    そして、このように解釈するとそれ以下に続く歌詞の意味も理解できるようになります。

    “And all the fears you hold so dear will turn to whisper in your ear”
    『貴方の抱く恐れ』とはまさに、この裏切りがばれるのではないかという恐怖であり、『その恐れにいつも怯えることになる』という意味だと解釈しました。

    また、“the lying kind”の訳語についてはご指摘の通り“kind”を『やさしい』という形容詞と捉えて正しいかと思います。
    「the+形容詞」の組み合わせは以下のような意味で使われます。
    ① 「〜な人々」Ex) The rich 裕福な人々
    ② 『抽象名詞化』Ex) the tasty うまいもの
    この歌詞の場合だと、②の抽象名詞化として使われているだろうと思い、私は『うわべだけの優しさ』と解釈しています。

    “And all the things that I read there Candle lit smile that we both share”の部分ですが、『陳腐』という表現を加えるのは流石にやりすぎかと思います。
    確かに皮肉な感じはするのですが、その正体は”all the things that”の部分ではないでしょうか?
    『私が読み取れるのはキャンドルが灯る中でほほ笑みを分かち合う(という光景)がすべて』ということは、言い換えると『それ以外に読み取れる部分はない』ということです。
    そして、前文の“A shame that I can read your mind”と合わせて考えると『あなたの心なんてすべてお見通しだけど、キャンドルが灯る中でほほ笑みを分かち合う光景だけだよね』という感じの意味合いでしょうか?
    これは、『あなたは他の女と浮気してるけど、それでも私と一緒に仲良く微笑みあって暮らせると思ってるのね』みたいな恨み言のように感じました。
    “And you know I don’t mean to hurt you but you know that it means so much and you don’t even feel a thing ”の部分ですが、『私があなたを傷つけるつもりはない』とは『浮気のことであなたを罵ったりはしない』ということで、それにもかかわらずなんら罪悪感も感じずに幸せな夫婦生活の光景ばかりを望んでいる夫を憎らしく思っているのではないでしょうか?

    • MATS Mats (まっつ) より:

      こんにちは、コメントして頂き、誠に有り難うございます。長いコメントをしてもらって大変嬉しいです。少し返信が遅くなってすみません。

      まずは、the lying kind の件で、the kind は抽象名詞化されているという事を教えてもらって有り難うございました。勉強になりました。

      まだまだ、基本的な事もわかっていないので、文法とかももっとやらなくてはいけないですね。

      それで、ライス将軍さんの解釈についてですが、確かにそのような解釈も可能だと思いました。できれば、和訳全体を見てみたい気もしますし、どこのサイトでやっているのか知りたい気もします。

      それを見てみないと賛成か反対かも決めることもできないですし、自分の解釈を変えるという気持ちにもなれません。

      自分の解釈もどうしてそう思うのかもっと文字数を増やして加筆して、主張することもできるのですけど、今すぐやるかどうかはわかりません。ずっとやらないかもしれません。

      ただ、この曲については、いろいろ別な事を考えている人がいますね。他のところでは、失恋ソングだと言っている人もいました。

      知っているかもしれませんが、作詞者本人は、インタビュアーに聞かれて、この歌詞についてはこう言って言います。

      「歌詞は感情の変化、思うようにいかなかった時に、落ち込んでいく感覚を歌っています。」

      これは、あいまい過ぎて、何も言っていないに等しいと思いますが、要は、歌詞の本当の意味については、あまり言いたくなく、曲を聴いた人がそれぞれの想像力で理解してもらえればそれでいいと思っているのでしょう。

      自分もこの曲を鑑賞して、考えることで、いろいろ明確になった事もあったし、ある種の経験にもなったと思います。

      いろいろな人の妄想も含めて、たくさんの想像力やインスピレーションを与えているこの曲は良い作品なんでしょうね。

      とりとめもない話になってしまったかもしれませんが、以上です。ライス将軍さんの解釈を聞かせてもらって有難うございました。また、機会やご縁がありましたら、よろしくお願いします。

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