治験における有効性データの信ぴょう性

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今後、開発中新薬の有効性の比較をしていきたいが、注意点がいくつかある。

プラセボ次第でいいのか

実は、治験で抗精神病薬の有効性が測定された時、PANSS合計スコアの平均減少(改善幅)は各抗精神病薬の間で、それほど大きくは違っていない

下の表を見てもらうと、ルマテペロンはちょっと低く出たが、他は-18点近辺で、それ程、差はない事がわかるだろう。

スコア平均減少
ラツーダ-19.3
CVL-231-18.7
KarXT-17.4
ウロタロント-17.2
ルマテペロン-14.5

むしろ、有効性の度合い(プラセボとの差)の違いを決めているのは、プラセボ薬のPANSS合計スコアの平均減少(改善幅)であると思われてしまう。

プラセボ薬のPANSS合計スコアの平均減少は、次のようになっている。KarXTとCVL-231のプラセボは、かなり小さい。

スコア平均減少
KarXTのプラセボ-5.9
CVL-231のプラセボ-6.8
ウロタロントのプラセボ-9.7
ルマテペロンのプラセボ-10.3
ラツーダのプラセボ-12.7

結果、有効性の値とされる「プラセボとの差」は次のようになった。「プラセボとの差」は、治験薬の「スコア平均減少」から、プラセボ薬の「スコア平均減少」を引き算したもの。

プラセボとの差
CVL-231-11.9
KarXT-11.6
ウロタロント-7.5
ラツーダ-6.6
ルマテペロン-4.2

KarXTCVL-231などは、単にプラセボの改善幅小さいせいで、治験で好結果が出ただけであると思われてしまう。

現に、1969年に行われた調査で、抗精神病薬の有効性はみな同じとされたこともある。また、精神医学には、抗精神病薬の有効性は皆同じ、というドグマ(教義)も存在する。

1969年の話なので、それが今も妥当性があるのか科学的に調べられていないとは言え、最近の治験結果のデータを見ると、そういうことも言えるのではないかと半分思ってしまう。

では、将来に優れた新薬が出ると、期待することはできないのだろうか?

そこまでは思っていない。抗精神病薬の有効性は皆同じというドグマに対抗している研究調査も存在する。

これから治験(臨床試験)の結果やプラセボの値を見たり、いろいろ勉強していって見極めていきたいと思っている。優れた薬は、この先出てくるはずと信じたい。

そして、プラセボの改善幅にこれだけ左右されていいのかという問題もよく勉強していきたい。

詳しくは勉強中だが、よく考えられて臨床試験のやり方が設定されているのだろうし、「プラセボとの差」で有効性の良し悪しが判断されてもいいのかもしれない。

一応、信用していいという前提でこれから記事を作成していく。ただよく勉強していって、その辺りを見極めたい。

有効性に優れた薬などないという考えもあるが、それに対抗しようとする考えもあるので、よく見極めたい。優れた薬が出て来ると信じたい。

効果量の手計算による誤差

それで、有効性の比較をしていきたいが、主にプラセボとの差標準偏差で割った、効果量という値で比較をしていきたい。

だが、効果量公表されていない臨床試験(治験)もある。その場合、95%信頼区間から標準偏差を導出する事ができるので、独自に手計算で効果量を算出する。(95%信頼区間さえ公表されていない場合は、効果量はわからない。)

ただ、いろいろな抗精神病薬を計算してみたが、公表されているものと、ピッタリ合うものもあるが、少しずれるものもあった

効果量は、手計算の場合±0.03位の幅で、誤差があるかもしれないという事を断っておく。

1つの治験結果だけではエビデンスが弱い

また、公表されている効果量であっても、より正確な有効性は、将来的にメタ分析が行われて、何十や何百の臨床試験の結果が統合されないと、わからないかもしれない。

これから書く記事では、1つの治験だけからの効果量を報告するが、それはあまりエビデンスとして強いものではない

偶然性やバイアスによって、結果は変動するので、1つの臨床試験の結果だけでは、まだまだ信頼性は低いかもしれない。

メタ分析で算出される有効性データは、エビデンスとしてより強いものだが、1つの臨床試験の結果だけの有効性データは、エビデンスとしてまだ弱い

長期服用時の有効性はあまりわからない

最後に言うと、紹介するメタ分析の効果量は、だいたい6週間程度の短期的な有効性になっている。

長期的な有効性のメタ分析は、今のところ行われていないと思う。長期的な薬の有効性は、あまりはっきりと分からないということを断っておく。

半年とかそれ以上の長期の有効性は、個別の臨床試験で調査されている事があるので、それについて報告していく。しかし、エビデンスのレベルはあまり高くない。

長期的な有効性のメタ分析は、おそらく行われていないので、長期的な有効性は、あまりはっきりとはわからない。

まとめ

抗精神病薬の有効性は、みな同じであるかもしれない。

手計算による誤差がある

1つの治験だけではエビデンスとして弱い

長期的な有効性はあまりはっきりとはわからない

終わりに

要するにこうも言いたい。当初抱いていた見方とは異なり、おそらく医療系の論文などにはあいまいさが結構ある。

少なくとも、この分野の科学や統計では、それ程はっきりした事はわからないという事だと思う。

実は、科学の他の分野でもやはりあいまいさはあるらしく、何かがある論文で証明されても、後にそれに反する論文も出てくることが、いくらでもある。

あいまいさを受け入れなくてはいけなくて、その上で少しでも希望がないか探っていきたい。

M1、M4薬でさえ、本当によく効くかは不透明で、よく見ていかなければならない。

でも、何かしら、心の病の人々にとって期待できるものは、必ずあるだろうし、少しでも確実な事がわかるようによく勉強していきたい。

追記:この記事は、科学について悲観的になっている時に書いた。今は、もう少し勉強した結果、もっと楽観的になってもいいような気になっている。

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保存用、長期有効性

(注射)
ゼプリオン
49%減(経口)
オランザピン
39%減(注射)フル
ペンチキソール
22%減
(注射)ズクロ
ペンチキソール
47%減(注射)
ハロペリドール
36%減(経口)
ハロペリドール
19%減
(経口)
クロザピン
47%減(経口)ズクロ
ペンチキソール
33%減(注射)
フルメジン
14%減
(注射)
ピーゼットシー
42%減(経口)
リスパダール
29%減(経口)
ピーゼットシー
14%減
(注射)
オランザピン
42%減(経口)
エビリファイ
27%減(経口)
セロクエル
9%減
(注射)リスパダール
コンスタ
39%減(経口)
ヒルナミン
24%減(経口)フル
ペンチキソール
8%減
薬を全く飲まないのに比べて、再入院をどれだけ減らせたか。(持効性注射剤or経口薬)
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