新しい抗うつ薬アールケタミン/エスケタミンより強力で安全?/自宅で使用可?(2024.6.25修正)

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ケタミンは優れた抗うつ薬

前の記事で書いたように、ケタミンは、アールケタミンエスケタミンという2種の光学異性体で構成されている。

この記事ではアールケタミンについて書く。この記事はエスケタミンの記事の続きのようなものなので、できれば先に、エスケタミンの記事を見てもらうと良い気がする。リンクはこちら。

エスケタミン/治療抵抗性うつ病にも効く/SSRI到来以来の画期的治療薬(2024.6.24修正)

上の記事で、ケタミンは、従来の抗うつ薬より高い確率で効果が発現し、24時間以内という短時間で効果が表れ、しかも1週間効果が持続すると書いた。

エスケタミンとアールケタミンは、ケタミンから抽出された薬だが、どちらも優れた抗うつ薬になる可能性がある。

RとS、どちらが優れているか

アールケタミンは、麻酔薬としては、エスケタミンの半分の強さでしか作用しない。それは、NMDA受容体遮断作用弱い事が原因になっている。

NMDA受容体遮断作用弱い事から、多くの研究者が、エスケタミンの方が抗うつ効果が高いと考えている。

しかし、マウスの実験で、ケタミンの抗うつ作用は、NMDA受容体遮断作用でなく、むしろ、AMPA受容体刺激作用によるという発見があった。

アールケタミンは、AMPA受容体刺激作用の方は強いので、アールケタミンの方への期待が増している

千葉大の橋本教授らは、以前からエスケタミンよりアールケタミンの方が、うつ病に対して効果が高く長く効果が持続し副作用が小さいと主張していた。

アールケタミンは、NMDA受容体遮断作用の方は弱いので、エスケタミンより精神病的な副作用が少ない

エスケタミンは、解離症状や幻覚症状を引き起こすが、アールケタミンは、リラックス効果があると言われる。

アールケタミンは、このようにより安全だし、乱用可能性も少ないので、エスケタミンのように病院内での使用に限定しないで、自宅での使用が追及されている。

エスケタミンよりアールケタミンの方が、抗うつ薬として勝っていると言っている論文に次のようなものを見つけた。

R (−)-ketamine shows greater potency and longer lasting antidepressant effects than S (+)-ketamine

この論文には、次のような事が書いてある。

  • ケタミンは即効性があり、長く持続する抗うつ効果を示した。
  • 投与7日目に、アールケタミンの抗うつ効果は残っていたが、エスケタミン残っていなかった
  • アールケタミンは、エスケタミンより強力で安全な抗うつ薬だった。

上のような論文はあるが、エスケタミンとアールケタミンのどちらが抗うつ薬として優れているかはまだ確定的でない。個人差もあるかもしれないので、どちらも早く使えるようになって欲しい。

開発状況

米国では、パーセプション社が、アールケタミンのフェーズ1臨床試験を行い、安全性と忍容性において問題がない事が確認された。2021年9月にフェーズ2a臨床試験の開始を発表した。2022年の終わり頃に試験データが出ると期待されている。

2024.6.25追記:2023年1月にフェーズ2a試験が失敗したと発表された。今後どうするかは、試験データを分析したりして決めるらしい。開発の戦略的パートナーを探すなども検討するようだ。

日本では、2021年3月に、大塚製薬がパーセプション社から、アールケタミンの日本国内における開発販売権を取得した。現在、フェーズ1試験を準備中。

コメント

繰り返しになるが、アールケタミンは、治療抵抗性のうつ病に効果が期待でき、即効性があり、24時間以内に効果が現れ、1週間効果が持続する。強力な抗うつ薬。

アールケタミンと同種の抗うつ薬にエスケタミンというものがあり、米国ではスプラバートという商品名で販売されている。

エスケタミンは、幻覚症状を引き起こしやすいなど、より危険性が高いので、病院内でしか使用できない

アールケタミンは幻覚作用が少なく乱用の危険性も少ない。より安全なので、自宅での自己投与ができる可能性がある。

開発者側も「家庭で使用できるかどうかが重要だ。」と話している。もし家庭で使用できれば、エスケタミンよりも広く使われる抗うつ薬になるかもしれない。

関連記事はこちらです。
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参考文献

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