統合失調症のSST、対人関係や日常生活スキルを向上!ソーシャルスキルトレーニング【精神科医監修】

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はじめに

人との会話が苦手だったり、人間関係で困ったりしたとき、皆さんはどうしていますか?

例えば、人に何かを頼むことが苦手だったり、誘いを断れなかったり、会話をどう終わらせればいいか分からなかったり。

こうした対人関係の困難に対して、具体的なコミュニケーションの方法を練習する治療があります。それが、SST、ソーシャルスキルトレーニングです。

SSTは、統合失調症の人などを対象に行われている心理社会的な介入です。

今回は、SSTとは「どのような方法なのか」、「研究ではどの程度の効果が確認されているのか」、そして「今後の発展」について紹介します。

SSTとは何か

SSTは、社会生活で必要になるスキルを、実際に練習しながら身につけていく方法です。

人は通常、家庭や学校、職場などで、ほかの人とのやり取りを経験しながら、少しずつコミュニケーションの方法を学んでいきます。

しかし、統合失調症の人の場合、症状の影響や、社会的な活動の機会が少なくなることなどによって、こうした経験を積みにくくなる場合があります。

そこでSSTでは、支援者と一緒に、具体的な場面を想定し、どのように考え、どのように行動すればよいかを検討します。

そして、実際にやってみることで、そのスキルを身につけていきます。

SSTでは何をするのか

では、SSTでは具体的にどのような練習をするのでしょうか。

例えば、誰かから飲み会に誘われたけれど、参加したくないという場面を考えてみましょう。

断るのが苦手な人は、相手に嫌われるのではないかと不安になり、参加したくなくても断れないことがあるかもしれません。

SSTでは、こうした場面で、どのように対応すればよいかを練習します。まず、支援者が断り方の見本を見せます。

例えば、「誘ってくれてありがとうございます。でも、今回は参加できません。また機会があればお願いします」という言い方です。

次に、本人が相手役と実際に会話を練習します。これをロールプレイといいます。

練習した後には、支援者やほかの参加者からフィードバックを受けます。

「相手の誘いに対して、きちんとお礼を伝えられていましたね」

「断る理由を短く伝えると、もっと話しやすくなるかもしれません」

といった具合です。そして、フィードバックを参考にして、もう一度練習します。

このように、SSTでは、手本を見る(モデリング)、実際にやってみる(ロールプレイ)、助言を受ける(フィードバック)、もう一度練習する(再練習)、という過程を繰り返します。

もちろん、断り方だけではありません。挨拶の仕方、会話の始め方や終わり方、忙しい人への質問の仕方、困ったときの相談の仕方など、さまざまな場面を扱います。(コミュニケーションスキル)

また、社会生活で必要になるスキルは、コミュニケーションだけではありません。問題が起きたときに解決方法を考えることや、症状への対処、服薬の自己管理などを扱う場合もあります。(日常生活スキル)

重要なのは、本人が身につけたいスキルを選び、それを練習するということです。

そして、練習したスキルを日常生活でも使えるようにすることが大切です。

例えば、SSTで挨拶を練習したら、実際に地域や職場などで挨拶をしてみる、など。実生活での実践を通して、学んだことを別の場面でも使えるようにしていきます。

SSTをグループで行うメリット

SSTには、マンツーマンで行う個人形式もありますが、グループ形式もよく用いられます。

グループで行うメリットの一つは、ほかの参加者の練習を見られることです。自分とは違う対応方法を知ることができますし、ほかの人の成功例から学ぶこともできます。

また、練習したことに対して、支援者だけでなく、ほかの参加者からもフィードバックを受けられます。

人によってコミュニケーションの仕方は違います。そのため、複数の人と練習することには意味があります。

ただし、グループ形式がすべての人に合うわけではありません。本人の状態や希望に応じて、個人形式などを検討することもできます。

SSTにはどのくらい効果があるのか

では、SSTには、実際にどのくらいの効果があるのでしょうか。

まず、SSTの大きな目的は、対人関係や日常生活に必要なスキルを身につけ、社会生活をより円滑に送れるようにすることです。研究でも、その有効性が報告されています。

2008年に発表されたメタ分析では、SSTによって、社会的な技能や日常生活技能、地域社会で生活するための機能が改善することが示されました。効果の大きさも、これらの評価項目では中程度と報告されています。

A meta-analysis of controlled research on social skills training for schizophrenia

では、身につけたスキルや訓練の効果は、長期的にも続くのでしょうか。2018年のメタ分析では、SSTの効果が、追跡調査を行った研究の一部でも維持されていました。

A Meta-Analysis of Social Skills Training and Related Interventions for Psychosis

訓練で練習したことを日常生活でも活用できれば、継続的な生活の改善につながる可能性があります。ただし、長期的な効果については、今後さらに研究を重ねていく必要があります。

さらに、SSTは、社会生活に必要なスキルだけでなく、陰性症状への効果も研究されています。陰性症状には、意欲の低下や、他者との交流が少なくなることなどがあります。

2018年のメタ分析では、SSTによって陰性症状が改善するという結果も報告されました。

A Meta-Analysis of Social Skills Training and Related Interventions for Psychosis

もちろん、SSTですべての症状が改善するわけではありません。しかし、対人関係や日常生活に必要なスキルを練習しながら、陰性症状の改善まで期待できる事は、SSTの重要な意義です。

SSTはVRによって発展するのか

最後に、SSTの今後の発展について紹介します。その一つが、VR、つまり仮想現実の技術を利用する方法です。

従来のSSTでは、参加者同士が会話を練習したり、支援者が相手役を演じたりして、コミュニケーションの練習を行います。

しかし、現実の場面を完全に再現することは簡単ではありません。そこでVRを利用すれば、仮想空間の中に、さまざまなコミュニケーション場面を作り出すことができます。

例えば、店員に質問する場面や、初対面の人と会話する場面などを設定し、繰り返し練習することが考えられます。

2011年には、統合失調症の入院患者91人を対象に、VRを使ったSSTと、従来型のロールプレイを比較する研究調査が発表されました。

A virtual reality application in role-plays of social skills training for schizophrenia: a randomized, controlled trial

この研究では、実際に治療後の評価を受けた参加者において、VR群は従来型の群よりもSSTへの関心や、練習したスキルを別の場面で使うことなどで良好な結果を示しました。また、会話スキルや自己主張能力の改善も、VR群の方が大きくなりました。

一方、非言語的なスキルについては、従来型のロールプレイの方が良い結果でした。つまり、VRがすべての面で従来型のSSTより優れていたわけではありません。

この研究は、VRがSSTを補助する方法として役立つ可能性を示していますが一つの研究だけで、その有効性が確立したわけではありません。

VRには、現実に近い環境を作りやすいという利点があります。一方で、実際の人間とのやり取りで学ぶことにも意味があります。

そのため、VRが従来型のSSTを完全に置き換えるというよりも、それぞれの利点を生かして組み合わせる方向が考えられます。

今後、技術や研究が進めば、SSTの新しい実施方法が増えていく可能性があります。

まとめ

今回は、統合失調症に対するSST、ソーシャルスキルトレーニングについて紹介しました。

SSTは、コミュニケーションや社会生活に必要なスキルを、手本を見たり、実際に練習したりすることで身につけていく方法です。

研究では、陰性症状にも、一定の効果が報告されています。ただし、長期的な効果については、まだ確定的ではありません。また、VRのような新しい技術を利用して、練習の方法を発展させようとする研究も行われています。

統合失調症の治療や支援では、薬物療法だけでなく、こうした心理社会的な方法も選択肢の一つになります。

SSTについてもっと多くの人が知り、必要としている人が利用できるようになることを期待したいと思います。

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